「営業ノウハウ2013」カテゴリーアーカイブ

「声かけ」究めて固定客がっちり(日経)

11月19日の日経朝刊の記事のタイトルだ。リード文には「何度も繰り返し利用してくれる固定客をつかむことは安定した売り上げが期待できるのはもちろん、仕事のやりがいにもつながる。」とある。私も、前職で固定客(前職では“一生客”と呼んでいた)化の重要性を実感し、JASIPAの「経営サロン」や、講演の際には「お客さま第一」の企業文化・風土創りを訴えている。どんな業種においても、お客様の固定客(リピート客とも言う)化は、経営の安定化のための必須アイテムと思う。

今回の記事では、最前線で実績を挙げている事例として、「西武池袋店」、「帝国ホテル」、「ヤナセ練馬支店」を紹介している。入社7年目の婦人服売り場担当の坂本さんは、西武全店を対象に優秀な販売員を表彰する制度の常連と言う。その坂本さんの固定客獲得のポイントは、来店回数に応じて接客方法を変更し、試着に持ち込み、ファッションセンスを認めてもらうことに徹している。初めての客の時はその人の服装や持ち物を1分ほど観察してから声をかける。3度目以降のお客さまには、過去の購買履歴を見て、似合う服を薦める。

帝国ホテルのロビーマネージャの金井さんは、お客様が心を許すかどうかが固定客化のポイントと言う。そのために名前で呼ぶことを心掛けている。顔と名前が一致する客の数は1000人。そのための準備に力を注ぐ。ロビーに立つ前に顧客リストに目を通すのは当たり前。誕生日や住所なども頭に入れ、会話のネタを用意する。リストに似顔絵や特徴も記す。ホテルマンは、客から名前で呼ばれることが最高の誉れと言う。「目標は1万人、帝国ホテルに行けば金井君がいると思われる存在に成りたい」と。

ヤナセ練馬店でベンツを売る山下セールスマネージャも手書きのメモを生かしている。約500人の得意客を持っている。顧客との雑談から得た細かい情報をメモして売り込みの好機を捜す。17年前の入社後初めて契約して頂いた顧客と今も付き合いがあると言う。

固定客を掴み、販売成績を挙げている人は、日頃から手間暇を惜しまずお客様の心を揺さぶる方法を考えている。「売ること」を前面に出さず(売るのは自分のため)、「お客様が喜んでくれる」ことに第一義をおく。IT業界の営業にも参考にしたい

営業の秘訣は「お客さま第一」!

今月の日経の「私の履歴書」は積水ハウス会長兼CEOの和田勇氏だ。その9回目に営業マンとして販売の最前線に立った時代の話が書かれている。

まずある人への感謝から始まる。「住宅を売るという仕事は魂を込めてお客さまと接することが肝心だ。お客様の喜び、満足を第一に考えていると必ず報われる」、当時名古屋の協力工事店八神社長からの熱く、厳しい叱咤激励の言葉だ。新人時代失敗、苦労の連続だった和田氏はこの言葉に救われ、その言葉を信じ営業活動に邁進。入社3年目(1967年)全国1位の販売成績を挙げた。和田氏は言う。「魂を込めてお客さまと接していると、お客さまがお客さまを連れて来て下さる。いわゆる紹介営業だ。」と。仕事が楽しくなり、正月3が日以外ほとんど休まず働いたと言う。住宅営業は家を売って終わりと言う仕事ではなく、新築されたお客様の住まいを訪ねることも忘れなかった。家の住み心地や、不具合、トラブルに対応することも大切な役割で、これが紹介営業や、リフォームの受注につながった。

もう1件紹介する。「致知2013.12号」に元ソニー生命の伝説の営業マンとしてその名を轟かせ、世界のトップ数㌫のメンバーで構成されるMDRT日本会で大会委員長・国際委員長を歴任してきた大坪勇二氏の記事がある(その記事のリード文での紹介文)。入社は新日鉄だったとの事でも関心を持った。新日鉄に入社し経理に配属になったが、異動希望も聞いてもらえず、ある日フルコミッションセールス(完全歩合制営業)に関するソニー生命の記事に出会い入社した(32歳で)異色の人物だ。入社2~3年は努力はするが成果は上がらず、学生アルバイトの稼ぎより低い、1日1650円のどん底の生活を味わった。追い詰められた大坪氏は、大好きなキューバの英雄ゲバラに倣って、別人格を自分の中に作る為、「九つの作戦」を立てたそうだ。その一つの作戦は「写真撮ります作戦」。そんな九つの作戦を同時並行で実行することにした。そうすると半年後に手取り月収が1000万円を超えるようになったと言う。ある会社の創業記念パーティに潜り込み、作戦を実行。後日写真を届けに行くと社長が応じてくれた。社長が創業の話を楽しそうに話してくれたが、保険の話を切り出すタイミングに躊躇し、聞き役に徹していた。が帰り際に思い切って「保険の話を」と切り出したところ少しの時間聞いてくれ、これが大坪氏の大きな転機になったそうだ(MAX2億円の契約をもらう)。優良企業の社長さんも何人か紹介してくれたそうだ。その大坪氏は今、コンサル会社を経営している(キーストーンフィナンシャル)が、講演やセミナーで言っていることを挙げている。

