ビジネスの肝は「感動」にあり

今朝の朝日新聞別冊「Be on Saturday」の記事のタイトルである。

「泣ける」映画や本、わずか十数秒でも心揺さぶられるCM,涙なくして語れない企業の商品開発秘話――。いつのころからか、「感動」を売りにしたものがあふれていると思いませんか(記事のリード文)? 高度経済成長期には、ひたすらモノの所有を追い求め、バブル経済時には高級品の消費に熱中、崩壊後の90年代は疲れた心とカラダに「癒やし」を欲した。だが、「もはや今の消費者は機能や安らぎだけでは満足しない。商品やサービスで「どれだけ心を動かされるか」が重要だ」という。「感動した!」小泉首相(当時)が大相撲夏場所で優勝した貴乃花関(当時)に叫んだのが2001年。「これが「感動消費」の幕開けかも知れない」と三井物産の小村氏は言う。

感動消費の中身、まずは「コンテンツ系」。映画や本など感動そのものを売るビジネスだ。たしかに個人消費の傾向は「娯楽・レジャー・文化」の分野が01年から10年で食料品や衣料品などの減少傾向に対し、倍増と言えるほど伸びている。企業の広告の中身も、例えばある外資系保険会社が肺がんを克服しトリノ五輪に出たフィギュアスケーター(井上玲奈)を取り上げ、好評を得たように、マーケティングの手法も変わってきていると言う。当ブログ(http://jasipa.jp/blog-entry/6163)でも紹介した「感動プロデューサー」平野秀典さんもこのような企業側の動きに対するコンサルタントとして紹介されている。彼曰く「売上至上主義ではなく、リピーターになってもらうことを目指そう」と。「商品でもサービスでも押しつけではない感動を得られれば顧客はついてくる」。

ホンダのスポーツ型ハイブリッド車「CR-Z」。従来は最先端の技術と装備の説明にカタログの大部分を割いたが、今回は開発の道のりをドラマチックに紹介している。「現場の情熱を知って、初めて車に興味がわいた」という学生が多いらしい。このように、これからは「日本人が得意とする実直なものづくりは死守しなければならないが、それをどうアピールするかが問われ始めている」という。

今後も感動消費は広がっていくと予想する。その場合、いかに感動を共有し、広げていくことが出来るかが問われる。ブログやSNSを通じて、自分の感動を発信し、他の人と共有することで、さらに感動を増幅させる。それは人々の「絆ビジネス」ともいえるものに通じていく。

このような時代に、スーパーホテルのように「自律感動型人材」の育成は重要なキーワードになるのではないだろうか。自ら感動できる人間でないと、お客様に感動を与えるのは難しい。人材育成についても要一考だと思う。

ハーバード流ボス養成講座

日本経済出版社から標題の本が出版された。副題が「優れたリーダーの3要素」でリンダ・A・ヒル/ケント・ラインバック共著、有賀裕子訳で今年の1月発行された。(TOPPOINT2012.3号に紹介された要約版から)

優れたマネージャになる3要素とは「自分のマネージメント」「人脈のマネージメント」「チームのマネージメント」と言う。

まず「自分のマネージメント」。とかくマネジャーになって、部下に「これをやれ、あれをやれ」と権限を振りかざすやり方を是とするマネジャーが多い。しかし、これはすぐ自分の部署の仕事の効率面で破たんする(「俺の言うことを聞かないあいつが悪い」と言っても問題解決にはならない!)。部下に影響力を及ぼすためのカギは、上司としての権限ではなく、部下からの「信頼」である。信頼は、「マネジャーとしての手腕がある」「人徳がある」という二つの要素によって支えられており、これを得るためには、胸襟を開いて自分の手腕や人柄を示さなくてはならない。「人徳がある」というのは、「仕事に打ち込んでいる」「言行が一致している」「部下を公平に扱う」「じっくり話を聞く」「信頼して仕事を任せる」「慎重で口が堅い」などなどを言う。(私見で付け加えれば、「上司は自分に関心を持ってくれている」「自分の成長を見てくれている」も重要)

