今朝の日経のコラム「経営書を読む」に早稲田ビジネススクール根来教授の記事がある。標題は「クリステンセン著『イノベーションのジレンマ』―リーダー企業への脅威」。
調べてみると、この本は2001年翔泳社出版の本で副題に「技術革新が巨大企業を滅ぼす」とある。「イノベーションのジレンマ」という言葉は、ヤフージャパンの社長交代が発表された際の日経(?)記事が記憶に残っている。ヤフージャパンに関する話は、55歳の井上社長が6年前「イノベーションのジレンマをいかに克服するかばかり考えている」と話していたが、そのジレンマを打ち破れず、今回経営刷新に踏み切ったとの記事だった。この4月から社長になったのが44歳の宮坂社長。若返りだけというのは気になるが。
今回の記事では、リーダー企業を脅かす破壊的イノベーションには2種類あるとし、一つは「ローエンド型破壊」、もう一つが「新市場型破壊」と言う。「ローエンド型破壊」とは、過剰サービスと感じている人たちに、既存の製品・サービスの性能を落としてローコストで売るビジネスを言う。過剰サービスのデパートが、セルフサービスのスーパーにとって変わったのが一例。しかし、なかなか既存企業が察知しにくいのが、従来の製品・サービスにない性能などを提供することで需要を作り出す「新市場型破壊」だと言う。例えばデジタルカメラは「その場で見られる」「パソコンに保存できる」という新しい性能の提供で、従来のカメラとは異なる需要を創造した。そして、デジタルカメラへの追随姿勢によって、業界模様が大きく変わったのはご存じの通りである。真空管ラジオからトランジスタラジオへの移行でも、ソニーが先行し、他のメーカーは追随が遅れ苦労した。
クリステンセン氏は、「新市場型破壊」の成立要件を4個挙げている(詳細は日経Bizアカデミー参照)。この4つの条件を根来教授が、直近の事例として「クラウドコンピューティングサービス」に当てはめて考えている。
- (1)ターゲット顧客である中小企業は、金・スキルが不足し、なかなか情報化投資に踏み切れない。
- (2)このような顧客は「情報システムを全く使わないよりまし」との考え方で、少々機能が限定されていても満足してくれる。
- (3)ユーザーから見ると、基本ソフトやサーバーなど気にせず、シンプルで便利な「誰でも使える」ものになっている。
- (4)既存SI’erにとっては、カスタマイズもなく利益を生まない製品で、従来販売チャネルではなく、新たなものが求められる。
4つの条件を満たすため、クラウドコンピューティングは「新市場型破壊」に成長していく可能性ありと言われている。JASIPA会員企業の頑張りどころとも言える。
論点はズレますが、5年前に比べて「イノベーション」というword が使われている機会が60%も増えている(安易に使われすぎている)という指摘が、米国でなされたようです。破壊的イノベーションを以ってはじめて イノベーションと云うべきか? 議論されてよいかもしれませんね。