我ら団塊世代、老・病・死に笑いを!

11日大学の同窓会(40~44年電気卒)があり、高千穂大学人間学部教授小向敦子氏の講演があった。44年卒が最も若く(私も含めて)全員前期高齢者と言う集団40名を前に、年齢不詳だが、うら若き女性が「老・病・死と笑い」とのテーマでどんな話を聞かせて頂けるのか興味があって参加した(その後の東京駅見学会で普段見られないものが見られるのも興味があったが)。

小向氏はイリノイ大学大学院で博士号を取得されている才媛で、老年学に関する本も多数出版されている方だ(今年出版された「セラピューティックと老年学」を格安で購入した)。ギネスにも登録されている世界に冠たる最長寿命国となり、「早すぎる死」よりはむしろ、簡単には死ねないことが懸念材料となっている団塊世代に対する提言とも言うべき内容だった。確かに、100歳を超える人が5万人を超えている時代、年間死亡者が110万人から2040年頃には170万人(50%超増)になる時代(大量死時代)、こんな時代を想像すると若い人たちはぞっとするに違いない。さらに偉大なるIPS細胞の出現によって、10年以内に20歳若返り、白髪・禿も絶滅し、老化現象が止まり、K柳T子さまのように見た目年を取らない老人となっていく。今でも海外ではギャグと捉えられる「私は長生きなんかしたくない。80ぐらいでいい」の時代、還暦や古希はまだはなたれ小僧の世界が、海外に先駆けて早々に来ている日本。

団塊世代は激しい競争社内の中で「猛烈社員」と言われ、時間を惜しまず働いてきた世代。この世代が、突然退職によって、まったく経験したことのない時間が有り余る世界に突入し「スケジュールに余白があると落ち着かない」心理状態に陥る。以前なら退職したら早々に死が来たが、今はなかなか死が来ない(というか、年金頼りで「あんたなんかそう簡単に死ねるもんですか」と「死ね!」より怖い脅し文句で死なせてくれない)。死後の世界も、「3人寄れば病気、5人寄ればお墓の話」と言う墓も、無尽蔵に作るわけにもいかず(自然破壊につながる)、火葬も地球温暖化のために既にヨーロッパなどで普及している超低温で冷やしたり(プロメッション)、高温でボイルしたり(レゾメーション)して灰にして肥料に使う形態が10年もすれば日本でも普及すると言う。

このような社会全体“鬱状態”から脱皮するために、小向氏は“病”にしても、“死”にしても”ユーモアの精神“を取り入れることが、自分のためにも、自分を見守ってくれる人たちにとっても有効と提言する。「ユーモア発信はサービス精神」、”病“の時でも、施設に入っても、痛がったり、怖がったりしている場合ではなく、面白いことを企てるのに忙しく、笑わせることで人気者になれる。「苦痛は全ての思想よりも深く、笑いは全ての苦痛よりも尊い(エルバート・ハーバード)」、「人間だけが笑う動物。笑いは人を人たらしめる(アリストテレス)、死をも笑いで飾る(林家三平臨終前の奥さんが『自分の名前分かる?』「田村正和」、『お父さんしっかり』「しっかりするから小遣いくれ」)。

現代の危機、「敬老から嫌老・棄老へ」「どんどん話の通じない老人になっていく、でも死なない(森村誠一)」、だからこそ、笑いを!小向氏曰く「ボケて最後に死ぬ。ではなく、死ぬ最期にボケをかますことで“老い甲斐”果たせる」、「老化が美貌(不細工)と能力(無能)を劣化させても、否そうさせるからこそなれる“面白い人”」、「お金がなく、病気(新3高:高血壓、高血糖、高血脂)になって、臥床してもなれるのが一緒にいて”楽しい人“」。

複雑な気分で、“苦笑い”を発しながら聞いていたが、なぜか終わった後、少しだが爽やかな気持ちになれたのはなぜだろう?

営業の秘訣は「お客さま第一」!

今月の日経の「私の履歴書」は積水ハウス会長兼CEOの和田勇氏だ。その9回目に営業マンとして販売の最前線に立った時代の話が書かれている。

まずある人への感謝から始まる。「住宅を売るという仕事は魂を込めてお客さまと接することが肝心だ。お客様の喜び、満足を第一に考えていると必ず報われる」、当時名古屋の協力工事店八神社長からの熱く、厳しい叱咤激励の言葉だ。新人時代失敗、苦労の連続だった和田氏はこの言葉に救われ、その言葉を信じ営業活動に邁進。入社3年目(1967年)全国1位の販売成績を挙げた。和田氏は言う。「魂を込めてお客さまと接していると、お客さまがお客さまを連れて来て下さる。いわゆる紹介営業だ。」と。仕事が楽しくなり、正月3が日以外ほとんど休まず働いたと言う。住宅営業は家を売って終わりと言う仕事ではなく、新築されたお客様の住まいを訪ねることも忘れなかった。家の住み心地や、不具合、トラブルに対応することも大切な役割で、これが紹介営業や、リフォームの受注につながった。

