男女平等が活力を生む(日経)


日経の連載「成長の未来図」の第8稿(1月9日)は、「アイスランド、09年の大転換“男女平等が生む活力”」のタイトルだ。日本は21年のジェンダーギャップ指数が156か国中120位と先進国では最下位だ。賃金格差は22.5%におよび、OECD平均12.5%より大きい。成長のためには女性の力を活かすことを考えねばならないとの視点で課題を考えている。

アイスランドの事例が紹介されている。2008年のリーマン・ショックの際、危険な投資にのめり込んだツケが回り、財政が破綻する危機に陥った。その原因が、男性中心の経営に起因し、コンプライアンスの意識を欠如させたと分析し、女性を積極的に登用する社会への転換を図った。19年に初の女性首相が誕生し、企業などに女性役員比率を4割以上にするよう求めた。その結果、11年以降のGDPの成長率は3.5%に高まった。09年ジェンダーギャップ指数でトップに躍り出た。世界で初めて男女の同一賃金を証明するよう義務付け、違反があれば罰金を科す。男女の賃金格差をリアルタイムに把握できるアプリも開発し(イケアやボーダーフォンなど世界かの有力企業から注文が相次ぐ)、意識の改革だけではなくデータで賃金差をなくすことに全力を挙げた。各種施策で優秀な女性が集まったとのことだ。スウェーデンのウブサラ大の奥山陽子助教授は「北欧のように女性の視点を現場に取り入れなければ、日本は再浮上できない」と訴える。特に創造性の高い研究開発分野での活躍を見込む。日本政策投資銀行の25年間に得た知見では特許資産の経済効果は男女混合チームの方が男性だけの場合より1.54倍に上がった。同行は「女性が加わることで多様性が高まり発想力が豊かになる。男性も刺激を受けてより成果を出そうとする」と指摘している。当記事は「男女平等を成長の原動力にする国が目立つ中、日本は女性を生かす社会を描けていない。賃金格差、子育て、積極的な登用などの課題に本気で取り生まなければ成長へのきっかけはつかめない。」と締める。

全日(8日)の第7稿は「”公益企業”米で増殖、還元優先は株主本位か?」がタイトルだ。米国でも長い間「企業にとって最も重要なのは株主利益」という考え方が強く、日本でもいまだに配当重視への偏りが目立つ。それが2019年8月に米経営者団体BRTが「企業の目的に関する声明」を出し「企業は顧客、従業員、取引先、地域社会、株主を平等に大切にすべきだ」などと主張してから流れが変わりつつあると言う。

これまで、「成長の未来図」の連載記事を紹介してきたが、「国や企業は変わる勇気を示せるか、覚悟が問われる」今、企業が稼いだ利益を人への投資をはじめ、将来の成長を促す積極的な投資に回すメカニズムを構築することの必要性を訴える。

当連載記事の冒頭、「資本主義が3度目の危機にぶつかっている。成長の鈍化が格差を広げ、人々の不満の高まりが民主主義の土台まで揺さぶり始めた。戦前の大恐慌期、戦後の冷戦期と度重なる危機を乗り越えてきた資本主義は、また輝きを取り戻せるのか。成長の未来図を描き直す時期に来ている。」とあったが、日本の将来に向けて重要な問題提起として、考えさせられた。岸田総理が主張する“分配と成長の新しい資本主義”の検討が始まり。今年の夏に具体的な実行計画が出せるとの事。参院選の後にした理由はともかく、次代を担う若者が将来に希望が持てる具体的な施策をぜひとも打ち出してほしい。