初めての研修委員会開催(26日)

昨年4月に発足した研修委員会(委員長林義行BSC社長)では経営者サロンやオープン化研修など、具体的な活動を逐次推進してきた。JASIPA加入会員に対するサービスの拡充との位置づけで始めたが、参加メンバー、参加会員が固定化し、なかなか期待した拡がりがないこともあり、今回経営サロンの日程を使って、初めての研修委員会を開催し、今後の研修委員会の課題と方向性について意見交換した(推進役:林委員長)。

経営者サロンに関しては、昨年4月より17回開催してきたが、メンバーがほぼ固定化したため、毎回新たなテーマを捜すのに限界が生じ始めている。また、理事の皆さんのご協力により、企業経営の体験談をお願いしてきたが、これもほぼ一巡した。そのため、これからの経営サロンの運営をどうするか、より多くの方に活用して頂くための方策がないか、議論した。その結果、10月に開催することにしている会員企業への出張経営者サロンや、もともと予定していた北関東地区での開催など、会員企業の皆さんが参加しやすいような開催形態を今後の柱にしていくことで進めることにした。出張先企業の希望などを踏まえて複数企業同志の交流を促進する案も検討することになった。

SEの技術者研修に関しては、現在アジルコア殿、BSC殿のご協力を得てオープン化研修を実施しているが、他社からの参加者が少ないとの問題提起がされた。会員各社への開催通知が、SE全般に伝えられているかどうかとの問題もあるが、教育事業者との提携による本格的技術研修との組み合わせにより、会員企業のニーズにあった教育の体系化の必要性について意見交換した。研修委員会の中に「技術研修センター」的な機能を設け、会員企業の研修に関する多様なニーズを受け止め、研修コースを推薦するコンシェルジュ的役割を果たすことにしてはどうかとの建設的な意見も出された。池田理事が、自らその役割を担うとのありがたい申し出もあった。今後実現の方向で検討する事になった。研修に関する補助金の使い方の指導や、会員企業経営者に対する社員育成の必要性の喚起などの必要性に関しても検討課題となった。

ともかく、各企業においては社員の育成ニーズ、意識改革ニーズは最重要として位置づけられている筈との認識のもと、JASIPA会員企業に対する付加価値として研修委員会をもっと充実させていくことが必要だとの共通認識は出来た。そして参加メンバー間で熱き議論が交わされた(林委員長、池田副委員長、三上副委員長、玉村理事、白井理事、サンノア吉田社長、堀事務局長、冲中)。

懇親会は、JASIPA事務所近くで2日前に開店した中華料理店で行われた(玉村さんのFB参照)。今月いっぱい20%割引とかでこのチャンスに“フカヒレ”も注文し、紹興酒やビールを飲みながら、さらに議論を深めることが出来た。意義深い1日だった。

「打てば響く組織」と企業規模

これまでにも紹介している「PHP Business Review松下幸之助塾2013年9.10月号」の特集テーマは「打てば響く組織への挑戦」だ。社員のモチベーションを第一義とする私の信念からも、非常に興味あるテーマの為、既に二つの記事を紹介した。一つは安芸南高校(http://jasipa.jp/blog-entry/9009)、そして「メガネの21」の丸見え経営(http://jasipa.jp/blog-entry/9067)だ。今回は、松下幸之助氏はどう考えていたか「“心を通わす”ために松下幸之助が求めたこと」の記事の一部を紹介する。

社会的な通念として、大きいものが頼りにされ、組織もまた然り。しかし幸之助の組織に対する評価は「大きさ」ではなく、「打てば響く」かという組織の質だったと言う。1968年社内誌の言葉を紹介している。

打てば響くような姿を維持することはなかなか容易ではありません。特に少人数で仕事をしていうるうちはまだしも、一人増え二人増えして規模が大きくなってくると、ともすればお互いの間の連絡がおろそかになったり、組織の枠にとらわれたりして、疾風迅雷に事をすすめることが出来にくくなってきます。

同年にNHK教育テレビ「これからの中小企業」に出演した時は、中小規模の規模の小さいことを不利と考えるのではなく、むしろ変化に応じる適応性において有利で活き活きと活動できることを重視して、下記のような発言をしている。

私は自分を振り返って考えると、一番楽しく張り切って仕事が出来たとき、まあ得意の時と申しますか、そういう時は、やっぱり50人前後の人を使っていたときですな。(中略)今はまあ幸か不幸か、多少大きくなっておりますが、むしろ今の方がいろいろ悩みが多いですな。

