「ありがとう」が生んだ奇跡

「致知2016.8」に「遺伝子のスイッチオン」で有名な筑波大学名誉教授村上和雄氏との対談記事で、現代治療ではもはや手の尽くしようのないがんを患いながら、見事に生還を果たした工藤房美さんが登場している。これまでも、JR福知山線事故に遭遇し医者も諦めた(脳がぐしゃぐしゃ)女性が、北京パラリンピックの水泳に出場できるまでに回復したこと(http://okinaka.jasipa.jp/archives/26)や、スキーの転倒事故で首から下が全く動かなくなり、医者から「たぶん一生寝たきりか、よくて車いすの生活になるでしょう」と宣告された人が、遺伝子のスィッチをオンにして、蘇り、かつその経験を全国の小学校などを「命の授業」と称して講演して回っている腰塚勇人さんの話し((http://okinaka.jasipa.jp/archives/373)など、村上和雄氏のスイッチオンの考え方に共鳴し生き返った人を紹介してきた。
工藤さんも48歳の時、どうしようもない状態での子宮がん宣告を受け、激しい痛みとたたっているとき、村上和雄氏の「生命の暗号」という本に出合った。奇跡的な命の誕生(一つの生命が生まれる確率は1億円の宝くじに百万回連続して当たる確率に等しい)、そして60兆個の細胞の中の遺伝子の98%がオフになっていることなどを知り、自分にだって希望はあると気付く。そして、遺伝子一つ一つに夜を徹してお礼を言うことから始めた。目や耳、口から始まり、抗がん剤治療で抜けた髪の毛にまでも私の一部であったことで一本づつにありがとうを言い続けた。そういう日々を送っていたら、子宮癌から肺や肝臓に転移していたガンも医者が驚くほどになくなってしまった。その闘病経験を、村上先生に背中を押されながら「サムシンググレート」のメッセンジャーとして「ともかく”ありがとう“と思い、言い続けることでガンが治った人が目の前にいることは一つの希望になるのでは」と語り歩いている。
村上和雄先生の言葉を拾ってみる。
『人間と言うのはまさに「Something Great(偉大なもの)」で、一人に60兆個の細胞があり、その中に32億個の遺伝子の暗号を持ち、それらが見事に調和してそれぞれが自立的な生命を営んでいるとか。全世界の最高知恵を使ってもロボット程度しか作れない、まさに「Something Great」なのです。そして遺伝子は98%眠っているのだそうです。その眠っている遺伝子を如何にオンにするかで、その人の人生は変わってくると言うことです。「遺伝だから仕方がない」は間違いで、環境次第でどうにでも変化するものが遺伝子だということです(食事療法がひらくがん治療の新たな道http://okinaka.jasipa.jp/archives/3771より)。』
『良い遺伝子を目覚めさせるのは、感謝、感動、利他の心、笑い、何事にも一生懸命になる素直さ、病気も落第も自分に与えられた試練でありがたいと思う心など、人生を前向きに目標を持って励めば遺伝子のスイッチはオンになっていくそうです。本来人には優劣が殆どなく、成功者とそうでないのは、どれだけ遺伝子をオンに出来るかということだそうです。イチローの成功もまさにその典型であり、目標をしっかり持って米国にあえて挑戦した時の気持ちの持ち方と努力が、遺伝子を大きくオンにした成果だろうとも言っています。恋人を持った女性が美しくなる(見える?)のも説明できるらしい(「遺伝だから仕方ない」は間違い!http://okinaka.jasipa.jp/archives/26より)。)
「命の授業」で腰塚さんが話す“五つの誓い”を再掲しておく(http://okinaka.jasipa.jp/archives/373)。

●口は人を励ます言葉や感謝の言葉を言うために使おう
•耳は人の言葉を最後まで聴いてあげるために使おう
•目は人の良いところをみるために使おう
•手足は人を助けるために使おう
•心は人の痛みがわかるために使おう
考え方ひとつで、こうも人の生き方、幸せ感は違ってくる。遺伝子をスイッチオンするための生き方を真剣に考えてみてはどうだろうか。

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失敗・成功する人の12か条(大和ハウス工業会長樋口氏)

