毎年今頃開かれているスイスでのダボス会議に合わせて発表される「世界人材競争力指数」について日経1月22日朝刊記事が報じている。人材サービス世界最大手のアデコ(スイス)などが、有能な人材を持つ力を国ごとに評価したものだ。日本は調査対象国125か国のうち22位で2018年より2つ順位を下げた。1位はスイス、2位はシンガポール、3位は米国で、日本は「競争の激しさ」の評価が高く、人を生み出す力では6位、「女性がリーダーシップを発揮できる機会」などが低く,人材を引き寄せる力は45位にとどまったそうだ。ちなみに韓国は30位、中国は45位。
評価会社の方々の意見がhttps://www.zakzak.co.jp/eco/news/190122/prl1901220094-n1.htmlに掲載されている。
「トップにランクインしている10カ国のうち、たった二カ国、シンガポールとアメリカだけが、ヨーロッパ外の国々だ。これは、ヨーロッパが有能な人材の主な供給源であること、優良な大学やしっかりした教育セクターを持つ国々が、有能な人材を引き寄せることを示している。優れたリーダー達に自分の国に留まってもらいたければ、新しい事象に柔軟に対応し、変化し続けていかなければならない。」と、ある評価会社の方がコメントしている
また別の評価会社の人は「仕事の世界が大きく変わりつつある現在、国家や都市に有能な人材を引きつける魅力が無ければ、人々やビジネスはその場所から離れてゆき、別の場所でチャンスを探そうとするようになる。起業しやすい場所であることが、常に流動している現代の世界で成功するためにどれだけ重要であるかを再度強調したものとなった。能力のある人々が生き生きと働くことができ将来の繁栄をもたらしてくれるようになるために、起業家の育成が必要不可欠だ。」と述べている。
都市ごとの人材力の調査報告も合わせてあった。対象114都市のうち1位はワシントンDCでコペンハーゲン、オスロと続く。日本は東京が19位、大阪が41位に対して、なんとソウルが10位、台北15位だ。
昨年発表の「科学技術白書」で、日本の技術力が2004年をピークに急激に衰退している現状を初めて認めた報告がなされた。大学職員を非正規化し、予算を削減し、研究内容にも締め付けを入れている文科行政に関して、ノーベル賞受賞者からも批判されているが、改善の方向性は見えてこない。経団連の春季交渉指針で、これまで官製春闘で賃上げ目標を政府が示してきたが、今年の方針として、「付加価値の高いビジネスモデルを作るのが日本の課題で、人材のレベルを上げるための投資が必要」とし、一律の賃上げはなじまず、能力開発などの支援の充実など人材投資の総合的戦略を必要とし、各企業の責任で考えるとした。日経の社説(1月23日)でも、「人材投資の戦略を経営者は明確に語れ」とのタイトルで、賃金は経営者から働き手への重要なメッセージで、政府の干渉を排除するのは当然とし、デジタル化やグルーバル化などの構造変化の中で、生産性向上のための従業員教育のテコ入れも含め、総合的な処遇制度改革に取り組むべきと指摘している。
世界の高度人材が日本に興味を示す国となるために、経営者はどんな人材を育てるべきか明確に社員に提示し、教育投資も含めた処遇制度改革として示すべき時が来ているのではなかろうか。政府に対しても高等教育の在り方の再考をお願いしたい。