「顧客サービス2012」カテゴリーアーカイブ

答はお客の中にある!

昨日は、あるJASIPA会員企業で、リーダー層を集めたサロンを実施した。4月からはじめている「JASIPA経営者サロン」の企業版である。7月28日にも別の企業で実施したが、昨日は2回目の試みであった。19時から開始し、終わったのが22時過ぎ。議論続出であっという間に時間が過ぎていった。

テーマはずばり「顧客から信頼される会社、社員となるためには」。出席者は10名。私の方から、JISAでも推進している「IT業界の構造改革」の必然性から、顧客へのサービス競争の激化を説き、これに打ち勝つためには何をせねばならないか、1時間ほどプレゼンをした。その後、「第2回JASIP経営者サロン」(http://jasipa.jp/blog-entry/7566)と同様、「顧客満足度」に関して意見交換をした。「如何にお客様からの期待、本音を聞き出すか」、「その期待に応える提案を如何にするか」、現場にいながら、お客様(一次請けベンダー含めて)と如何にコミュニケーション(言うべきことを言う)を取るか、皆さん悩んでいる実態も浮かび上がった。とかく、「お客様の指示通りにやっておればいい」となりがちだが、これではお客様からの信頼は勝ち取れない。「さすが○○さん!」「さすが△△社さん!」と言われる存在にならなければ、ますます激しくなるお客の奪い合いに勝てない。喧々諤々の議論から、何かを得てくれたのではないかと思う。

クリエイティブ・ディレクタ佐藤可士和氏は、ユニクロ、セブン・イレブン、楽天、ホンダなどの広告キャンペーンや、オフィスデザインなどで企業のブランドを挙げている方だ。よくも次から次へとアイディアが出てくるものと思うが、佐藤尾氏曰く「アイディアは自分がひねり出すものではなく、相手の中にある。たとえ初めて経験することであっても、対象と真剣に対峙すれば答えは見つかる」と。ヒット商品を生む秘訣は「前提を疑う」ことと、「人の話を聞く」こと。「デザインとは、一つのソリューション。一般的には表層的な形や美しさを作ることだと思われがちだが、クライアントの言葉にならない熱い思いやビジョンを引き出し、最適な形に具現化していくことだ。何人ものクライアントを抱えていると、つい目の前のクライアントを大勢の中の一人と考えがちだが、それは違う。クライアントにとっては、1回、1回は真剣勝負で、社運をかけて臨んでいるわけだから、失敗なんて許されないのだ」。(致知2012.9号より)

成功者は、お客様の視点に立ち、徹底してお客様の問題解決にあたっている。佐藤氏は打率10割、すべてホームランを目標にしているそうだ。我々にも大いに参考になる話だ。

転居届サービスレベルの悲喜こもごも

退職後は自宅を中心とした生活圏内で過ごすことが多くなった。会社生活と違って、市民生活レベルで、いろんなサービスに接することになる。「すごい!」と感心させられたり、これはおかしいと思ったり。今回は、転居に伴う転居届に関するサービスに関して。

「Kuroneko members」に登録すると、「○○様からのお荷物を△月△日にお届けします。日時のご指定がありましたら連絡ください」とのメールが事前に来る。住所変更の届けをすれば、郵便と同様、旧住所でも新住所へ届けてくれる。ここまで進んでいるとは知らなかったが、このシステムは核家族化が進んだ今、双方にメリットがある非常に意義のあるシステムと思う。他の宅配便業者も住所変更方法を捜したが、あまり当てにできないとの情報もあり、あきらめた。宅配便は、ヤマトがサ-ビス面で先んじている感がする。

住所変更届に関して同じ業界でも、これほど多様だとは知らなかった。以前に比べればインターネットで出来るようになって便利になっていると思うが、銀行なども届出方法はまちまちだ。インターネットだけで出来る銀行と、届出用紙を送ってもらって届出なければならない銀行がある。株に関する住所変更届に関しても、どういう仕組みかわからないが、証券会社に届けても、株主通知などで確実に変更されているものと、そうでないものがある。株主優待が旧住所に送られたりする(転居届後1~2か月後でも)。