もう1件紹介する。「致知2013.12号」に元ソニー生命の伝説の営業マンとしてその名を轟かせ、世界のトップ数㌫のメンバーで構成されるMDRT日本会で大会委員長・国際委員長を歴任してきた大坪勇二氏の記事がある(その記事のリード文での紹介文)。入社は新日鉄だったとの事でも関心を持った。新日鉄に入社し経理に配属になったが、異動希望も聞いてもらえず、ある日フルコミッションセールス(完全歩合制営業)に関するソニー生命の記事に出会い入社した(32歳で)異色の人物だ。入社2~3年は努力はするが成果は上がらず、学生アルバイトの稼ぎより低い、1日1650円のどん底の生活を味わった。追い詰められた大坪氏は、大好きなキューバの英雄ゲバラに倣って、別人格を自分の中に作る為、「九つの作戦」を立てたそうだ。その一つの作戦は「写真撮ります作戦」。そんな九つの作戦を同時並行で実行することにした。そうすると半年後に手取り月収が1000万円を超えるようになったと言う。ある会社の創業記念パーティに潜り込み、作戦を実行。後日写真を届けに行くと社長が応じてくれた。社長が創業の話を楽しそうに話してくれたが、保険の話を切り出すタイミングに躊躇し、聞き役に徹していた。が帰り際に思い切って「保険の話を」と切り出したところ少しの時間聞いてくれ、これが大坪氏の大きな転機になったそうだ(MAX2億円の契約をもらう)。優良企業の社長さんも何人か紹介してくれたそうだ。その大坪氏は今、コンサル会社を経営している(キーストーンフィナンシャル)が、講演やセミナーで言っていることを挙げている。

●扱っている商品の話をしない。商品の優位性なんかで絶対に勝負しないこと。
●商品を売るのではなく、信用を第一優先にすること。
●その手段として、お客様に与える(give)こと。

そして、「やる気」を出すために如何にセルフイメージを高めるかについても言及している。自分の人生を取り換えてもいいと思える位の『ロールモデル』を見つけること(どん底から這い上がる時のゲバラ)、そして二週間でいい、六つの目標を決め(些細なことでもいい)言い訳なしにやる。そして達成したら自分を承認する。その後自信を持って自ら目標を高めていくことで、セルフイメージが高まってくる。

積水ハウスの和田氏は八神氏の言葉に出会い、大坪氏はゲバラに心髄する。そして、やはり「お客様を第一義に考える」ことでも両者共通している。誰かが言っていたが、「商品を売ると言う行為は自分の為が第一。そうではなく、“お客様のため”をお客様に感じてもらうための行動とは何か、大坪氏の“九つの作戦”に倣って考えて見ては如何?

部下を育てるリーダーのレトリック

標記題の本が今年8月に出版されている(日経BP社)。著者は、早稲田大学ラグビーを2006,2007年全国大学選手権で連覇を果たした監督の中竹竜二氏だ。中竹氏は、早稲田大学在学中にもラグビー部主将として全国選手権で準優勝し、卒業後渡英し、レスター大学大学院修了、その後三菱総研に入所された経歴を有し、現在は日経BP「課長塾」をはじめ、企業研修やセミナーの講師としても人気を博しておられる。

主題は「部下が成長するためにどんな言葉をかければよいか?」だ。レトリックとは、古代ギリシアに始まった効果的な言語表現で、「修辞学」と言う。人を動かす皇帝、武将などが学ぶ教養項目の一つで必須のスキルだったそうだ。中竹氏は、日本の企業は暗黙知を信頼しすぎ「背中を見て学べ」「雄弁は銀、沈黙は金」のように語らずとも相通ずるものがあるというのは、もはや幻想で、多くの上司の部下の育成のための努力が部下に伝わっていないことを懸念している。そのため、チームを束ね、部下を成長に導くための、きちんと伝わる言葉を提示している。

  • 苦手なことはやらなくていい:人にはそれぞれ「らしさ(個人の強み)」がある。ステレオタイプの理想像を求めるのではなく、「らしさ」を見つけ、「らしさ」を発揮できるような業務に配置する。
  • ストーリーに「君らしさ」はあるか?:個人面談では通常目標をすり合わせる。中竹氏は、目標は設定しても、「らしさ」を考慮した目標に向かう道のり(ストーリー)をイメージし、そこで起こりうる困難に立ち向かうためどんな行動を仕込むか(シナリオ)をも考えるべしと言う。目標の空回りを防ぐために。目標とストーリーは事前に考えてきてもらい、面談時「そのストーリーに君らしさはあるか?」と問いかける。
  • 「すごい人」より「出来る人」になろう:「すごい人」とは何をやらせても出来るスーパーマン。「出来る人」とは、きちんと準備して抜かりなく問題を片付け、確実に成果を出す人を言う。すなわち物事に対して真摯に向き合う態度に他ならない。(いろんな方が言っている「今に全力投球しろ」と同じことと思う)
  • 準備を失敗するということは、失敗を準備する事:これはベンジャミン・フランクリンの言葉で、準備に誤りがあれば、たいてい失敗するということ。準備段階で、何が起こりうるか、どんな対処法を考えているか上司は部下に常に問い続けなければならない。
  • 失敗することが若手の組織貢献だ:「若いうちはチャレンジして失敗することが重要」だけでは、失敗を恐れる若手には無責任。
  • 自分のどこを見てほしい?:上司が個々人を見ている時間は少ない。どんなに努力しても部下の事をすべて把握することは不可能。「1日5分しか君の事を見ていられないとすればどこを見てほしい?」と聞き出し、成長と言う観点で問題あればきちんと議論して修正してやる。そして「君の成長につながる行動を、私は毎日きちんと見ている、だから頑張れ」と言えば、部下はそこに注力し、行動を改善していく。そこを上司は見逃さず評価する。

ラグビーでも、何でもこなすスーパーマンを作るよりも、個々の「らしさ」をより磨くことによってチーム全体が成長できるとの実体験に基づいた提言だ。これは本田宗一郎氏の言う、「適材適所で石もダイヤも宝になるよ」の言葉と同じと思われる。石でも石の良さを生かせば宝になる。個々人の「らしさ」、言い換えれば「強み」を見つけ、それを伸ばすための部下とのコミュニケーションの方法として参考になるのではなかろうか。

冲中一郎