売れない時代の営業術(日経)

昨日(14日)の日経朝刊に表題の記事があった。リード文に「モノが売れなくなったと言われて久しい。背景には市場の成熟、少子高齢化、景気低迷といった様々な要因がある。そんな厳しい環境下でもずばぬけた好成績を上げる営業担当者がいる。今どきのトップ営業はどのようにスキルを磨き、売り上げを伸ばしているのか。現場を探ってみた。」とある。

訪問先の店舗の様子を隅々まで観察し、ポスターやメニューの古さなどの状況から競合他社がフォロー出来ていない店を把握し、集中的に訪問する店を特定するキリンビールマーケティングの営業マン。その攻略のヒントをめもったノートは10冊以上。訪問回数は月平均400件と先輩社員の倍近く。

日産プリンスの営業マンは、激戦区の杉並で「ライバルに先行する極意は自分という人間を売り込むこと」と表現する。「庭の雑草対策、エアコンの故障、子供の自由研究、なんでもお手伝いします」。最近顧客に送ったダイレクトメールの封筒に刷り込んだ一文だそうだ。高級住宅地で平均年齢が高く、人口の流動性は低い土地柄で、顧客との関係を造りこむための方策として考えた。顧客は500~600人、全員に携帯電話の番号を教え、日常のちょっとしたトラブルにも駆けつける「究極の御用聞き」を目指す。パンフも分かりやすいように自前のパンフレットを用意する。エコカー補助金もおまけ。リーマンショック後も販売台数は減らなかった」と自信をのぞかせると言う。当ブログでも紹介した、町田市で成功した「でんかのヤマグチ」も、高齢化した顧客との関係を造りこんだ事例である。(http://jasipa.jp/blog-entry/7295)。

手製のメルマガを取引先に定期的に送る三菱電機の営業マンも紹介されている。

コンサルティング会社カーナープロダクトの横田社長の解説がある。トップ営業を維持するために求められるスキルは「顧客への感情移入力と粘り強さ」を挙げる。該社の調査では、トップ営業ほど顧客の立場や感情を理解・共感する能力に秀でていたと言う。受注できなかった顧客に接触を続ける期間はトップ営業の場合、平均25カ月、成績下位の営業マンの6カ月とは大きな差があったそうだ。横田氏が掲げる「営業センスを高める(顧客に感情移入する)ためのポイント」を下記しておく。

  • 知識:業界や商品の知識、競合情報などを整理して習得する。
  • 観察:売り場などを注視し、顧客の表情から感情の動きを探る。
  • 質問:ためらわずに「なぜですか?」と聞いてみる。
  • 想像:顧客が何を考え、どう行動しているか書き出し仮説を作る。
  • 共感:顧客と意見が違っても尊重、同意できる部分を捜し、一緒に考える。
  • 記憶:相手に許可を取ってまめにメモを取り、大事な点を箇条書きする。

マーケットが縮小し、ますます競争の激しくなるIT業界でも貴重なヒントとなる話と思う。

「あなたは宝石」存在を認める言葉は私を丈夫にしました(渡辺和子氏)

今朝の朝日新聞5面の全面広告に、PHP文庫の本として、岡山にあるノートルダム清心学園理事長の渡辺和子さんのものが紹介されている。現在85歳で、本や動画(You Tube )、講演など、傷つくことの多い日常をどう生きるかを説くために精力的に活動されている。9歳の時、2・26事件で父(教育総監渡辺錠太郎)を目の前で暗殺された。上智大学を出て30歳で修道女会に入り5年アメリカで学び、帰国したら初めての岡山の地に行かされ、翌年には学長に任じられた。初代、2代目の学長は70歳を超えた外国のシスターが学長だったが、初めて日本人、しかも36歳という若さでの学長となった。が、その重責と周囲の風当たりの強さに自信を喪失されたそうだ。そのような時、先輩神父に相談したとところ慰めの言葉はなく、「自分が変わりなさい」と突き放された。