また別の場では、「もし許されるのであれば、私は2~300人程度の中小企業のおやじでありたい」と公の場で言ったそうだ。幸之助は「打てば響く組織」とは、「心を通わせている状態」と言う。お客さまとの間ももちろんそうだが、会社の中でも組織の質を高める上で大切だと。中小規模では、従業員の顔や性格、仕事ぶりまで全部把握でき、そして自分の一挙手一投足を全部知ってもらえたので、何事にも協力してもらえる「お互いの意志が縦横に通い合う風通しのよい組織」が作れる。ある経営方針発表会での発言。“”一人一人の汗の結晶が隣のひと、部下、上司の人にも理解されるということは、何にも増して心嬉しい事。(中略)松下電器の人々の間では、北海道におる人の苦労が九州におる人に伝わる、その逆もある、打てば響くようなかたちにおいて全員が結ばれていくようにならなければ、決して成果というものは上がるものではないと思う。コミュニケーションと情報の共有の大切さを説いた。

幸之助が「打てば響く組織」のために社員に訴えた事。「自分を社員としての仕事を独立して営んでいる事業主だと考えてはどうか」と。自分を事業の主人公だと認識すれば、周囲の同僚も上司もみな自身の事業を成り立たせてくれるお得意様。お得意様に対してサービス第一ということで誠心誠意尽くすように接すれば、それこそ「打てば響く」すばらしい関係があちこちに生まれるのではないか、そうすればコミュニケーションも進むし、各々の仕事のやりがいも増大するだろうと。

このブログを開設しているNPO法人JASIPAは中小企業ITベンダーの集まりである。社員の究極の幸せを実現できるのは中小企業だと言う松下幸之助氏の言葉に、希望の光を見出して、元気をもらえる気がしませんか?さあ、行動に移しましょう!

常識を逸した「丸見え経営」で成功の眼鏡店(株式会社21)

タイトルは「“丸見え経営”が価値観の共有を生んだ―管理職も部署もなくした“人事破壊”が意味するもの」。「PHP Business Review松下幸之助塾2013年9・10月号」の特集「打てば響く組織への挑戦」の中の記事だ。大手眼鏡店に勤めていた先輩社員などと27年前に広島市で㈱メガネの21(現㈱21)を設立し、今では関東以西で120店舗を展開する中堅メガネ店の現相談役平本清氏の記事だ。その記事のリード文をまず紹介する。

どんなに実績を挙げようとも、年収の上限は一定。昇給は30歳でストップ。自分の給与やボーナスの額を社員全員が知っている。何年勤めても、絶対に店長にもなれなければ部長にも慣れない。そんな理不尽な会社にも拘わらず、5年間の入社3年以内退職者がわずか一人だと言う。家族経営の零細企業の話ではない。社員170名強、店舗数120を数える企業である。社員が意欲を持って働き、画期的な商品を提案し続けるチェーン店「メガネ21(トゥーワン)」。

平本氏曰く「非常識な会社」。肩書もなく、部署もなく、ノルマもなく、出勤時間はフレックスで自由。しかし、みんなコマネズミのように働いているかと言うとそうでもなく、ぐうたら社員も皆無。かつ、世の中にない独創的なメガネを世に出しているのでも有名。つるなしメガネや、鼻の上に浮くメガネ、補聴機能付き聴こえるメガネ(「ガイアの夜明け」でも紹介された)などを格安で提供している。

あらゆる情報を”丸見え”に

会社の財務状況や店舗の損益、出店計画の進捗などに加えて、取引先とのやりとりなども社内ネットでオープンにしている。いろんな提案もネットで行い、反対がなければ提案者が実行することになっているため、稟議書もなく、会議も必要なし。経営方針でも誰でも意見を書き込める。

全員の給与や賞与も“丸見え”

各人の評価もオープン。文句があればだれでも疑義を呈することが可能であり、その疑義もオープンにされる。これらの情報を前向きにとらえれば、ごく自然に全社員が自分の実力を高めるために自主的に考え働くようになる。「どうしたら儲けることが出来るか」皆が考え、経営感覚を磨く。社員が自立し、かつ自律しながら働くため、社員を管理する管理職が不要。平本氏は“丸見え経営”は超フラット型の、超効率的経営を実現する画期的手法と言う。

利益はすべて社員とお客さまに還元

「利益を残さず、内部留保もつくらない」のが基本方針だと言う。給与の上限は1000万円(配偶者控除の限界)としているため、その範囲内で利益を賞与で配分し、残れば商品の値引きの原資とする。社長の年収も、前年の社員最高年収としている。

社員がオーナー経営者

運転資金は、社員の出資で賄っている。その代り比較的利息は高くしている。しかし、ある時、利息が高いのを当たり前の風潮と捉える傾向を感じたため、わざと商品を値下げして業績を悪化させ賞与や利率を下げることでカンフル剤を打ったことも有る。結果的にその半年後にリーマンショックが起こり、人件費を下げていたお蔭で「良い商品を安く提供」でき、お客様に喜ばれて繁盛する結果となった。

平本氏は、「当社は優秀な社員に我慢を強いる不公平会社だ」と言いつつ、「従業員みんなが幸せになった方がよほど楽しい」との価値観を全員で共有化している会社だと言う。マスコミでも時折取り上げられているそうだが、正直こんな経営もあるのだと驚かされる。何事も徹底してやるのが、経営の神髄か?

冲中一郎