「日本の課題」カテゴリーアーカイブ

”メルカリ”上場で「ユニコーン企業」に注目増す!

“ユニコーン企業”が最近メディアを賑わしている。20日の日経朝刊ではメルカリ上場の情報とともに米国、中国に比して日本の“ユニコーン企業”の少なさが指摘されている。記事は下記で始まっている。
「フリーマーケットアプリのメルカリが19日、東証マザーズ市場に上場した。時価総額は7172億円と今年最大のIPO(新規株式公開)となり、「ユニコーン」と呼ぶ世界標準にかなう成長企業の証明を果たした。だが、日本に次のユニコーン候補は少ない。メルカリ上場は日本のスタートアップ企業の問題点も浮き彫りにする。」

“ユニコーン企業”とは、「創設10年以内、評価額10億米ドル以上、未上場、テクノロジー企業」といった4つの条件を兼ね備えた企業を指す。当記事では、ユニコーン企業は米中に集中しており、集中度は90%近く、日本は大きく立ち遅れていると言う。日本では人工知能開発のプリファード・ネットワークや、健康増進器具”シックスパッド”を手掛けるMTGなどごくわずかしかなく、日本経済の成長力を懸念する。

「中国新興企業の正体」(角川新書、20184.10刊)を出版された多摩大学大学院フェローの沈才彬氏が、「日本が中国に“ユニコーン企業”の数で大敗北を喫した理由」(2018.5.31、http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55805)のタイトルで警告を発している。IT企業に代表されるニューエコノミー分野では、すでに中国は先進国入りしたと言える。世界企業価値(時価総額)ランキング(2017.12時点)のベストテン企業に、アメリカのGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)とマイクロソフトの次の6位にテンセント、8位にアリババがランクインしている。ちなみにトヨタは41位だ。沈氏はグーグルを追い上げる百度(バイドゥ)とサムスンとアップルを猛追する通信機器のファーウェイを加えてBATHと呼ぶ。ほかにもシェア自転車のモバイク、出前サイトのウーラマ、民泊サイトのトウージア、ドローンメーカーのDJIなど、各分野で世界市場を席巻し始めている。同分野の日本企業と比して取扱量はけた違いに大きい。

19日の日経朝刊には「京東、王者アリババを猛追」との記事で京東集団にグーグルが600億円出資とある。20日の日経朝刊には「車を変える“次の深圳」と題して、新経済特区の建設を表明した北京近郊の雄安の都市計画で自動運転技術の実現化を目指すという。構想の中には、従来の車や二輪車を地下道に、自動運転車を地上の道路に集約するという奇想天外なものもあるという。中国ならやりかねない。中国では次から次へと”ユニコーン企業“が輩出されている。

日本はなぜ”ユニコーン企業“がでてこないのか?日経記事が言うのは、中国ではベンチャー企業には最初から規制を設けず、問題が生じるまで事業を自由にやらせているという。沈氏は、それを「先賞試、後管制」と言う政府の方針で、「まず試しにやってみよう。問題があれば後で政府が規制に乗り出す」との意味らしい。日本は「先管制、後賞試」のため、法整備のされていないゾーンへの参入が困難で、典型的な例が民泊や配車アプリの普及ではないかと。他にもベンチャー投資に回る金が少ないこと、米国や中国への留学生が激減していることに表れている若い人たちの創業意欲のなさ、内向き姿勢、そして、失敗を許容する文化の欠如なども指摘している。

21日の日経朝刊1面トップにも「スタートアップ企業(短期間で急成長を目指す未上場の若い企業)」に関して、日本では資金調達の手法として大企業傘下に入ることを選択することが増えてきたとの記事が掲載されている。世界経済で急速にデジタル化が進む中で、ニューエコノミー分野で日本が盛り返すには、IPOが中心だった日本でも新しい技術に敏感な若い企業が資金調達する手法の多様化は欠かせないと指摘する。

“技術の日本”の看板が急速に減速し、米国、中国に完全に追い越されている現実(大学世界ランキングでも100位以内に中国は7大学に対し、日本は2大学)を見て、目先のGDPにとらわれずもっと将来を見つめた対策を急がなければ、経済成長の面でも、技術面でも日本の優位性が急速に失われていくことになる。2016年6月に閣議決定された「日本再興戦略 2016」では今後10年間で世界ランキング100位以内に10校を目標とするとあるが、中国の大学のランクイン速度に比して日本は弱い。問題の根は大きい。

人生の成功を約束する”性格スキル”は大人になっても変えられる!?