以前に当ブログでも紹介した大和ハウス工業会長の樋口武男氏(http://okinaka.jasipa.jp/archives/192)の言葉が、“致知BOOK”メルマガで紹介されていた。『人間学入門』(藤尾秀昭・監修、致知出版社刊)の中の一度は読み返したい一文だ。
「失敗する人の12カ条」
1 現状に甘え逃げる・・・・。
2 愚痴っぽく言い訳ばかり・・・・。
3 目標が漠然としている・・・・。
4 自分が傷つくことは回避・・・・。
5 気まぐれで場当たり的・・・・。
6 失敗を恐れて何もしない・・・・。
7 どんどん先延ばしにする・・・・。
8 途中で投げ出す・・・・。
9 不信感で行動できず・・・・。
10 時間を主体的に創らない・・・・。
11 できない理由が先に出る・・・・。
12 不可能だ無理だと考える・・・・。

「成功する人の12カ条」
1 人間的成長を求め続ける・・・・。
2 自信と誇りを持つ・・・・。
3 常に明確な目標を指向・・・・。
4 他人の幸福に役立ちたい・・・・。
5 良い自己訓練を習慣化・・・・。
6 失敗も成功につなげる・・・・。
7 今ここに100%全力投球・・・・。
8 自己投資を続ける・・・・。
9 何事も信じ行動する・・・・。
10 時間を有効に活用する・・・・。
11 できる方法を考える・・・・。
12 可能性に挑戦しつづける・・・・。
自分自身の行動をチェックするには、箇条書きはわかりやすい。当ブログでは「ブスの25か条(運を逃がす)(http://okinaka.jasipa.jp/archives/6)」が評判だった。稲盛和夫氏の「リーダーの役割10か条」や荻生徂徠の「人を育てる徂徠訓(8か条)」なども話をする際に使わせてもらっている。名経営者や先哲などの名言で自分自身を振り返るのも長い人生大いに意味あると思われる。

”生きる“らしく生きる

多彩な経歴を経て、今、慶応義塾大学准教授で異言語・異文化コミュニケーションを基盤にした英語教育をしておられる長谷部葉子氏。24歳で帰国子女の経験を活かし「寺子屋」を開設。高卒ながら35歳で慶應義塾大学に入学、48歳で同大学専任教官となり、「寺子屋」経験に基づいて「長谷部研究会」を作り、約50名の学生を対象に現場での実践やフィー-ルドワークを重視しながら社会問題を学ぶ場を運営している。学ぶ場でのフィールドの一つである「コンゴ民主共和国での小学校の設立・運営」に関係して、ある時コンゴの大使から言われた言葉が長谷部氏の心の中で響き続けていると言う。
「コンゴに行くのであれば、人々がどんな生き方をしているのかを見てきてください。日本は豊かな国なのに、なんでこんなに自殺者が多いのですか。“死”は誰にでも平等に訪れます。“死”とは訪れたときに受け入れるもので、自ら選ぶものではありません。それがわからないというのはどういうことですか。」
日本という安全な国、豊かな国にいると「生」を与えられて生まれてきたこと、「生きること」の価値の素晴らしさに鈍感になる。命をいただいていることへの感謝が薄らいでいる。長谷部氏は、多くの人が生きることに最大の喜びをもって真剣に生きてほしい、そのためには、普段の生活、つまり食事や睡眠、暮らしに関するすべてにおいて喜怒哀楽をもって人と共感しあうことが「生きる」ことの醍醐味だと言う。そして研究会のテーマを「”生きる“らしく生きる(”生きる”は長谷部氏の造語で名詞として表現)」と掲げている。学生たちは言葉や文化の全く異なる現地の人と生活を共にし、生きることの厳しさと喜びを掴んでいく。
自殺大国と言われて久しい日本だが、特に若者の死因のトップが自殺というのは、先進7か国では日本だけという。テレビやゲームに熱中するのではなく、外に出て世の中を知り、人との接触・対話の中で生きることの喜びを知る場を提供する教育の役割は大きい。「“いま”“ここ”に真剣に向き合い自分の力で人生を切り開いていく、そういう人を一人でも多く育てるためにこれからも教育に力を注ぎたい」と長谷部氏は語る。(「致知2016.9」致知随想より)
ちなみに世界保健機関が毎年発表している「10万人当たりの年齢調整自殺数(2015)」は日本が17位(18.1人)、コンゴ民主共和国が67位(10.1人)となっている。

冲中一郎