サステイナブル社会への宣言

昨日(21日)、台風15号首都圏直撃の中、日経BP主催の「東京国際環境会議」が芝公園のメルパルクホールで終日実施された。生物多様性条約事務局長や英国の運輸大臣、日本の林野庁長官なども出席され、この世界を未来永劫持続させるための種々の取り組みが紹介された。

企業ではシーメンス、住友ゴム、サントリー、三井物産、マツダ、レモンガスなどから講演があった。

まず住友ゴム。タイヤ事業が85%を占めるが、その中でタイヤの石油外天然資源化(Ex.合成ゴムから天然ゴムへの転換など)が進められている。一般的にはタイヤには56%の石油資源が使われているが、2006年には30%、2008年には3%を達成し、2013年には0%化を達成する予定だとか。燃費を10%向上させる「50%転がり抵抗タイヤ」も2015年には発売予定。「ランフラットタイヤ」という走行中に完全パンク状態になっても、時速80Kmで距離80Km走行可能なタイヤも開発しており、私も知らなかったが、スペアタイヤが必要ない時代が来つつあるとのことでした。これらの素材開発のためにSpring-8やスーパーコンピュータ”京“を駆使しているとか。このような開発で、タイヤに関わる排出CO2量を2020年に2005年比25%削減を達成したいと言う。別子銅山をはじめ全国で郷土の森づくりにも取り込んでおられます。

サントリーは水の会社。地下水が枯れれば会社の命はない。そのため、全国13か所、7000haの「天然水の森」を整備し、地下水の確保を行っている。我が国は、世界有数の森林率を誇り、そのため、地下水も豊富(日本の森林率68.5%、世界平均は31%)。しかし、林業が成り立たず、山を放置していると、どんどん本来の森の機能が失われ、地下水も枯れていく。そのための森林保護活動を地元と一緒に熱心に取り組んでいる。

三井物産は、北海道を中心に74か所、44,000ha(国土の0.1%)という広大な森林を100年に亘って保有している。昔は林業として始まった森の保有も、最近は赤字経営。だが、2006年に、社会的使命を受けて、今後も保有を続けるとの決議をされたとか。そして、子供たちに間伐経験をさせたり、公共材(Ex.京都の大文字焼の薪)の提供などの活動を展開している。

コトラーの「マーケティング3.0」の訳者、早稲田大学恩蔵教授は、製品中心(1.0)から顧客中心(2.0)、そして人間中心のマーケティング(3.0)に移ることを提案されている。すなわち自社の利益だけではなく、製品・サービスの社会的価値を重視し、世界をよりよい場所にするために、企業単独ではなくステークホルダー全体のコラボレーションを重視する方向に進むべしとのこと。事例として大阪の小さな運送会社エコトラック社は保有トラック70台を思い切ってすべてCNG(天然ガス)化することを決意し、投資したところ、パナソニックから大型案件が舞い込み、事業としての収益性を確保しつつ、双方で環境サステイナビリティに対応している。サッポロ生ビール缶には、CO2排出量が明示(カーボンフットプリント)されている(295g).消費者の環境意識が高まりつつあり、このような表示が増えていくものと考えられる。

今年は「国際森林年」の年、森に対する認識をもっと高めてほしいと林野庁長官も訴える。世界、日本、そしてこれからの世代のためにも!

驚嘆!77歳で3年がかりでヨット世界一周!

敬老の日にふさわしいニュースがあった。17日に横浜港に3年ぶりに寄港された世界的に有名なヨットマン斉藤実さん。世界一周8度目もギネス記録だそうだが、77歳も新記録だとか。さらに驚くのは、10か月の無寄港世界一周予定が、昨年のチリ地震の津波を受けて痛めた船を修理せざるを得なかったり、ハワイでは今回の東日本大震災の津波を受けたりして、3年がかりとなってしまったとか。57歳に世界一周に初めて成功し、それから8度というから、まさに高齢での達成はお見事というしかない。

今もご健在の堀江健一さんが太平洋横断で世間を驚かせたのが、24歳の時(東京オリンピックの年)。36歳で世界一周を初めて成功させ、68歳が最後の成功(どちらも無寄港で、8~9か月で達成)。ヨット「マーメイド」を製造したのが、私の故郷の数キロ先のヨットハーバーにある製造会社(姫路市的形)。

私の年代になってくると、高齢の方の頑張っているお姿に接すると元気をいただく。まだまだ頑張らねばとの思いを強くする。裏返せば、年を重ねることに対する不安が常にあるのかもしれない。年をとっても息子たちに迷惑をかけたくないとの思いは強いが、現実はさてどうなるものか?

今朝の日経朝刊1面の「春秋」に、アメリカの映画スター(ベティ・デービス)の言葉が載っている。「年を取るのは、弱虫には出来ない」。「敬老の日」の今日、寄る年波を考えることとしたい。

リーダーの危機管理の厳しさを痛感!

今週12日、六本木のアークヒルズクラブで第一生命殿主催の「多業種ネットの会」が開かれ、招待を受けたので行ってきました。その中で、小泉政権時代に産業再生機構の代表取締役を務めカネボウなど41社の再建に取り組まれ、今も自ら設立された㈱経営共創基盤の代表として様々な企業の再生に取り組まれている冨山和彦氏の講演があった。

テーマは「日本維新~大震災の最前線から~」でしたが、歯に衣着せぬ、自らの実践を通じたリーダーシップ論が非常に胸を打ち、かつ衝撃的なものでした。

経営が厳しい東北のバス会社を束ねて作った「みちのりホールディングス」(福島交通、茨城交通、岩手北バス)の経営を任されています。今回の東日本大震災で、福島原発の避難区域の人や津波の被災者を発生の翌日から無料で安全な場所に運ぶ決断をし、福島原発周辺の人に対しては茨城交通からも応援バスを出されたそうです。まだ福島原発の実情が明らかでないときの決断です。

その冨山さんが言う。

「3月11日の夜に、メルトダウンの事実が判明していたら、どのような判断ができただろう(バスを出す決断が出来ただろうか?)」

「3月12日PMの水素爆発がチェルノブイリと同様の水蒸気爆発であったら、どう決断できただろう」

と。未だに冨山さん自身答えが出ていないということです。

41社の再生は10万人の人生を背負う決断であり、いろんな修羅場を経験している冨山さんをしても、上記問いに答えが見いだせないという。リーダーの危機管理の厳しさを痛感させられました。カネボウの悲劇は繊維事業からの撤退の決断ができなかった事。フォードは米国の馬車事業を全滅させた。が上記問いへの決断は人命に関わることであり、ほんとに厳しい決断である。ハーバードの白熱教室(サンデル教授)では、こんな問題を取り上げながら、リーダーシップ教育をやっている。

冲中一郎