区(東京)に住所変更届をしているのに、税務署や年金機構にも同じように届をしなければならないというのも腑に落ちない。故郷に固定資産などがある場合、地元の市役所、税務署にも届けなければならない。

旅行会社などから来る広告雑誌、通販ダイレクトメールなども問題だ。ある旅行会社で、インターネットで住所変更したのに、旧住所に配送される。旅行会社に電話すると、配送会社のせいにする。愕然とする。

3ヵ月たって何とか住所変更に関しては、落ち着いたのかなと思う。私の場合、前の住所に息子夫婦がいるから、誤配送が分かる。そうでない人は、恐らく分からずじまいで問題にも出来ないのではないかと思う。公共システムだけではなく、一般企業システムでも、それぞれのシステムがバラバラで、いろんな意味での統合化を志向しないと、問題は闇に葬られ、大きな無駄を放置することになる。IT業界の仕事はまだまだ多い!

付加価値UPが生きる道!

「致知2012.2号」に町田市の「でんかのヤマグチ」の社長が投稿されている。創業30数年を迎えた平成8年、地元に大型量販店が進出するとの話が入ってきた。あっという間に近隣に6店舗も出来、売上が年30%も近くも落ちることが予測され、3~4年で借金は2億円以上に膨れ上がったそうだ。生きるか死ぬかの瀬戸際で、社長が決断したのは、まさに逆転の発想、10年間で粗利率を10%UPし、35%にすることだった。当時大型量販店は平均15%、地元の電気屋が25%程度だったとか。「そんなことできる筈がない」との周囲の声が多かったが社長は「それ以外に生きる道はない」と決断した。

商品を「安売り」ではなく、「高売り」すること。そのためには、商圏をこれまでの3分の一まで絞り込み(行き届いたサービスの限界)、50代からの富裕高齢者層に絞り込んだ。お客を訪問する回数を増やし、家電の使い方などの指導はもちろんだが、本業とは無関係な買い物のお手伝いや、留守中の植木の水やり、郵便物や新聞を数日預かったり、無償で行ったそうだ。

会社のモットーは「お客様に呼ばれたらすぐに飛んでいく」「お客様のかゆいところに手が届くサービス」「たった1個の電球の取り換えでも飛んでいく」。これを1万200世帯のお客に、50名で頑張っているそうだ。良い評判が広がり、目標の粗利率35%は8年で達成できたとか。2億円以上の借金も3年前に完済されたそうだ。

社長曰く「大型量販店の進出がなければ、いまだ安売り競争をやって悲惨な目にあっていたかも知れない。人間はトコトン追い詰められ、地べたを這いずり回るような思いで必死になって取り組むことで道が開ける」と。

もう一つ事例を紹介する。2月19日日経の「日曜に考える」の記事から。中国で最も安定的な成長軌道に乗った小売チェーンはどこか?イオンでも、セブン&アイでもなく滋賀県彦根市の平和堂だ。1990年代初めに滋賀県と友好関係にあった湖南省から同省長沙市への出店要請があった。社内では猛反対を受けたが当時の会長は「内陸部もいずれ成長する」として決断。しかも、スーパーしか経験がないのに、「日本企業なのでブランド品など品質の高い商品を求めるニーズが高かった」ため、ローレックス、シャネルなどを扱う百貨店形式での出店を決断。既存3店に加え、中国各地から出店要請が来ていると言う。これも将来のマーケットを読んだ高付加価値商売への転換の事例であろう。

「安売り競争」に甘んじていると、ますます夢はなくなる(どん底に沈み込む)。マーケットを読み、お客との対話を通して、お客の期待する付加価値で他社をしのぐ優位性を発揮するにはどうすればいいか、真剣に考えたい。