「新日鉄誕生(日経記事)」

1970年に八幡製鉄と富士製鉄が合併してから42年、今年10月に新日鉄と住友金属が合併する。今朝の日経11面、「日曜に考える」欄の『経済史を歩く』2回目の記事が「新日鉄誕生」だったが、1971年入社の私としては、一番に目に留まった記事だった。今年の3月に入社後初めての同期会(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2012/3/23)があったが、我々同期は純粋に「新日鉄」に生きてきた1期生とも言える(採用時から退職時までほとんどの人が純粋に新日鉄。ただ、いまだに子会社の社長などで活躍している人もいる)。

当時は、米国も鉄鋼生産がピッツバーグを中心に盛んで、世界の鉄鋼業をリードしていた。1967年の粗鋼生産世界一位はUSスチールで八幡、富士は4位、5位に甘んじていた。国内では需要は急増していたが、各社が過当競争の中で溶鉱炉を次々と新設(新日鉄も君津に続き大分も建設)し、製品市況は低迷していた。世界と競争するためには、合併して粗鋼生産世界一、売上高日本一の巨大企業を作り、業界内で強力なリーダーシップを発揮し、過当競争を防ぐこと、それが求められていた。合併直後オイルショックなどの激変があり、粗鋼生産は1973年をピークに頭打ちとなったが、新日鉄はシェアを譲りながら業界秩序を守ったとある。

その後も日産ゴーンショックが契機と言われる、川鉄・日本鋼管の合併(JFE)もあったが、ミタルがアルセロールを買収し、ダントツの粗鋼生産世界一になった頃から、新日鉄はじめ日本の鉄鋼業も買収の危機感から、再編が再度言われ始めた。今回の新日鉄・住金の合併もその流れにあると思われる。日本全体のシェアが頭打ちの状態の中、この合併により粗鋼生産世界2位に浮上できる。

「あの時合併していなかったら、日本の鉄鋼業界は大変なことになっていた」と当時秘書課長や鉱石課長だった勝俣孝雄氏、今井敬氏は言う。当時合併を推進し、多くの反対を押し切った稲山、永野氏の決断は素晴らしいものだったと思う。合併と共に入社した我々は、風土・文化の違いにたびたび遭遇し、苦い思い出も多いが、今となっては、統合に貢献できたことが懐かしくかつ誇らしく思い出される。「先を見た決断」、リーダーシップの重さをつくづく思い知らされる。

当シリーズの3回目は「東京通信工業(現ソニー)」だそうだ。

第2回JASIPA若手経営者懇親会開催(24日)

昨夜JASIPA事務所において2回目の標記懇親会を行った。第1回(http://jasipa.jp/blog-entry/7483)は居酒屋の個室でやったが、今回は落ち着いて議論が出来るということで、酒類は持ち込みとして飯田橋のJASIPAの事務所で実施した。今回も6名の若手経営者(うち2名は初参加)、オブザーバーの理事が2名と私の9名で実施した。

前回は「社員満足度」をテーマとしたが、今回は「顧客満足度」をテーマとした。「築城3年、落城3日」とよく言われるが、「1社員の行為によってある日突然重要顧客を失う」危険性はないか、そのようなことがないように日頃社員の躾をしているかということに関する参加者の意見交換から始まった。今後、日本国内のマーケットが確実に縮小する中で、ますます熾烈な競争社会になっていく。経営者として、顧客を失う「恐怖感」はますます大きくなっていくことは間違いない。

社員への対し方、社員のモチベーションUPのための表彰制度、お客さまアンケート、品質向上対策など、参加者同志の意見交換が、途切れることなく続き、今回も19時~22時の3時間があっという間に過ぎる白熱した懇親会となった。参加された方も、一生懸命メモを取る姿も見られ、有意義な会になったものと思う。次回は6月28日です。

イノベーションのジレンマ

今朝の日経のコラム「経営書を読む」に早稲田ビジネススクール根来教授の記事がある。標題は「クリステンセン著『イノベーションのジレンマ』―リーダー企業への脅威」。

調べてみると、この本は2001年翔泳社出版の本で副題に「技術革新が巨大企業を滅ぼす」とある。「イノベーションのジレンマ」という言葉は、ヤフージャパンの社長交代が発表された際の日経(?)記事が記憶に残っている。ヤフージャパンに関する話は、55歳の井上社長が6年前「イノベーションのジレンマをいかに克服するかばかり考えている」と話していたが、そのジレンマを打ち破れず、今回経営刷新に踏み切ったとの記事だった。この4月から社長になったのが44歳の宮坂社長。若返りだけというのは気になるが。

今回の記事では、リーダー企業を脅かす破壊的イノベーションには2種類あるとし、一つは「ローエンド型破壊」、もう一つが「新市場型破壊」と言う。「ローエンド型破壊」とは、過剰サービスと感じている人たちに、既存の製品・サービスの性能を落としてローコストで売るビジネスを言う。過剰サービスのデパートが、セルフサービスのスーパーにとって変わったのが一例。しかし、なかなか既存企業が察知しにくいのが、従来の製品・サービスにない性能などを提供することで需要を作り出す「新市場型破壊」だと言う。例えばデジタルカメラは「その場で見られる」「パソコンに保存できる」という新しい性能の提供で、従来のカメラとは異なる需要を創造した。そして、デジタルカメラへの追随姿勢によって、業界模様が大きく変わったのはご存じの通りである。真空管ラジオからトランジスタラジオへの移行でも、ソニーが先行し、他のメーカーは追随が遅れ苦労した。

クリステンセン氏は、「新市場型破壊」の成立要件を4個挙げている(詳細は日経Bizアカデミー参照)。この4つの条件を根来教授が、直近の事例として「クラウドコンピューティングサービス」に当てはめて考えている。

  • (1)ターゲット顧客である中小企業は、金・スキルが不足し、なかなか情報化投資に踏み切れない。
  • (2)このような顧客は「情報システムを全く使わないよりまし」との考え方で、少々機能が限定されていても満足してくれる。
  • (3)ユーザーから見ると、基本ソフトやサーバーなど気にせず、シンプルで便利な「誰でも使える」ものになっている。
  • (4)既存SI’erにとっては、カスタマイズもなく利益を生まない製品で、従来販売チャネルではなく、新たなものが求められる。

4つの条件を満たすため、クラウドコンピューティングは「新市場型破壊」に成長していく可能性ありと言われている。JASIPA会員企業の頑張りどころとも言える。

冲中一郎