●扱っている商品の話をしない。商品の優位性なんかで絶対に勝負しないこと。
●商品を売るのではなく、信用を第一優先にすること。
●その手段として、お客様に与える(give)こと。

そして、「やる気」を出すために如何にセルフイメージを高めるかについても言及している。自分の人生を取り換えてもいいと思える位の『ロールモデル』を見つけること(どん底から這い上がる時のゲバラ)、そして二週間でいい、六つの目標を決め(些細なことでもいい)言い訳なしにやる。そして達成したら自分を承認する。その後自信を持って自ら目標を高めていくことで、セルフイメージが高まってくる。

積水ハウスの和田氏は八神氏の言葉に出会い、大坪氏はゲバラに心髄する。そして、やはり「お客様を第一義に考える」ことでも両者共通している。誰かが言っていたが、「商品を売ると言う行為は自分の為が第一。そうではなく、“お客様のため”をお客様に感じてもらうための行動とは何か、大坪氏の“九つの作戦”に倣って考えて見ては如何?

「個人通信」で自分を売り込む!

先週、日経の「ビジネス書ランキング」にランキングされていた「顧客と最高の信頼関係を作る営業ツール(蒲池崇著、フォレスト出版)」のタイトルに目を引かれ買って読んだ。著者は、船井総合研究所に入社後、社員教育会社を経て27歳で起業し、日本唯一の個人通信(個人版ニュースレター)の作成・コンサルティング会社の代表を務める。「お客さまはどこから買うかではなく、誰から買うかだ」を信条に、船井総合研究所時代から、教育会社を通じて、日々の出来事から自分の人となりを紙面にして、お客さまから選ばれる存在になる「個人通信メソッド」を確立し、トップセールスの地位を得たそうだ。そのメソッドのノウハウを開陳したのが本書だ。ちょっと期待した内容とは違ったが、読んでみて、お客さまとの関係創り、そして「自分を売り込む(Sell Yourself)」ためのツールとしては確かに面白いかもしれないと思った。

蒲池氏は、人間関係に関する心理学の法則「ザイアンスの法則」を示し、「個人通信」の意義を説明する。「ザイアンスの法則」とは、

  • 第1の法則:人は知らない相手には攻撃的、冷淡な対応をする。
  • 第2の法則:人は相手に会えば会うほど好意を持つようになる。
  • 第3の法則:人は相手の人間的側面を知った時に、より強く相手に好意を持つようになる。

特に、第3の法則の重要性を説く。商品ではなく、自分の“ひとがら”を知ってもらう。

個人通信は、タイトル(個人名で‘○○通信’)、メインコラム、サブコラム(編集後記)、発行者プロフィールの4部構成。メインコラムに何を書くか?書いてはならないのが、売り込み、うそ、ライバル他社、宗教・政治・下ネタなどを挙げる。蒲池氏の作成代行は1500を超えるというが、「メインコラム」のネタ探しの相談が多いと言う。確かに、読者の心に届き、人柄をアピールでき信頼してもらえるネタを意識せねばならないが、意識しすぎると、なかなか思いつかない。しかし、プライベートなこと、仕事上の事で、インタビューしていけば必ず見つかる。

私見だが、「お客様の視点でものを考える」「日常的に問題認識を持ってものを見る」「感動経験を増やす(春夏連覇の沖縄興南高校の「1分間スピーチ」http://jasipa.jp/blog-entry/6187」)など、ブログも同じ(ブログは読者が特定できない)だが、「個人通信」も1回/月発行とは言え、考える習慣付けや、自らの学習に必ず役に立つものと思う。全てのお客さま(潜在客も含めて)と対面で対話することは不可能と思うが、「個人通信」で接点を持ちながら、久しぶりにお会いする時の話題提供にもなり、たしかにやりよう(内容)次第では強力な営業ツールになるかもしれない。