「経営改革」カテゴリーアーカイブ

小が大を超える!(JASIPA会員企業に期待)

6月5日の当ブログで、「クラウド時代は中小ベンダーの出番」という意味の記事を掲載すると同時に、日経記事の「日本IBMに独から来たリストラ社長」で日本IBMの厳しさを紹介した(http://jasipa.jp/blog-entry/7602)。

最近出版された「小が大を超えるマーケティングの法則(岩崎邦彦著、日本経済新聞社)」では、高度成長時代は「大きいことはいいことだ」だったが、今は「規模の大きさは強さを意味しない」と言う。ITベンダーに特化している話ではなく、衣料・食品販売企業と考えれば良くわかるが、「個性」、「専門性」、「こだわり」などが小さな企業の強みになるとの事。そして、小さな企業は、次の3つの力を高める必要性を説く。

  • 1)本物力:シンボルとなる商品を軸にして、個性やこだわり、専門性を発信し、本物志向に応える。
  • 2)きずな力:顧客との関係を深化させ、顧客一人一人との「きずな」を強化していく。それにはまず、現在の顧客の満足度を高める必要がある。
  • 3)コミュニケーション力:顧客に対するきめ細かなアドバイスや提案を行うなど、顧客との「人的コミュニケーション」を強化する。

JASIPAは、比較的小さなITベンダーの集まりであるが、今こそ「好機到来」と考え打って出るチャンスかも知れない。経済が成熟化し、需要も多様化、人口減少、環境問題など先が読めない時代が今後も続くと思われる。そのような時代に、社長の方針が瞬時に社内に徹底でき、小回りの利く「中小ベンダーの強みを強みとする経営」が、社会からも求められているのではないだろうか。上記「きずな力」や「コミュニケーション力」など、社長が先頭に立って規範を示し、それを社員が見て自らの行動に反映すると言う形も、大きなベンダーでは不可能である(顧客数、プロジェクト数を考えても不可能)。小さいが故に、社長一人の姿勢・行動が、大きな強みになり、社員をモチベートし、顧客との一体感を醸成することにつながりやすい。逆に言えば、社長次第で会社の帰趨が決まるとも言える(大企業では、多少社長の出来が悪くても優秀な人材がカバーできる)。

この4月から若手経営者との経営に関する懇談会を始めている(第1回:http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2012/4/27、第2回:http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2012/5/25)。7月から正式に「JASIPA経営サロン」と称して、会員企業の方がたから参加希望者を募ることにしている(原則第4木曜日夜)。経営者同志の経営に関するフランクな意見交換を通じて、中小ベンダーの強みを未来に向けて強化してほしい。JASIPA会員の積極的参加を期待している。

イノベーションのジレンマ

今朝の日経のコラム「経営書を読む」に早稲田ビジネススクール根来教授の記事がある。標題は「クリステンセン著『イノベーションのジレンマ』―リーダー企業への脅威」。

調べてみると、この本は2001年翔泳社出版の本で副題に「技術革新が巨大企業を滅ぼす」とある。「イノベーションのジレンマ」という言葉は、ヤフージャパンの社長交代が発表された際の日経(?)記事が記憶に残っている。ヤフージャパンに関する話は、55歳の井上社長が6年前「イノベーションのジレンマをいかに克服するかばかり考えている」と話していたが、そのジレンマを打ち破れず、今回経営刷新に踏み切ったとの記事だった。この4月から社長になったのが44歳の宮坂社長。若返りだけというのは気になるが。

今回の記事では、リーダー企業を脅かす破壊的イノベーションには2種類あるとし、一つは「ローエンド型破壊」、もう一つが「新市場型破壊」と言う。「ローエンド型破壊」とは、過剰サービスと感じている人たちに、既存の製品・サービスの性能を落としてローコストで売るビジネスを言う。過剰サービスのデパートが、セルフサービスのスーパーにとって変わったのが一例。しかし、なかなか既存企業が察知しにくいのが、従来の製品・サービスにない性能などを提供することで需要を作り出す「新市場型破壊」だと言う。例えばデジタルカメラは「その場で見られる」「パソコンに保存できる」という新しい性能の提供で、従来のカメラとは異なる需要を創造した。そして、デジタルカメラへの追随姿勢によって、業界模様が大きく変わったのはご存じの通りである。真空管ラジオからトランジスタラジオへの移行でも、ソニーが先行し、他のメーカーは追随が遅れ苦労した。

