近年、日本では、政治家や企業人が座禅を組み、書店では“禅”関連の本が並ぶ。欧米では、日本の“禅”をルーツとする“マインドフルネス”の概念が普及し、座禅などの企業研修がGoogleやゴールドマン・サックスなどの有名企業で採用が広がっている。マインドフルネス関連の本も日本の書店で数多く並んでいる。
東京の下町、台東区谷中にある臨済宗「全生庵」(山岡鉄舟が開いた禅寺)には、中曽根首相も首相時代毎週末、現在は安倍首相も時折座禅を組みに訪れるので有名だ。中曽根さんは自著で「健康で5年間の首相時代を全うできたのも、座禅のお陰です。1週間の肉体的苦悩と疲労が洗い落とされるのです」と書いているとか。
マインドフルネスに欧米で注目がされ始めたのは、リーマンショックが契機と言われる。実利の追求を善とする「実 践主義(プラグマティズム)」が壁にぶち当たり、“自己実現”を重視した自己中心的な考え方がリーマンショックを生んだとの理解が生まれ、仏教的な思想に目が向けられるようになった。
座禅の基本は、「調身(姿勢を調える)」→「調息(息を調える)」→「調 心(心を落ち着かせる)」の順に行うこと。姿勢を整え、深く呼吸に意識を集中する。そして呼吸の数を数えることで雑念を意識の外に流し、心を穏やかに整えていく。
日本でも企業や大学で“禅”の研修を取り入れるところが出始めたそうだ。インターネットの毎日新聞デジタルニュースによると、昨年度から経営コンサルタント会社「シマーズ」(代表取締役社長島津清彦氏)で禅の思想を取り入れた企業研修の提供を始め、1年で大企業や官庁など16社の研修を請け負ったという。東日本大震災で自宅が液状化で大きな被害を受けたのを契機に「人生後悔したくない。人間本位の社会、会社を作る手助けをしたい」と一念発起。スティーブ・ジョブスや稲盛和夫氏など著名な経営者を調べると多くが“禅”に行き着くため、これは何かあるなと直感し、曹洞宗で得度を経て、自らその効果を実感し起業した。日本大学では、危機管理学部(今年4月新設)で、座禅の講座を設け、上記「全生庵」の住職平井正修氏が客員教授となって学生の指導を行っているそうだ。構内に専用の座禅室を設け、1年生は月1回90分の座禅講座を受講する。
米国スタンフォード大学でマインドフルネス教室を運営するのが、日本生まれのスティーヴン・マーフィ重松氏で、「スタンフォード大学マインドフルネス教室(坂井純子訳、講談社、2016.7刊)という本を出版されている。重松氏の講座の目的は、「あなたは誰か」の問いかけから「本当の自分」を見つけ、「人生の目的」を見つけること。
変化が激しく、情報過多の時代、その中での競争の激化で、ストレス満載の時代。一度ゆったりと座禅の世界を経験し、自らを見つめなおすことによって、主観(感情)を排して 物事をあるがままに見れるようになれるなら、一度経験してみたいなとも思っている。日々忙しさに取り紛れ、ストレスを貯めている人も一度座禅を考えてみてはどうだろうか。
今年3度目4輪目の月下美人の花が咲いた(22日)。一晩のはかない花だが、見事な風貌と香りに心が癒される。
「生き方」カテゴリーアーカイブ
「ありがとう」が生んだ奇跡
「致知2016.8」に「遺伝子のスイッチオン」で有名な筑波大学名誉教授村上和雄氏との対談記事で、現代治療ではもはや手の尽くしようのないがんを患いながら、見事に生還を果たした工藤房美さんが登場している。これまでも、JR福知山線事故に遭遇し医者も諦めた(脳がぐしゃぐしゃ)女性が、北京パラリンピックの水泳に出場できるまでに回復したこと(http://okinaka.jasipa.jp/archives/26)や、スキーの転倒事故で首から下が全く動かなくなり、医者から「たぶん一生寝たきりか、よくて車いすの生活になるでしょう」と宣告された人が、遺伝子のスィッチをオンにして、蘇り、かつその経験を全国の小学校などを「命の授業」と称して講演して回っている腰塚勇人さんの話し((http://okinaka.jasipa.jp/archives/373)など、村上和雄氏のスイッチオンの考え方に共鳴し生き返った人を紹介してきた。
工藤さんも48歳の時、どうしようもない状態での子宮がん宣告を受け、激しい痛みとたたっているとき、村上和雄氏の「生命の暗号」という本に出合った。奇跡的な命の誕生(一つの生命が生まれる確率は1億円の宝くじに百万回連続して当たる確率に等しい)、そして60兆個の細胞の中の遺伝子の98%がオフになっていることなどを知り、自分にだって希望はあると気付く。そして、遺伝子一つ一つに夜を徹してお礼を言うことから始めた。目や耳、口から始まり、抗がん剤治療で抜けた髪の毛にまでも私の一部であったことで一本づつにありがとうを言い続けた。そういう日々を送っていたら、子宮癌から肺や肝臓に転移していたガンも医者が驚くほどになくなってしまった。その闘病経験を、村上先生に背中を押されながら「サムシンググレート」のメッセンジャーとして「ともかく”ありがとう“と思い、言い続けることでガンが治った人が目の前にいることは一つの希望になるのでは」と語り歩いている。
