孫、ひ孫時代まで日本であり続けられるか?

スウェーデンの16歳の女子高校生グレタ・トゥンベリさんの地球温暖化に対する行動が話題となっている。先日の、国連「気候行動サミット」での発言は多くの反響を呼んでいる(トランプやプーチンは批判めいた発言をしているが)。1年前にたった1人で「Fridays For Future」と名付けた運動を始め、気候変動への緊急対策を求め、毎週金曜日に学校を休み国会議事堂の前に座り込んだ。その呼びかけが、世界中の若者へと広がり、金曜に学校へ行く代わりにデモに参加する学生が増え続けている。そして9月の国連演説当日、150か国・地域で400万人以上の若者がデモに参加したとのことだ(日本の若者は5000人以下)。グレタさんは、スピーチで “How dare you!”(よくもそんなことを!)という表現を繰り返し用いて、各国の首脳らに温暖化対策の行動に出るよう強く訴えた。

10月2日の日経朝刊19面のコラム「大機小機」で「How Dare You!」のタイトルでグレタさんの活動を紹介している。その中で日本の取り組み姿勢に懸念を表している。国連でも、アメリカと並んで登壇できず、77か国が2050年までに温暖化ガス排出量を実質ゼロにすると約束したが日本はその中に含まれていない。コラム氏は言う。「我が国の政府も経済界も、地球環境維持に必要な経済構造転換への痛みに立ち向かう勇気がないのだろう」と。私も最近知ったことだが、知り合いの経営者の胸元のSDG‘sの17色のリングからなるピンバッジが目についた。SDG’sは15年9月の国連総会会議で定められ、17の目標を30年までに達成することになっているが、その13番目は「気候変動とその影響に立ち向かうため緊急対策をとる」だ。コラムでは「最近訪英した日本の経済団体は、参加者がみなこのピンバッジをしていた。先方から”かって日本人は眼鏡をかけて首からカメラをぶら下げていたが、今では具体的行動はなにもしないのにSDG’sのピンバッジをファッションのようにつけている“と皮肉られた」と言う。コラムの最後に「このような日本の若者にグレタさんは”自分たちの子孫が絶滅の淵にいることがわからないの?“と聞くだろう」で締めている。
日本では臨時国会が始まり、首相の施政方針演説があったが、海洋プラスチックごみの話はあったが、気候温暖化に関する言及はなかった。
最近、本屋の棚には、日本の将来を心配する本が並んでいる。その中で、米国の投資家ジム・ロジャーズの「日本への警告」(2019,7刊、講談社+α文庫)とゴールドマン・サックス出身で現在小西美術工藝社社長のデービッド・アトキンソンの「国運の分岐点」(2019刊、講談社+α文庫)を読んだ。いずれも、数十年後には日本は中国の属国になると言い切っている。世界でも最も急激な人口減少の中で強気の経済優先主義で、財政危機を抱えている日本に、昨年8月日本株をすべて引き上げたジム・ロジャーズは、「私が日本に住む10歳の子供であれば、一刻も早く日本に飛び出すことを考える」と言う。アトキンソンは、かなりの確度で来ると言われる東京直下地震、南海トラフ地震が実際に来れば、家屋の倒壊やインフラ損壊などの直接被害額が220兆円(政府見積もり)、間接被害も含めると地震発生後20年間で2200兆円近く(公益社団法人土木学会試算)に達すると言う。こうなると借金漬けの日本独自での復興は不可能で、海外に頼るしかなく、助けられる国はアメリカファーストの米国ではなく中国しかないのではと危惧する。
両氏が危惧するのは、50年後、100年後の日本のグランドデザインの欠如だ。政治の世界では、体制維持が第一義のため、選挙対策としての近未来しか議論せず、将来を考えた抜本的な改革は議論も含めて先送り状態だ。国会議論で首相の「今後10年間、消費税UPは必要ない」の根拠を問うも、根拠の説明は当然できない。1党多弱の安定政権の今こそ、100年後のグランドデザインに関する真剣な議論が必要だと思うが・・・。両氏の「日本の中国の属国化」を笑い飛ばすのではく、日本を愛する両氏の警告と受け止め、孫、ひ孫の時代も日本のままでいられるのか、問題先送りの政治を変えねばならないと強く思う。

万年BクラスのDeNAがなぜ蘇ったか?(プロ野球)