クリステンセン氏は、「新市場型破壊」の成立要件を4個挙げている(詳細は日経Bizアカデミー参照)。この4つの条件を根来教授が、直近の事例として「クラウドコンピューティングサービス」に当てはめて考えている。

  • (1)ターゲット顧客である中小企業は、金・スキルが不足し、なかなか情報化投資に踏み切れない。
  • (2)このような顧客は「情報システムを全く使わないよりまし」との考え方で、少々機能が限定されていても満足してくれる。
  • (3)ユーザーから見ると、基本ソフトやサーバーなど気にせず、シンプルで便利な「誰でも使える」ものになっている。
  • (4)既存SI’erにとっては、カスタマイズもなく利益を生まない製品で、従来販売チャネルではなく、新たなものが求められる。

4つの条件を満たすため、クラウドコンピューティングは「新市場型破壊」に成長していく可能性ありと言われている。JASIPA会員企業の頑張りどころとも言える。

感謝力!この力があなたの成功の鍵!

松下幸之助氏はじめ、成功した方々の名言の中で「感謝の心」の重要性が説かれている。「致知」の過去の記事から、その「感謝力」の記事を2編抜き出して紹介する。

まず、還暦でプロゴルファーになった古市忠夫氏の「奇跡を起こす方程式」(2009.7松下幸之助に学んだこと)より。古市氏の半生は映画化され、その上映会にタイガーウッズも来たとか。


最近、なんで俺がこんなありえない人生を歩んでいるんだろうと考えた時、「奇跡を起こす方程式」を思いついたんです。

「奇跡=才能×努力×感謝力」

さっきも言うたように、才能や努力ではプロテストを受ける二十代の若者には敵いません。しかし、感謝力だったら負けない自信がある。

(中略)

人生は最後の最後まで分からない、というのが私の持論です。私たちは震災であまりにも多くのものを失いました(注:古市氏は阪神大震災で自分の店を無くされました)。しかし、それによって大切なのは物ではなく、お金でもなく、地位や名声でもない。人の愛であり、優しさであり、人を思いやる心であり、感謝であり、積極的な心だと分かった。そのおかげで、いま、私は夢のような人生を歩んでいる。人生、何がピンチで何がチャンスか、その時点では判断できないと思うんですよ。

でも、どんな時でも正直に、悔いなく、感謝の心を持って生きると、ものすごいパワーが生まれて奇跡を起こしてくれる。それは誰が起こしてくれるのか? 周りの人です。自分の力では奇跡は起きません。


次は、サンリ会長の西田文郎氏の「10人の法則」(2009.7)より。北京オリンピックで金メダルのソフトボールチームを指導した時の話。


お釈迦様は東西南北と天地、要するにすべてに感謝しなさいと言われました。これを選手用にアレンジしまして、東に向かって先祖に、西に向かって家族に、南に向かって恩師、北に向かって友人に、そして天地に向かって自然に感謝してくださいと。(六方拝)

また、用紙に自分の名前を中心に書いて、その周りに恩師とは誰なのか、家族には何を感謝するのか、ということまで明確に書いてもらいました。これらのことは、選手の皆さんには「外気を取り入れる」という言い方をしましたが、多くの人がいてくださって生かされているという感覚を持っていただきたかったんですね。ただ、人間の思いは思っているだけでは強化されませんから、

「特に感謝すべき人を十人挙げて、1年以内に感謝の心を伝えに行く」

  ということを実践してもらいました。これは何も彼女たちに限ったことではなくて、私は経営者層や他の職種の人たちにも言っていることなんです。

(中略)

自分自身はもちろん、チームメイトを信じられることが、最終的にチーム力となって絶対表れると思いました。だからそういうことに取り組んでいただいたのです。ただ、これはスポーツ選手に限った話ではないので、ぜひ一般の方にも六方拝、「十人の法則」をやっていただきたいと思いますね。


あの上野投手も高校時代の恩師の墓参りをしたそうだ。新しい年度が始まり、新入社員も入って来ました。「素直な心を持って、感謝の心を忘れない」、そして稲盛さんの言われる「利他の心」を持って、人間の絆をより強める年にしたいものです。