マクドナルド快進撃!

これも昨年10月頃のブログ記事です。「低価格競争をやめて、付加価値競争へ」と言うことでは参考になると思いますのでUPします。

 「原田マクドナルド、飛躍の秘訣は低価格にあらず」のニュースを見ました。全般的に小売業界も不調の中で、昨年上半期(1-6月)の売り上げが過去最高、昨年8月も月間売上高史上最高を達成したそうだ。

 牛丼業界のような単純な低価格競争は、業界そのものをダメにし、社員も疲弊する。原田社長が赴任する前はディスカウント政策で7年連続減収減益に陥っていた。原田社長はバリューに拘り、徹底して「Quality」「Service」「Cleanliness」施策を推し進めた。すなわち、品質を高め、サービスを向上させ、店内を清潔にする。そのうえで、これまでの常識を覆して価格UPを行った。お客様から「なぜ価格をあげるのか?」と聞かれて、店員に、自信を持って「他の店の味と比べて下さい」と言わしめた、その自信が、QSC施策を推し進めた結果のマクドナルドの経営基盤となっているのだ。

昨年8月下旬の10日間、ビッグマックの値下げをした(一律200円)。しかし、この期間、逆に客単価は上がったそうだ。その期間、新しい商品を出し、その商品をアピールするために、低単価施策を使った。すなわち新しい商品に自信がなければ、このような施策は効を奏しない。客はまんまと乗せられて、新商品の食体験を楽しんで帰り、ますますマクドナルドファンになる。お客も満足、マクドナルドは大満足。

 同じ発想で立て直したのが成城石井の大久保社長(今は変わられていますが)。お客様に訴えられる商品の質で勝負し値下げはしない。

 わがIT業界にも通じる話と思いませんか?顧客満足度(CS)向上活動の考え方・精神は全く同じです。低価格競争に巻き込まれないために、お客様へのバリューUPを常に考え行動する集団になりましょう。

私自身はマクドナルド店に入った経験がないため、価格が高くても行きたくなる店との実感はないのですが、一度行ってみたい気になっています。

サービスで成果を出した事例

サービスサイエンスの話を前回しました。今ではGDPの70%を超える日本のサービス業は、製造業文化から抜け切れていない。製造業は、製品設計情報に金をかけ、その結果を物に転写し、製品を作る。一旦製品が出来れば、繰り返し同じものが出来る(自動車が鉄板に戻ることはない)。しかし、サービス業は、サービス設計情報(これがpoor!)を人に転写する。しかし、一度転写できても、教育をし続けなければすぐ元に戻ってしまう。従って、サービスレベルを組織的に高めるには、他社との差別化サービスを決め(サービス設計)、継続的に教育をし続けることが必要になる。一旦それが文化になれば、大きな差別化要素になる。すなわち「サービスは人に創りこむから製造業に比して継続が困難」なもの。

諏訪さんのサービスサイエンスの指導を受けた衛星放送会社W社はコールセンターのお客様対応を変革し、契約率を大幅に向上させた。お客様のタイプを5分類し、最初の話し方で即座に判断できる方法(企業秘密)を見つけ出し、対応を変えることによって成果があがった。損保会社T社も自動車保険のオプション契約率を45%から70%に改善したそうだ。

以下は諏訪さんの事例ではないが、やはりサービスの差別化で成功したタクシー会社を紹介する。サービスの評価は、成果とプロセスに分解されるが、接客業においてはプロセス(店員の愛想がいいなど)が非常に重要となる。

以前もちょっと触れた長野の中央タクシーも有名だが、同じような事例が千葉県にもあった。市川を中心に営業している武藤自動車(以下「ムトータクシー」と呼ぶ)である。お父さんの跡を継いだのが30数年前。運転手のマナーもひどいもので、仕事そのものにも全く魅力を感じていなかった。

この状態を改革するために月1回全運転手との対話を始めた。「客から「ありがとう」と言われる運転手になる、それが働きがいとなり、誰だって嬉しいはず」との信念のもと。そして、今では他社のような、流しや付け待ち(停留所で待つ)を全くせず、お客様からの配車依頼のみで営業し、業績を安定的に挙げている。27台しかない小企業のため、車が足りず、お客様を待たせることが多いが、それでもムトータクシーを選んでくれるお客様が多く、長野の中央タクシーと同じくお礼状が沢山舞い込むそうだ。流しもしないため、ガソリン効率もあがる。

中央タクシーもムトータクシーも、有名な話だが、他社がこぞって追随したという話は聞こえてこない。ここまでするのに、運転手の意識改革、行動改革に長期間を要している。時間を掛けて到達させたサービス文化はそう簡単に真似ることが出来ない。大きな差別化要因になるとの事例である。

運転技術も当然大きなお客様満足度のファクターと思うが、それ以上にお客様への接し方(配車依頼を受けてお客様の所に行った時、クラクションでお客様を呼ぶのではなく、車から降りて玄関でチャイムを鳴らす)、マインドがさらに重要で、それがなければお客様の共感、感動を得られないということ。お客様から「ありがとう」の言葉を頂くことが「CS活動」の究極の目的ではなかろうか。

サービス・サイエンス

今日のアクションシステムズ河村社長のブログ「プロ仕様の製品!」読ませて頂きました。河村さんの下記の主張に、まさに共感を覚えます。

「製品を所有することは、その価値を考える、お客様のことを考えることである。 これは凄く良いことだと思う。 日本のITの価値を高めるためには、日本のITは、製造業では無く、サービス業に変わるべきである。 言われたものを作るのではなく、何があれば価値あるかを考え提供していくことが重要であると思う。」

昨日、神戸ディジタルラボとソフトブレーン共催のセミナーが品川プリンスでありました。講演者はワクコンサル(元オムロンフィールドエンジニアリング)の諏訪良武様です。「顧客はサービスを買っている」(ダイアモンド社)を読んで共感を覚え、今年の3月JISAのB地区会の講師をやってもらったのですが、まさに「サービスを科学し、コストより付加価値サービスで勝負する」ための考え方を分かりやすく話されます。サービスでお客様に感動を如何に与えるか、そのためにはお客様の期待(事前期待)を把握することが重要。そのためには、河村社長も言われるようにお客様を知らなければ話にならない。お客様から「ありがとう」と言われるサービスを提供する事が我々の究極の目的と考えたいものです。

コスト競争に陥ると、東南アジアの攻勢に負けること必定。 「サービスを提供する業界」に大きく軸を移すために皆で考えましょう。

冲中一郎