1万3000年にわたる人類史のダイナミズムに隠された壮大な謎―アメリカ大陸の先住民はなぜ旧大陸の住民に征服されたのか?家畜された動物とされなかった動物、栽培化された植物とそうでない植物はなぜ違ったか?などに至るまでー広範な最新知見を縦横に駆使して解き明かした「銃・病原菌・鉄」の著者ジャレド・ダイアモンドが「知の逆転」(NHK出版新書)で「文明の崩壊」と言うテーマでインタビューを受けている(インタビュアー吉成真由美氏)。
「銃・病原菌・鉄」はピューリッツアー賞を受賞し、ドキュメンタリーにもなった世界的なベストセラーだ。西欧の覇権が、民族の能力の違いによるものではなく、単なる地理的な有利性の結果に過ぎない事を喝破してみせた。12か国語に通じ、しばしばパプア・ニューギニアで調査研究を行い、現在カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授。そのジャレド・ダイアモンド氏が「知の逆転」で、「文明の崩壊」は5つの要素が関係すると言われている。一つ目は、環境に対する取り返しのつかない人為的な影響、二つ目は、気候の変化、三つ目は敵対する近隣諸国との対立、四つ目は、友好国からの疎遠、五つ目は、環境問題に対する誤った対処。このすべてが揃うことではなく、一つの要素だけでも十分にある社会を崩壊させることが出来ると言う。
インタビューに答えて、「あと20~30年もすれば、さらに30億人もの人間が大量消費するようになって、資源の枯渇に拍車がかかるのは明らか。そうなると、選択を誤れば限られた資源をめぐる熾烈な戦いに陥ってしまうし、懸命な判断をすれば、全ての人々がある程度の水準の生活を送ることが可能になる。」「アメリカは崩壊寸前のローマ帝国のようであり、先進諸国はグリーンランドのノース人やマヤ族、イースター島の社会が崩壊したのと同様に、突然の崩壊に至ってもおかしくないような行動を取っている」と警告を発する。
それではどうすればいいのか?「現在のように消費量に格差がある限り、世界は不安定なままです。安定した世界が生れるためには。生活水準がほぼ均一に向かう必要がある。例えば、日本がモザンビークより100倍豊かな国であると言うことが無くなり、全体の消費量が下がる必要がある。」「格差がこれからも広がるようなら、持たざる国はますます不満を相手に伝える手段を獲得するようになる。持たざる国が核兵器を持つのは時間の問題。既に高層ビルに航空機を衝突させるところまで来ている。だから解決策は世界中の生活水準の均衡化と言うことにならざるを得ません。」「アメリカ人の消費の半分は浪費だ。自動車の燃費を見ても明らか。先進国の中でも日本は原材料輸入に最も頼っている国だ。木材も、魚も世界屈指の輸入国だ。だから、世界の森林保護、世界の漁場保護に、最も積極的に投資し、かつリーダーシップを発揮すべきなのです。日本を崩壊させるためには、世界の森林を多量伐採し、漁場を多量捕獲によって荒せばいい。」と。
「日本は自分で自分の首を絞めている」との警告だ。前稿「地球温暖化回避のための温室効果ガス削減」問題(http://jasipa.jp/blog-entry/9033)もそうだが、近未来だけではなく、もっと先を見た地球規模の課題にもっと真剣に取り組むべきと考えるが・・・。「持たざる国」として、国民一人一人が考えて行動に移さなければならないことも数多くありそうだ。孫の時代を「平穏で確かな時代」にするためにも。
(参考)世界人口予測(国連2013.6発表):2062年には100億を超える(現在から40%増)。とりわけ人口増加率が高いのはアフリカ諸国。数倍から十数倍と予測されている国が多い。2100年にはナイジェリアが世界第3位となる。