「日本の課題2013(2)」カテゴリーアーカイブ

消費税増税決定(10月1日)~法人復興税前倒しに対する疑問~

10月1日安倍総理は来年4月からの消費税3%増税を決断した。合わせて景気の下振れを懸念した経済対策も合わせて発表した。その中で、今年12月中に決定するとした復興特別法人税の1年前倒し廃止が議論を呼んでいる。

私も、なぜ法人税の中の復興税を前倒し廃止することにしたのか?与党の中でも議論があるように、国民すべてが復興支援する「絆の増税」だったのが、個人に対する課税はそのままにし、法人だけ前倒しにすることに、国民の多くが疑問を呈しているのではないだろうか。なぜ、国民の不評を買う復興法人税に手を付けたのだろうか?1日の記者会見の説明では理解できない、というか、むりやりこじつけた論理としか受け取れない。安倍総理は、「個人対法人の考え方はとらない。(企業の)収益が伸びれば雇用が増え、さらに賃金が増えれば家計も潤う。」と説明している。また「日本の法人税を下げて、外資が進出しやすい環境を作る」とも言っている。その理屈からすると、何も復興法人税分を廃止するのではなく(復興税分は2年すればなくなる暫定税)、法人税そのものを減税するのが自然の論理ではないかと思うがいかがなものか?

要は、安倍総理も法人税減税が本丸と思いつつ、国民より怖い何かがあるため、とりあえず復興税減税とせざるを得なかったということと推測できる。それを無理して説明するため論理矛盾を起こす。あるいは継続的財源確保が難しいからとりあえず復興税にしたのか?しかし、それも、今回の復興税減税の財源としては、主に経済成長による法人税増分を充当すると言っているが、それなら「経済成長に関して絶対達成しなければならない。私を信用してくれ」とのこれまでの自信に満ちた言葉からすると、法人税減税は経済成長による税金増分で十分財源を賄えると自信を持って言えないのだろうか?

今回の復興税減税分を賃金に使えと言っているが、経営者は、暫定的な減税ではなく、永続的な減税でなければ、一時金はともかく、給与UPに踏み切れないのではなかろうか。トヨタの社長が言うように、成長戦略の3本目の矢をきっちりやって頂くことが肝要」との発言も、まさに継続的な経済成長実感が欲しいと言うことだと思う。

「脱デフレ」は国民の悲願だし、賃金UPに対しても期待大だと思う。その兆しは出ているが、今は期待感が主体だ。今回の5兆円の経済対策も金額ありきで、中身はほとんどない。今回窮余の策として復興法人税前倒しを選択したが、これが成長戦略の1丁目1番地と総理が言う規制緩和に向けて、打ち破れない岩盤の存在を認めざるをえないと言うことだとすると成長戦略にも暗雲が立ち込める。安倍総理のリーダーシップと覚悟に対する期待は大きい。今回のような辻褄合わせの論理を強弁するのは辞めて、素直に国民が納得できる政策を推し進めてほしい。

朝日環境フォーラム2013~美しい星 つながる未来~

最近とみに地球温暖化に関する記事が多くなってきた。11月のCOP19(国連気候変動枠組条約機構)が近づいてきたからだろうか。9月28日には6年ぶりに国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書が公表された。それによると、今世紀末には平均気温が4.8度上昇し、海面が82cm上昇する。そして「気温上昇が人間活動に起因する可能性は95%以上」「温暖化ガスの濃度は少なくとも最近80万年で前例のない水準」「CO2濃度は産業革命前から40%増加」などとも言っている(日経)。当ブログでも9.6に「世界的な異常気象への対応は?」(http://jasipa.jp/blog-entry/9033)で問題指摘したが、日本政府は環境省と経産省で調整がつかず、先進国の中で唯一温室効果ガス削減目標が決まっていない。新しいエネルギー構成が原発比率が定まらないため決められず削減目標は決められないと言うのが経産省の言い分と言うが、実現可能値を置くのが目標だろうか?地球規模の問題で、今の状態が続けば世界が崩壊するかも知れないと言うときに、実現可能値しか頭にないのでは、日本のリーダーシップは到底発揮できない。昨日の記事(朝日)では、2020年に2005年比6~7%減程度とする調整に入ったとある。元々京都議定書では1990年比での目標設定をしていたが、2005年の温室効果ガス排出量は90年より7%多いという。日本の今回調整に入った目標は、2020年に1990年並みに戻ることを意味し、国際社会の批判を受ける可能性を指摘している。今、省エネ技術では世界最先端を走っている日本に対する世界の期待は大きい。さらなる技術開発を促進し、アベノミクスの成長戦略を刺激するためにも、ある程度チャレンジングな目標を設定し、世界をリードする気概が求められるのではなかろうか。

