「経営改革」カテゴリーアーカイブ

会社は変われる!

タイトルを題名とする本が6月に出版されている。副題が「ドコモ100日の挑戦」とあります。元日本コカコーラ会長の魚谷正彦氏が低迷していたNTTドコモの改革に寄与した軌跡を記述したものです。2006年の「ケータイ満足度調査」で競合2社に惨敗し、新聞では大々的に「巨人の凋落」と酷評されていたが、2010年に堂々の一位を勝ち得たのだ。確かに、この7月21日に発表されたサービス産業生産性協議会が発表したJCSI(日本版顧客満足度指数)の調査結果でも、キャリアで昨年に続き一位となっている。

魚谷氏曰く「お客様起点のマーケッティング」発想に基づく改革を徹底したとのこと。何が問題だったか?価格の高い機種を買ってくれるお客様が一番いいお客様で、高いものを如何に買ってもらうかが社全体の課題であった。これはまさに作り手側の発想。そしてさらには、既存顧客よりは新規契約の拡大に注力していた。こうして、他社との競争においてドコモブランドの劣化が進んでいた。

そのため、「手のひらに、明日をのせて」のスローガンのもと、社長が先頭に立って、お客様起点の意識改革に取り組んだ。「コンタクトポイントの量と質がブランドを高める」ことは分かっていても、3万人のスタッフの行動方向性が統一できていただろうか?具体的なターゲット顧客を決めるには?高度成長期とは違い、成熟期では新規顧客以上に顧客基盤の強化(既存顧客が維持できるブランド力)が必須。いわゆる「ロイヤリティ戦略(継続的な利用意向)」こそが重要となる。

社長がトップの「ロイヤリティ・マーケティング委員会」では、100以上の具体的なアクションを決めた。その中の一つが電池無料交換期間の短縮(プレミアム会員向け)であった。寿命が1年3カ月程度と知りながら交換は2年としていたのを1年にした。社員も気付いていたが、コストがかかるため言い出せなかった。

このような活動で3年で会社が大きく変わった結果が顧客満足度一位であった。

先週27日のJASIPA定期交流会で講演して頂いた小松製作所の渕上様の主題は「本業回帰で劇的な収益向上」でした。とかく業績が思わしくないときは、新規事業に関心が向き、新規顧客拡大に目が向く。渕上様曰く、新日鉄はじめ多くの大企業もそれで大失敗に終わっていると。成熟社会の今、既存のお客様に視点をあてた活動を重視し、お客さま視点のサービス強化で他社との差別化、すなわちブランド化で企業をよみがえらせる、そのための具体的な方策を打ちだすべきではなかろうか。先述のサービス産業生産性協議会のJCSI調査結果(*1)では昨年と一位が逆転した業種が増えつつあるそうだ。まだサービス競争は緒に就いたばかり、早く目覚めた企業が勝ち組になれる、

 *1:http://activity.jpc-net.jp/detail/srv/activity001042.html

コ・クリエーション戦略

‘これからの時代は、企業側の視点だけでは不十分で、顧客をはじめ、すべての関係者と「共同」でイノベーションを行う事が求められる’というのは、「生き残る企業のコ・クリエーション戦略」の本(徳間書店、2011.4.30発行)の著者ミシガン大学のラマスワミ教授など。

参加型プラットフォームを構築することで、上記イノベーションを行うことを「コ・クリエーション」と呼ぶ。

その事例として挙げられるのが、ナイキとアップルで共同開発した「NIKE+(ナイキプラス)」。これは靴につける高性能センサーとiPhoneなどに内蔵された無線受信機からなり、ジョギングのデータを記録、分析出来るという。また「NIKE+」のウェブ上で、コーチや有名アスリートと交流もできる。このシステムにより、ナイキはランニングシューズのシェアを10%増やしたそうです(47%→57%)。しかも広告費を55%減らして。

スターバックスは「マイ・スターバックス・アイディア」というウェブサイトを立ち上げ、顧客から商品開発や店舗デザインなどのアイデアを集めている。このシステムは、会社の急拡大により経営陣が顧客視点をわすれてしまったため、急遽創業者がCEOに返り咲き、創業時の「顧客に価値ある体験を提供する」とのスターバックス精神に戻るために作ったシステム。常連客の好みをカードに登録し、次の来店時はそのカードを提示すればすぐ好みのものが出せるとのアイデアも顧客から出されて実現したそうだ。