「人脈のマネージメント」。自分の成果を大きく、確実にするために、組織内外で如何に人脈を築き、それを活かして必要な支援、経営資源、情報を適切なタイミングで得られるかが重要となる。「業務面・戦略面・啓発面」それぞれの人脈作りが大切と説く。人脈においても、部下との信頼関係と同様、手腕と人徳が必要となる。「あなたと接するといつも得るものがある」と思われるかどうかだ。(私見:take&giveではなくgive&take。「利他の心」が人脈つくりの基本)

最後に「チームマネージメント」。「共通の目的とやりがいのあるゴールを掲げ、その実現に向けて互いの約束を交わして、共同で仕事をする人々の集まり、それがチームである。」約束を交わすとは、各自がチームの成果に貢献する責任を負い、仲間にもそれを求めると言う意味である。これがなかなか出来ていないのが現実であろう。ある仕事が終わって、達成感を味わえる仕事のやりかたになっているだろうか?最初に仕事の目的があり、その目的実現にための各自の役割が明確でないと、達成感はある筈がない。(浜松の都田建設を以前紹介したが、チームビルディングを目的として週1回昼休みにバーベキューをやるので有名。各自が自分達で役割分担をし、短い昼休み時間内に目的を達する練習だとか。http://jasipa.jp/blog-entry/7041

各企業とも、中間管理職層(課長職)の育成に力を注いでいる。社員の活力UPのカギを握る層である。上記を何らかの参考にし、自らの行動改革に活かしてほしい。

ネグロポンテの名前が懐かしい!

3月3日(土)の朝日新聞別冊「be」に「世界結ぶネット時代の先導者」として「MITメデアラボ」第4代所長となられた伊藤穣一氏の紹介があった。昨年4月250人を超す全世界の候補者の中から選ばれたそうだ。副所長も日本人の石井裕教授だ。

「MITメデイアラボ」は1985年にネグロポンテ氏が「人間とコンピュータの協調」をテーマに掲げ創設された。この頃はまだwindowsは出ておらず、MACが発売され、パソコン業界は多様なOSの中で熾烈な競争下にあった時代だった(と思う)。その中で、ユーザーインタフェースなどを題材にし、「目に装着した装置で目の動きを感知しながら、目の動きに沿ってパソコン画面を操作する」というような当時では非常に斬新な内容の本をネグロポンテ氏が出版され、早速購入して将来こんな世界が来るのかと、わくわくしながら読んだ記憶が蘇ってくる。このときから「ネグロポンテ」の名は頭の中に刻み込まれていた。

今では「MITメディアラボ」は世界最大のメディア研究拠点の一つ。これまでの成果としては、電子書籍を実現させた電子ペーパー「Eインク」やレゴブロックとコンピュータを組み合わせた「マインドストーム」など、様々な技術革新を生み出してきたそうだ。

伊藤氏(愛称はジョーイ)は、自らを「まるで落ち着きのない、何事にも集中できない人間にみえるでしょう」と言う。実際、70カ国以上でオープンな著作権運用に取り組む国際団体「クリエイティブ・コモンズ」の会長、デジタルガレージ共同創業者など30以上の肩書きを持ち、年の3分の2は世界を飛び回り、飛行機の移動距離は70万キロとか。アイディアを創出する環境としての「因習的なアプローチを排除し、境界線からはみ出すほどいい、すべてにおいてクレージーでオープンな実践を求める場」の責任者としては、もっともふさわしい人として選択された。

ラボ特別研究員の角川グループホールディングス会長角川歴彦会長は「21世紀に日本が遅れを取らないためにも、日本人が所長であることをうまく活かす環境をつくっていかないと」と話す。今後の伊藤氏、並びに「MITメディアラボ」の動向に注目したい。