食乱れて国家滅びる~日本の伝統食こそ国の生命線だ~


「致知2013.10号」の記事のタイトルだ。NHK平日の17時~18時「ゆうどきネットワーク」に時々出演されている発酵食の権威、東京農業大学名誉教授の小泉武夫氏の意見記事だ。

小泉氏は「日本の食の現状はイエローカード二枚目寸前」というぎりぎりの状況にも拘わらず国民も政治家もその危機難が薄いと警告する。その根拠の第一は「食料自給率」。1965年当時73%あったのが、現在39%で、先進国の中では最低レベルだ。自給率が低いことの怖さは、その安全性と、思い通りに輸入できなくなる怖れだと言う。「安全性」に関しては狂牛病や鳥インフルもあるが、マスコミ報道にもあるように生鮮物などは長時間輸送のために抗生物質や保存料などが大量に投与されていること。「輸入できなくなる怖れ」とは、私のブログ(http://jasipa.jp/blog-entry/9033)でも指摘した地球温暖化による世界的な異常気象で、各国の自給率が軒並み低下しつつあるため、各国とも輸出する余裕が今後も減ってくることが予想されること。カナダなども穀物自給率が激減していると言う。

小泉氏は、日本の農業の再生に関して、日本の農業の活性化と、食文化の見直しを提言する。日本の平均就農年齢は68歳、耕作放棄地が39万㌶(埼玉県全域相当)。若い人たちを年間50人づつ、政府の補助で全国の市町村に派遣することを提言している。全国の大学で客員教授を務める小泉氏は、ある条件(学費・生活費補助)を提示すれば7割の学生は農村へ行きたいと手を挙げるそうだ(小泉試算では予算470億円程度)。

食文化については、伝統的な和食を希薄化して欧米食への転換をした戦後の食文化を見直すことを提言している。油と肉の多い欧米食は、生活習慣病の急増をもたらし、その結果国の財政まで圧迫することになっている。実は、ブログ(http://jasipa.jp/blog-entry/8024)で1977年アメリカで心臓病が急増し、国の財政を圧迫していることから、上院に「国民栄養問題アメリカ上院特別委員会」を設置し、全世界からよりすぐりの医学・栄養学者を結集して「食事(栄養)と健康・慢性疾患の関係」についての世界的規模の調査・研究が7年間の歳月と数千万ドルの国費を投入して行なわれ、5000ページに及ぶ膨大な報告(「マクガバンレポート」と呼ばれている)がなされたことを書いた。その報告では「世界で最も理想的な食事は、元禄時代(1700年前後)以前の日本人の食事だ」と結論付けている。その食事とは、それは雑穀を主食とし、海藻の入った味噌汁、旬の野菜と近海で捕れる魚を副食とする食事だ。そして、その報告書を読んだアメリカ人が目覚めたのが和食で、いまではアメリカに1万店以上の和食店が出来るに至っている。 逆にその頃から日本では、アメリカで「食べるな」と警告されたハンバーガーなどのファストフードを盛んに食べるようになったとの記事だった

小泉氏は都道府県熱平均寿命ランキングの沖縄(米国統治下でのアメリカナイズされた食文化)と長野県(県挙げての食文化改善)の変化を見て、和食文化の効用を説く。伝統的な和食は植物が主だが、植物繊維は腸の活動を活発にしがん細胞など病気の基となる細胞を駆除する。また和食に含まれているミネラルはアドレナリンの分泌抑制効果があり、小中学生の暴力事件抑制効果もあると指摘する。農業を立て直し、安心安全な国産の食材を使って伝統な和食を食することで、日本人としての心と体を育んでいくことが国家の急務と主張する。ジャレド・ダイアモンドの言う(http://jasipa.jp/blog-entry/9046)、「持たざる国」日本として考えなければならない重要な課題ではないだろうか?

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