ちょっと古い記事だが、8月29日の日経に「”勝利の文化”が変える経営 世界の強豪に学べ」(本社コメンテーター中山淳史)の中で標題の話が載っていた。「“万年Bクラス”だった横浜DeNAベイスターズにここ数年勢いがある。2016年ラミレス監督就任以降Aクラス入りが2度、17年には日本シリーズに進出し、今年もチャンスをうかがっている」と。DeNAは6年前から元早稲田大学ラグビー部監督の中竹竜二(日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター)による助言を受けている。
中沢氏は、「チームボックス」と言う会社を設立し企業に対するコンサルも実施している。その中沢氏が、助言の下敷きにしているのは、サッカー名門の”FCバルセロナ“とラグビーの”オールブラックス“だ。両者に共通するのは、「勝ち続ける文化」だと言う。「勝ち続ける文化」とは、配下の育成チームも含めスタッフコーチなど全員が持つ共通の勝ちにこだわる文化(理念)だ。FCバルセロナでは「ボールは100%キープして当たり前」で「5秒ルールを守る(5秒を超えて相手に占有されたら全力で取り戻しに行く)」を共通認識としてボールを奪われない練習に精力を注ぐ。
DeNAの話に戻れば、選手の指導法で言えばコーチの”オレ流任せ“が主流の中、中沢氏の指導により、レギュラーと控え、選手とコーチ、コーチと裏方の間の意思疎通や共通の思いをはぐくむことの重要性について、最初は半信半疑だったが、筒香選手らの中軸が刺激を受け、コーチやスタッフ向けだった研修に1,2軍選手も加わることになった。1軍選手が強く希望したと言う。

ビジネスの世界にも参考になる話で、グーグルとフェイスブックでは「ウィニング・カルチャー」と言う言葉が日々の組織運営にはっきりと存在し、グーグルには文化の醸成を担う「最高文化責任者(チーフ・カルチャー・オフィサー)」のポストが常設されているそうだ。奇想天外な機内サービスで知られるLCCのサウスウェスト航空は「定時発着率で常にトップを」と言う経営目標と、「乗客をわくわくさせる」と言う創業以来の文化で大手航空会社より高い運賃でも選ばれる航空会社に進化している。
ボストン・コンサルティング・グループによると2020年代の勝利の要件として、学習するスピード、エコシステム、リアルとデジタルのハイブリッド、想像力、レジリエンス(回復力)を挙げる。GAFAでも20年代は事業の領域や組織の形を大きく変えないと生き残れない可能性があると指摘する。デジタル化が産業を変える速度はますます増していく中で、「企業は変化を積極的に取り込む文化があるかどうかを試される」と記事は締めている。

これからの時代の変化を先読みし、「勝利の文化(ウィニング・カルチャー)」を打ち立て、経営者・社員を含め全員が共有する文化として定着させる。20世紀を勝ち抜くための“働き方改革”の一環として一考の価値あると思うが・・・。

白黒写真をカラー化すれば・・・(戦争体験を引き出す)

8月15日の終戦記念日を中心に、戦争に関する報道が盛んだ。戦争(被爆)体験者が高齢化するにつれ、後世に悲惨な体験を継承する機会が減ることが懸念されている。そのような中で、戦争体験者に詳しく体験を語ってもらうためのある活動がテレビで報道されていた。
東京大学大学院教授渡邉英徳氏で、情報デザインとデジタルアーカイブによる記憶の継承のあり方について研究されている方の話だ。
以下、渡邉氏と、地元の広島において、戦前に撮影された写真をカラー化し、戦争体験者との直接の対話の場をつくりだすことで、実空間における“フロー”を生成する活動に力を入れている若干19歳の庭田さんのインターネット記事(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66484)から抜粋して報告する。

戦前・戦中の写真はもっぱらモノクロフィルムで撮影されている。カラー写真が当たり前の日常となっている今、白黒写真を見てもあたかも時代が止まっている感じを受け、記憶が凍結してしまうのではとの問題認識があった。そこで、筑波大学の飯塚里志氏らが開発したAI技術を応用し、白黒写真のカラー化を2016年から始めた。これは、約230万組の白黒・カラー写真から学習したAIによって写真を着彩するというもので、ウェブサービスとして誰でもかんたんに利用できるとの事だ。
原爆投下の写真、空爆で炎上する呉の街、焼きただれた広島の市街地を眺めるカップルの姿、また戦前の桜見に行った家族の写真など、白黒とカラー化されたものを比べると、確かに現実味を帯び、記憶が蘇る契機になると思える。上記記事に掲載の写真の一部を紹介する。

渡邉教授は現在も、主にパブリックドメインの写真をカラー化し、Twitterに投稿することで“記憶を引き出す”活動を続けている。ユーザからは大きな反響を得ており、多数のリプライをいただいているそうだ。
庭田さんは、広島平和記念公園が所在する中島地区中心に、元住民の協力を得て、 戦前に撮影された白黒写真をカラー化し、所有者との直接の対話を続けている。高齢となった元住民たちを何度も訪ねて、じっくりと対話を重ねながら、今まで思い出せなかった「記憶」を蘇らせてもらい、その記憶を「記録」し、次世代へと継承していく活動を継続している。

戦後74年、当時20歳の人が今は94歳。もう10年もすれば戦争体験を語れる人はいなくなる。二度と悲惨な戦争をしないためにも、また核廃絶のためにも、上記のような活動は、次世代の子供たちのためにも非常に意義ある活動である。応援したい。

冲中一郎