村上和雄先生の言葉を拾ってみる。
『人間と言うのはまさに「Something Great(偉大なもの)」で、一人に60兆個の細胞があり、その中に32億個の遺伝子の暗号を持ち、それらが見事に調和してそれぞれが自立的な生命を営んでいるとか。全世界の最高知恵を使ってもロボット程度しか作れない、まさに「Something Great」なのです。そして遺伝子は98%眠っているのだそうです。その眠っている遺伝子を如何にオンにするかで、その人の人生は変わってくると言うことです。「遺伝だから仕方がない」は間違いで、環境次第でどうにでも変化するものが遺伝子だということです(食事療法がひらくがん治療の新たな道http://okinaka.jasipa.jp/archives/3771より)。』
『良い遺伝子を目覚めさせるのは、感謝、感動、利他の心、笑い、何事にも一生懸命になる素直さ、病気も落第も自分に与えられた試練でありがたいと思う心など、人生を前向きに目標を持って励めば遺伝子のスイッチはオンになっていくそうです。本来人には優劣が殆どなく、成功者とそうでないのは、どれだけ遺伝子をオンに出来るかということだそうです。イチローの成功もまさにその典型であり、目標をしっかり持って米国にあえて挑戦した時の気持ちの持ち方と努力が、遺伝子を大きくオンにした成果だろうとも言っています。恋人を持った女性が美しくなる(見える?)のも説明できるらしい(「遺伝だから仕方ない」は間違い!http://okinaka.jasipa.jp/archives/26より)。)
「命の授業」で腰塚さんが話す“五つの誓い”を再掲しておく(http://okinaka.jasipa.jp/archives/373)。
●口は人を励ます言葉や感謝の言葉を言うために使おう
•耳は人の言葉を最後まで聴いてあげるために使おう
•目は人の良いところをみるために使おう
•手足は人を助けるために使おう
•心は人の痛みがわかるために使おう
考え方ひとつで、こうも人の生き方、幸せ感は違ってくる。遺伝子をスイッチオンするための生き方を真剣に考えてみてはどうだろうか。
人は笑うから楽しくなる!(臨床道化師塚原氏)
英語名クリニクラウンの臨床道化師とは、病院を意味する”クリニック“と道化師を指す”クラウン“を合わせた造語で、入院生活を送る子供たちの病室を定期的に訪問し、子供たちの成長をサポートしながら笑顔をはぐくむ道化師のことを言う。クリニクラウンによる国内初の組織を結成し(平成17年)、日本に新たな道化師文化を醸成してきた臨床道化師塚原成幸氏と笑いを研究テーマの一つに掲げる筑波大学名誉教授村上和雄氏との対談記事が「致知2016.9」に掲載されている。
東京出身の塚原氏は、満員電車の中などで、ともかく笑いが少ない世界を問題視し、道化師を目指す。最初は、劇場やテーマパークで仕事をしていたが、ある時「劇場に来る人が本当に笑いやユーモアを心の底から必要としているのだろうか」との疑問を持ち、自分で足を運んで笑いやユーモアを必要としているところに出ていくしかないと考え、クリニクラウンの組織を結成することになったそうだ。
小児医療の現場で活躍されているが、その考え方にも共感を覚える。訪問した際の演劇で一時的な笑いを提供するのではなく、子供たちや両親、看護婦など周辺の人たちの心に後々まで残り、お互いの関係(母と子供、子供と看護婦の信頼関係など)を改善し、臨床道化師の役割を誰でもが果たせることに気付いてもらうことだと。例えば、子供を入院させて自分を責める母親も多い中で、演劇の途中で母親に参加してもらい、子供が母親の手を握り返す姿に、子供の母親を思う気持ちを感じてもらい母親に自信を取り戻してもらう。
笑いを提供し、笑いを拡げていく役割を果たす道化師を専業とする人はまだ全国で100人程度とか。塚原氏の座右の銘は「人は楽しいから笑うんじゃなく、笑うから楽しい」という。テレビやゲームに熱中して、遊び(心)を知らず、 “楽しい”“嬉しい”“悲しい”との感性にも弱く、他の人との関係性にも疎いまま大人になっていく子供たちに焦点を当て、“笑い”を拡げていく道化師。これまであまり知らなかった世界だが、こんな立派な役割を果たそうとする職業であることを知った。日本の将来を担う子供たちのためにも頑張ってほしい。