古い記事(2018.1.15日経朝刊)で恐縮ですが、「人生100年伸ばせ”性格力“」とのタイトルで慶応大学教授鶴光太郎氏の記事が掲載されていた。「人生100年時代」ますます高齢化が進むと同時に、AIが仕事を奪うことが危惧されている。そのような中で、最近の研究では、学力や偏差値のような「頭の良さ」(認知スキル)でなく、テストでは測れない「非認知スキル」が人生の成功に影響することが分かってきたという。AIに代替されない普遍的な能力やスキルとは?その鍵となるのが「性格スキル」。「性格スキル」とは、「開放性(好奇心や審美眼)」、「真面目さ(目標と規律をもって粘り強くやりぬく資質)」、「外向性(社交性や積極性)」、「協調性(思いやりや優しさ)」、「精神的安定性(不安や衝動が少ない資質)」で、心理学ではこの5つが組み合わさって性格が形成されていると言われているそうだ。この5つの性格スキルと業績評価などのパフォーマンスとの関係が日本をはじめ多くの国で研究されている。
研究結果では、業績評価との相関関係が大きいのは「真面目さ」で、「外向性」、「精神的安定性」が続く。またこの関係は学歴とはあまり関係がなく、どんな学歴でも性格スキルが高まれば賃金も増えるとの結果も出ている。面白いのは「協調性」。日本と米国では全く逆の関係が出ているという。米国では協調性と年間所得の関係が負の相関だが、逆に日本では正の相関らしい。個人主義と集団主義の違いを反映している?
職業人生に大きな影響を与える「性格スキル」はいつ伸ばすべきか?幼児期の教育が大事なことは知られているが、大人になってからも、そして年をとってからも伸ばしていけるという。添付の図を見てほしい。イリノイ大学のロバーツ教授の研究成果として5つの性格スキルが年を取るにつれどう変化するかを表している。これを見ると5つの性格スキルのなかでも人生の成功で特に重要な役割を占める「真面目さ」「精神的安定性」「協調性」については10代の伸びよりもむしろ、20代、30代の伸びが大きいことが注目される。
大人になっても十分性格スキルを鍛え伸ばすことが可能なエビデンスだと鶴氏は言う。人生100年時代、性格スキルを伸ばせばどんな道に進もうと人生が開けてくる。
「人づくり革命」で“リカレント教育”(生涯にわたって教育と就労を交互に行うことを進める教育システム)が需要な政策課題となっている。企業教育も含めて大学教育やリカレント教育にもこの視点を入れていくことが求められていると記事は締める。

私は、私の経験に基づいて「自分の性格は変えられる」と言っている。人前で話すことなどとてもできる子ではないと思われていた小学校時代。中学時代に先生に誘われて断り切れずしぶしぶ入部した弁論部のお陰で人前でしゃべるのが全く苦痛ではなくなった。弁論大会では親戚が半信半疑で聞きに来て驚いたとの話もある。今の自分があるのも、この時の性格スキルの変化のお陰と、恩師には感謝、感謝だ。性格を変えるには、まず自分を知ること。そして自分の弱点を知り、それを克服するための場を探し、そこに飛び込んでいくこと。この勇気で性格スキルを変え、人生100年時代を幸せに送ってほしい。

東京23区内私立大学の定員が大幅に減らされるってホント?!

昨年秋に公示された東京23区の大学定員を抑制する文部科学省告示が、現国会で法制化されるようだ。

1月19日放映のNHKのローカルニュース「金曜イチから」でその話題を報じていた。番組紹介文は
受験シーズンが始まる中、受験生の間で混乱が起きている。去年、早稲田や法政など、東京都心にある私立大の合格者が1割程度減り、今後さらに減る可能性があるのだ。背景には、地方から都心への大学移転が進む中でこれ以上都心に学生を集中させたくない国の施策が。戸惑いは、大学や地方自治体、住民にも広がる。大学の流出が続く八王子、人気を急上昇させる群馬前橋にある大学。少子化が続く中、私立大学のあり方を考える。
早稲田大学では2000人以上減る。八王子にある中央大学は就活の学生の利便性を考え、都心への移転計画を推進していたが、これが宙に浮く可能性があるという。政府は“地方創生”のためと言う。

2月3日の各メディアは、小池都知事の反対声明を報じた。「定員抑制と地方創生の推進は別の問題。日本の大学の国際的地位の低下につながりかねない。大学をどうあるべきかという本質的議論がなく、(23区内の大学で)教育を受ける権利の抑制につながりかねない。」と。

1月23日の日経朝刊23面「大機小機」のコラムでも「文科省の大学統制の弊害」との問題指摘をしている。「地方大学の定員割れを防ぐためには、東京の大学の定員数を抑制すればよいという、いわばトランプ大統領流の他者への責任転嫁の論理」と批判している。東京の大学さえも競争力が世界ランニングで低下している中で、いかに日本の大学の教育の質を上げるかが日本の喫緊の課題だが、少子化時代に大学間の競争を抑制するような規制策に警鐘を鳴らす。今回の東京23区の大学定員抑制策は、本来のアベノミクスの成長戦略とは逆方向で、地方創生には結びつかないと結論付けている。

2月6日の日経朝刊1面コラム「春秋」では、「東京1極集中に歯止めをかけるために、23区内の大学の定員増を抑えるー。こんな大胆、いや乱暴な施策が法案化されようとしているのも、走り出したら止まらぬ“地方創生”なるスローガンゆえ」と批判している。役所は、方針を立てたら、どんな弊害を伴っても、本末転倒に陥っても、実現したという”形“を求める体質を指摘し、現場への介入が好きな文科省の止まらない官による統制に警鐘を発している。

私も学生時代から東京を敬遠していたが、20数年前に東京に転勤になって、自ら学ぶ環境や、人脈の作りやすさやその意義など、東京での人の成長を促進する環境のすごさをあらためて知った。憲法や教育基本法にある「教育の機会均等」の考え方に則っても、慶応や早稲田などを目座す学生の夢を奪うことは許されない。立命館アジア太平洋大学や国際教養大学など、地方でも応募者が殺到する大学もある。しかも、入学者が増えても、地方大学卒業者の東京への流出も止められそうもない。日経「大機小機」が指摘するように、地方も含めて各大学が切磋琢磨して魅力つくりに励んでこそ日本の教育水準の向上が期待でき、またそうならなければ、政府が推進しようとしている”人づくり革命“も実現は困難ともいえる。