ITベンダー「残念な営業」から脱皮する道(ITpro)

18日のITpro日経コンピューター木村岳史氏の記事のタイトルだ。こんな言葉から始まる。以前、中小企業の経営者と話をした時、「ITベンダーと銀行の営業担当者の共通点を知っているか」と謎をかけられたことがある。私が考えあぐねていたので、その経営者は答えを教えてくれた。「両者とも初対面であるにもかかわらず、必ず『何かお困りごとはないですか』と聞くのだよ。初対面の人間に、自社の弱みを教える経営者などいないのにね」。

木村氏は、この営業マンは絵にかいたような「マニュアル営業」(ソリューション営業は、まずは課題を聞き出し、その解決策を提案する)をしたのだろうと推測しているが、お客の経営者に「御社はどんな仕事をしているのですか?」と聞く猛者もいると言うから驚きを通り越してあきれてしまう。

PCやサーバーなどの販売と違って、ソリューション営業は経営者を相手にした方が効果的なことが多い。そして、経営者の課題認識を聞き出すのがポイントだが、日頃からの関係創り(「この人なら話を聞いてもいい」と思ってもらう)なくして聞き出せない。日頃から聞き出しておけば、ソリューション提案が実を結びやすく、経営者の問題認識に直接刺さる提案に繋がりやすい。ところが、ITベンダーの営業担当者は、相手が中小企業だと、何の準備もせず経営者に会って、折角のチャンスを棒に振ってしまう。

木村氏は言う。「ITベンダーはそろそろ営業の在り方を根本的に見直した方が良い。そのためには、営業担当が“何か仕事がありませんか”と聞いて回ったり、クレームをなだめたりするだけの“御用聞き営業”から脱皮する必要がある。顧客の経営者にも一目置かれる営業担当者になる。それこそが真のソリューション営業である。」と。

これからのIT業界は、国内はもちろん、国際的な競争になること必至の中で、如何にお客様に付加価値が与えられるかが勝負になる。その意味でも「ソリューション営業」がその要となる。今まで、商品営業に邁進してきた営業マンが多いと思われるが、木村氏が言うように、「ソリューション営業」についてもっと真剣に考えるべき時ではなかろうか?

「声かけ」究めて固定客がっちり(日経)

11月19日の日経朝刊の記事のタイトルだ。リード文には「何度も繰り返し利用してくれる固定客をつかむことは安定した売り上げが期待できるのはもちろん、仕事のやりがいにもつながる。」とある。私も、前職で固定客(前職では“一生客”と呼んでいた)化の重要性を実感し、JASIPAの「経営サロン」や、講演の際には「お客さま第一」の企業文化・風土創りを訴えている。どんな業種においても、お客様の固定客(リピート客とも言う)化は、経営の安定化のための必須アイテムと思う。

今回の記事では、最前線で実績を挙げている事例として、「西武池袋店」、「帝国ホテル」、「ヤナセ練馬支店」を紹介している。入社7年目の婦人服売り場担当の坂本さんは、西武全店を対象に優秀な販売員を表彰する制度の常連と言う。その坂本さんの固定客獲得のポイントは、来店回数に応じて接客方法を変更し、試着に持ち込み、ファッションセンスを認めてもらうことに徹している。初めての客の時はその人の服装や持ち物を1分ほど観察してから声をかける。3度目以降のお客さまには、過去の購買履歴を見て、似合う服を薦める。

帝国ホテルのロビーマネージャの金井さんは、お客様が心を許すかどうかが固定客化のポイントと言う。そのために名前で呼ぶことを心掛けている。顔と名前が一致する客の数は1000人。そのための準備に力を注ぐ。ロビーに立つ前に顧客リストに目を通すのは当たり前。誕生日や住所なども頭に入れ、会話のネタを用意する。リストに似顔絵や特徴も記す。ホテルマンは、客から名前で呼ばれることが最高の誉れと言う。「目標は1万人、帝国ホテルに行けば金井君がいると思われる存在に成りたい」と。

ヤナセ練馬店でベンツを売る山下セールスマネージャも手書きのメモを生かしている。約500人の得意客を持っている。顧客との雑談から得た細かい情報をメモして売り込みの好機を捜す。17年前の入社後初めて契約して頂いた顧客と今も付き合いがあると言う。

固定客を掴み、販売成績を挙げている人は、日頃から手間暇を惜しまずお客様の心を揺さぶる方法を考えている。「売ること」を前面に出さず(売るのは自分のため)、「お客様が喜んでくれる」ことに第一義をおく。IT業界の営業にも参考にしたい

顔の表情も多くを物語る!

「あなたは普段、自分の表情を意識しているでしょうか?表情はとても大事な自分を表現するツールです。服装や髪形を気にする人は多いですが、表情を気にする人は少ないのではないでしょうか?“表情は変わらないものだ”という認識なのかもしれません。整形手術でもしない限り、顔の造りは変えられませんが、表情は変えられるのです。正確には、あなたがもっと輝く表情に変えられるのです。」これは、当ブログでも以前何度か紹介した感動プロデューサー平野秀典氏(http://jasipa.jp/blog-entry/6163など)の10月8日付のメルマガの冒頭の記事だ。商売人の必須アイテム「表情」なのに、あまり意識していないのはもったいないと言う。さらに、「表情が、対人関係に及ぼす影響は計り知れませんし、第一印象に表情が大きく関係していることも皆知っています。自信なさげな表情、何か企んでいそうな表情、疲れた表情、暗い表情、影がある表情等で人と会っていたとしたら・・どんなにいいことを言っていても、あなたの情熱やエネルギーは伝わりません。表情を輝かせることは人生やビジネスにおいて大変優先順位が高い項目です。」と。(写真はインターネット画像より)

表情で思い出すのは、2020東京オリンピック招致プレゼンの時の、元ミズノ社長水野正人氏の事だ。最初テレビで見ていた時、檀上の席に座っておられたが、その表情に惹かれ、この人は誰だろうと否応なしに興味を持った記憶が蘇る。他のプレゼンターは、この時のために表情やプレゼン方法を何度も何度も練習したそうだが、見ていたある記者は、日頃の表情と全く変わらないのが水野氏だったと言っていた。28年間勤めた代表取締役時代から、あのビッグスマイルで魅了してきた方だと言う。接待は一切受けないという潔癖さ。関西人らしい茶目っ気もあり、そして「理想主義者」だと言う。代表取締役を退き、「東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会」の事務総長(当時)の職に専念することになったのも、ミズノの利益ではなく、スポーツを通した世界平和に寄与するためとも言われる。ともかく、あの笑顔豊かな表情に多くの人が感銘を受けたのではないだろうか?

以前、何かの記事だったと思うが、朝出勤する前には必ず、鏡の前で表情を確認してから家を出る経営者の方もいるそうだ。お客さまや、部下、パートナーなど多くのステークホルダーと接触する際、暗い顔なのか、明るい顔なのかで、印象は大きく変わることは誰もが分かる筈。心を磨くのが最優先だが、自らの顔の表情を明るくすることで心もまた変わって来ると思う。歌舞伎俳優の真似は出来ないが、我々も顔の表情にもっと関心をもってもいいのではないだろうか?

冲中一郎