そのような経験の中で得た心構えとして「自分が置かれた場所で精一杯咲き、そこが和やかな場になるようにすればいい。その力があるのに、ただ環境のせいにして甘えている人が多い」と説く。「環境を選ぶことは出来ないが、生き方は選ぶことが出来る。」そして、小さい頃から劣等感を持ち、自信のなかった私に、アメリカ人の上司が言ってくれた「あなたは宝石」と言われ、心に響いたその言葉に支えられたと言う。「人間の価値は何が出来るか出来ないかにあるのではなく、存在そのものが貴いのだ」と気づかせてくれたそうだ。どんなに愛想が尽きる自分であっても、自分を受け入れなければ、他の誰も受け入れてくれません。「愛とは見捨てないこと」と言いきる渡辺氏は、最近の学生は親からあまり褒められた経験がない子ばかりと言う。「あなたのお辞儀はきれいね」とか、「今日の靴はかわいいね」と折に触れ褒めていると、次から皆、態度が変わると言う。

この渡辺氏の話しで思い出すのは、当ブログでも紹介した福井県鯖江市の岩堀美雪さん(小学校教諭)の「自己肯定感が人を劇的に成長させる」です。「どの子にもいいところが必ずある、すばらしい可能性を秘めている」との信念に基づいた教育指導方法です。http://jasipa.jp/blog-entry/6579

今年6月1日のブログで紹介した曹洞宗大本山總持寺参禅講師大童法慧氏の法話にある「いま、ここ」を大事に生きるとのお話にも通じます。http://jasipa.jp/blog-entry/7593

苦労を乗り越えてこられた渡辺氏のお話は、貴重な教訓として我々の心に染み入ります。

バレーボール真鍋ジャパンお見事!

女子バレーボールが28年ぶりのメダル獲得!それもライバル韓国に完勝しての銅メダル。サッカー男子が韓国に完敗して悔しい思いをしたその日の夜(日本時間)だから余計に感動をもらった。今朝の朝日新聞1面には、「真鍋流データ主義結実」との見出しが躍っている。新日鉄堺の全盛期、中村祐造、田中幹保氏らと共に活躍していた真鍋氏だけに新日鉄出身の私としても格別の喜びだった。監督になって4年近く、2010年の世界選手権でも32年ぶりにメダルを獲得し、今回また、28年ぶりにオリンピックのメダル獲得だ。

「致知2011.9号」の真鍋監督へのインタビュー記事を読み返した。「精密力へのこだわりがメダル獲得をもたらした」とのタイトルだ。2008年希望して監督に就任後、2010年世界選手権3位以内、2011年W杯でオリンピック出場権獲得、最終目標は2012年オリンピックメダル獲得との目標を策定(W杯では五輪出場権獲得とはいかなかったが)。まずは、「世界を知る」をテーマにロシアやアメリカなど強国の戦術などをビデオなどで徹底的に分析。その後、日本の特質を活かしたオリジナル戦術を策定。背が高く身体的能力が高いと言う個の技術を追いかけるのではなく、「和」「器用さ」「緻密さ」という日本人の特性を活かして「サーブレシーブ」「サーブ」「ディグ(スパイクレシーブ)」「失点の少なさ」の四つのジャンルで世界一になるのを目標に掲げた。そして究極は、スタッフを加えたチームの総合力で世界に勝つ!今回の韓国戦を見ると、まさにこの目標が実践できていたのではないだろうか。

真鍋監督はさらに言う。「監督の思いが一方通行になっているチームは勝てない」と。そして「反対に選手が自分達の問題点を自分たちで考えて分析し、スタッフと同じくして試合をしているチームは強い」と。監督が試合中、IPADを持ちながらデータ分析をしている姿はおなじみになったが、試合後もスタッフが入力した各選手ごとのデータを見て選手は勉強し、反省しているそうだ。それまでは、データを見に来る選手はほんの数人だったのが、今では全員必死に見ているそうだ。

チームワークで言えば、試合後のインタビューで選手がスタッフに対する感謝の言葉を口にしていた。さらに背番号13番のユニフォームを迫田選手が着て戦ったというのが、噂になっている。コートには12人しか入れないが、補欠としてもう一人がスタンバイしているそうだ。今回は石田瑞穂選手だったとか。世界選手権では濱口華菜里選手が補欠だったそうだが、腐るどころか、練習には早く来てムードを盛り上げて、雑用で走り回って・・・。この時も竹下選手は銅メダル獲得後、直ぐに濱口選手に駆けより抱き合っていたそうだ。「出られなかった選手がいるから、その選手の分まで頑張りました」と竹下選手は語ったとか。これが本物のチームワークというもの。

敵を知り、自分を知り、その上で自分の強みを活かした戦術をとる。そして明確な目標を持って、行動に移していく。日本女子バレーも日本の誇りと言える。

冲中一郎