「朝日地球環境フォーラム2013」が9月30日~10月1日に開かれた。世界の専門家に交じって中田英寿氏もスペシャルトークを行っているが、私はビデオメッセージを寄せたカナダの日経4世セバン・かリス・スズキ氏の話に興味を持った。タイトルが「我が子のために世界を動かそう」。21年前の12歳の時にリオの地球サミットで演説し有名になった方らしい。昨年もリオでの「国連持続可能な開発会議」に参加されたそうだが、この20年いろんな会議に参加しているが、最近持続可能性に対する政治や社会の力が失われている感じを受けていると言う。彼女は言う。「権力者の最重要課題は相変わらず経済成長だ。人類の存続を可能にしてきた地球環境のバランスを維持するために、今、何よりも必要なのは経済、社会的パラダイムシフトだ。子供に対する親の愛が社会を変える源泉になる。私たちが行動を起こさなければならない最大の道徳的責任は、子供の為、未来の為、愛の力を活用し、地球の現状に照らして自分の選択肢を決め、恩恵と責任をしっかり関連付けて考える社会に転換しなければならない」と。彼女は、「政府のトップに任せていては世界は変わらない」と環境活動家として世界を駆け巡っている。

日本でも、「経済成長」を第一義としたアベノミクスがもてはやされているが、「経済成長」のみではなく、未来の環境を考慮した日本の良さ(森の多さなど)を生かし、伸ばすための施策も合わせて必要ではないだろうか。当初安倍総理も言っていた「日本の里山文化も守っていく」との発言に対する施策が全く見えない。「日本の森を守る」ために地方でいろんな取り組みが行われているが規制の壁に阻まれ広がらないと聞く。木材チップを使ったエコストーブや、木材利用の技術革新など。「里山資本主義(藻谷浩介、NHK広島取材班共著、角川書店、2013.7.10)」に詳しい。別途ブログにUPしたいと思っている。

食乱れて国家滅びる~日本の伝統食こそ国の生命線だ~

「致知2013.10号」の記事のタイトルだ。NHK平日の17時~18時「ゆうどきネットワーク」に時々出演されている発酵食の権威、東京農業大学名誉教授の小泉武夫氏の意見記事だ。

小泉氏は「日本の食の現状はイエローカード二枚目寸前」というぎりぎりの状況にも拘わらず国民も政治家もその危機難が薄いと警告する。その根拠の第一は「食料自給率」。1965年当時73%あったのが、現在39%で、先進国の中では最低レベルだ。自給率が低いことの怖さは、その安全性と、思い通りに輸入できなくなる怖れだと言う。「安全性」に関しては狂牛病や鳥インフルもあるが、マスコミ報道にもあるように生鮮物などは長時間輸送のために抗生物質や保存料などが大量に投与されていること。「輸入できなくなる怖れ」とは、私のブログ(http://jasipa.jp/blog-entry/9033)でも指摘した地球温暖化による世界的な異常気象で、各国の自給率が軒並み低下しつつあるため、各国とも輸出する余裕が今後も減ってくることが予想されること。カナダなども穀物自給率が激減していると言う。

小泉氏は、日本の農業の再生に関して、日本の農業の活性化と、食文化の見直しを提言する。日本の平均就農年齢は68歳、耕作放棄地が39万㌶(埼玉県全域相当)。若い人たちを年間50人づつ、政府の補助で全国の市町村に派遣することを提言している。全国の大学で客員教授を務める小泉氏は、ある条件(学費・生活費補助)を提示すれば7割の学生は農村へ行きたいと手を挙げるそうだ(小泉試算では予算470億円程度)。

食文化については、伝統的な和食を希薄化して欧米食への転換をした戦後の食文化を見直すことを提言している。油と肉の多い欧米食は、生活習慣病の急増をもたらし、その結果国の財政まで圧迫することになっている。実は、ブログ(http://jasipa.jp/blog-entry/8024)で1977年アメリカで心臓病が急増し、国の財政を圧迫していることから、上院に「国民栄養問題アメリカ上院特別委員会」を設置し、全世界からよりすぐりの医学・栄養学者を結集して「食事(栄養)と健康・慢性疾患の関係」についての世界的規模の調査・研究が7年間の歳月と数千万ドルの国費を投入して行なわれ、5000ページに及ぶ膨大な報告(「マクガバンレポート」と呼ばれている)がなされたことを書いた。その報告では「世界で最も理想的な食事は、元禄時代(1700年前後)以前の日本人の食事だ」と結論付けている。その食事とは、それは雑穀を主食とし、海藻の入った味噌汁、旬の野菜と近海で捕れる魚を副食とする食事だ。そして、その報告書を読んだアメリカ人が目覚めたのが和食で、いまではアメリカに1万店以上の和食店が出来るに至っている。 逆にその頃から日本では、アメリカで「食べるな」と警告されたハンバーガーなどのファストフードを盛んに食べるようになったとの記事だった

小泉氏は都道府県熱平均寿命ランキングの沖縄(米国統治下でのアメリカナイズされた食文化)と長野県(県挙げての食文化改善)の変化を見て、和食文化の効用を説く。伝統的な和食は植物が主だが、植物繊維は腸の活動を活発にしがん細胞など病気の基となる細胞を駆除する。また和食に含まれているミネラルはアドレナリンの分泌抑制効果があり、小中学生の暴力事件抑制効果もあると指摘する。農業を立て直し、安心安全な国産の食材を使って伝統な和食を食することで、日本人としての心と体を育んでいくことが国家の急務と主張する。ジャレド・ダイアモンドの言う(http://jasipa.jp/blog-entry/9046)、「持たざる国」日本として考えなければならない重要な課題ではないだろうか?