日本のクラブツーリズムも、200以上のテーマクラブを作り、お客様の声を吸い上げているそうだ。各テーマにフレンドリー・スタッフを専属につけ、新たなツアー、既存ツアーの修正などの価値ある新たな体験に関するアイデアを引き出しているとか。

トヨタとセールスフォース・ドットコムの提携も、特定車種に関するメーカー・販売店・顧客のソーシャルネットワークのためのプラットフォーム作りと言われているから、コ・クリエーション戦略のようですね。

この戦略のメリットは、まさに顧客(ユーザー)視点の徹底である。以前の「いいものを作れば売れる」との企業の論理は通用しない(サムスンのビジネスモデルが好事例)。如何に顧客を製品開発に巻き込めるか、これからの企業戦略にとって参加型プラットフォームは大いに注目すべきものと思います。

グレートカンパニー

船井総研と言うコンサル会社がある。2010働きがいのある会社ランキング15位にノミネートされた会社である。この会社が昨年「グレートカンパニーアワード」制度を設け、今年2月に第2回目の表彰企業を発表した。船井総研のグレートカンパニーの定義は「社会的価値の高い理念のもと、その企業らしさを感じさせる独特のビジネスモデルを磨きあげ、その結果、持続的成長を続ける会社」、と同時に社員と顧客が「素晴らしい会社」と誇りを持つくらいの独特のカルチャーが形成されている企業とのこと。

「日本でいちばん大切にしたい会社」など、いろんなランキングが発表されているが、どこも経営者のリーダーシップ(独裁ではなく)が光る。何かヒントを得たい。

昨年の第1回で受賞した企業を紹介した「グレートカンパニーのつくり方」(徳間書店)より少し紹介する。

表彰企業は大企業ではなく、中小企業でかつ地方企業が多い。大企業と同じことをやっていては将来性はない、1点突き抜けた特徴を持ち、お客様に喜ばれる、そんなビジネスモデルを、ある会社は社長の決断で、あるいは社員がお客様の感性で商品開発をする、と言う形で作りあげている。すべてに共通するのは、お客様の期待、感性に応えること。

さいたま市のリフォーム会社「OKUTA」は年商40億円程度だが、自然素材、高品質設計、エコロジーに徹底してこだわり、大企業より価格は高くても、熱狂的なファンクラブがあり、噂が噂を呼び成長し続けている。企業哲学は「LOHAS」,ファンクラブ名は「OKUTAロハスクラブ」。中小企業だから大きな成長を望まず「ロハス」を徹底でき、「らしさ」を完遂できる。

さきの「感動3.0」の記事でも紹介した長野県の「中央タクシー」も表彰されています。お客様へのサービスを徹底的に差別化し、日本でもっとも「ありがとう」が飛び交う会社(お客様に対しても、お客様からも、そして社員同士でも)とも言えるそうです。長野オリンピックの特需にも目もくれず、地元のお客様第一で運営、今ではお客様からの感謝の手紙が数多く届くそうです。長野から成田、羽田への送迎タクシー(空港タクシー)がヒットしているそうです。ある時、中央道の事故渋滞で飛行機に間に合わないことがあったのですが、翌日の飛行機の手配、宿泊代など150万円ほど自社で負担し、誠意を尽くしたということで、これが話のタネになりますます人気が出たとか。

大阪の若い女性向けのアクセサリーやバッグなどのファッション雑貨やキャラクター雑貨を扱う300円均一ショップ「三日月百子」(月曜から日曜まで300円で女の子を対象と言う意味を社名にした)。10代後半から20代前半の女性社員(社員400名に内男性は4人だけ)の感性に任せた店舗運営が成功したそうです。まったく知らなかったのですが、既に全国に68店舗あるそうです。

世の中には、不況知らずの元気な会社があるものですね。考えさせられます。他には、千葉県白井市の算盤塾「イシド」、名古屋の「買取天国」、東大阪のゆるまないナット製造「ハードロック工業」が表彰されています。2回目(この2月)は、広島県の食品スーパー「エブリィ」、滋賀県のパチンコホール「イチバン・コーポレーション」、愛知県の介護サービス「ステラリンク」、島根県の「東京靴」が表彰されています。