元祖ホンダの言う「ワイガヤ」とは

6月にもブログでホンダの哲学「自律、信頼、平等」(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2012/6/25)を紹介したが、日経電子版で、SRSエアバッグを開発された小林三郎氏の連載は今も続いている。その中で7月18日から8月9日まで4回にわたって、ホンダの企業文化を創りだした「ワイガヤ」の仕掛けを説明されていた。

小林氏は、「ワイガヤはホンダのイノベーションを加速する装置の一つ」という。一般には「ワイワイガヤガヤと活発に議論するブレーンストーミング」と理解されているがホンダでの「ワイガヤ」とはかなり異なっているそうだ。ホンダでの「ワイガヤ」は、まず社外でやる3日3晩の合宿を言う。妥協・調整の場ではなく、新しい価値やコンセプトを創りだす場であり、「熟慮を身に付ける場」と位置付ける。そのため、「ホンダは何のためにあるのか」とか、「自動車会社の社会にどんな貢献が出来るのか」というような本質的議論に立ち返ることが多い。若手技術者も自分なりの考えを発言することを求められるが、最初はなかなか難しくても3日3晩寝るのを惜しんで(実際4時間睡眠らしい)議論し、先輩から「あなたはどう思うか」と問われていると、熟慮せざるを得なくなると言う。年間4回程度の参加を要請されるそうだが、20回参加で「白帯」、40回参加で「黒帯」の称号が与えられ、「黒帯」でワイガヤのリーダーとなれる。

「ワイガヤ」に必要な他の要素としては、「学歴無用のフラットな組織」で、役職や年齢、性別も関係ない。「異端者、変人、異能の人」大歓迎とのこと。こうした企業風土は、ホンダの哲学である「自律、信頼、平等」と不可分のもの。ホンダでは、ワイガヤは単なる議論の場にとどまらず、ホンダの哲学とDNAをしみこませるために欠くことのできない機会にもなっている。3日3晩同じテーマを議論することで、会社の存在意義は?愛とは何?人生の目的は?など本質的な議論に立ち戻ることもたびたび起こる。

「ワイガヤ」に関してインターネットで調べたら、日経ビジネスの記事で『世界一を生んだ秘訣は、なんと「ワイガヤ」(http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110920/222724/)』という世界最高速コンピューター「京」の開発チームの記事があった。まさに小林氏の言う「イノベーションを加速する装置」の一つの証明とも言える。IT業界においてもイノベーションが求められている。「全員経営http://jasipa.jp/blog-entry/7685」と「ワイガヤ」でイノベーション、検討の余地あるのではなかろうか。企業理念を社員に徹底する意味でも。

パラリンピックも応援しよう!

先のオリンピックでは、過去最多のメダル数を獲得した日本人の活躍があり、応援も過熱した。終わったあともメダリストは大忙しだ。続いて行われているパラリンピックは、テレビ放送が少なく、わりと平静であるが、日本人も17競技、134名が参加して8月29日から始まっている。北京では27個のメダルをとり、今回の目標はこれを超えること。頑張ってほしい。

昨日行われた「ゴールボール」を見た。視覚障害選手が行う対戦型スポーツで、1チーム3名の選手が鈴の入ったボールを投球して攻撃したり、鈴の音を頼りに身体全体を使ってセービングをするなどの攻防を行い得点を競い合う競技だ。ほぼバレーボールコートと同じ広さで、縦18メートル、幅9メートルの広さの中で競技する。ゴールは幅9メートル、高さ1.3メートルでサッカーのゴールと同じような形となっている。そのゴールの前で、3人が投げてくるボールの行方を感知し、手足を一杯に広げて防御する。手足を伸ばしても3人で9メートルのゴールを守り抜くのは厳しい。そのためボールの中の鈴の音を聞いて、ボールの来る方向を如何に見定めるかが勝負となる。

練習風景を見て驚いた。敵のゴール前にいる選手が、味方のゴールの所でボールを持ったり、置いたりする時の鈴の音でボールの位置を言い当てるのだ。9メートルを18等分して、その場所を当てる。その的中精度がすごかった!「神経を研ぎ澄ませて鈴の音に集中するその緊張感が楽しい」と選手の浦田理恵さんは楽しそうに話していた。この浦田さんは教員になりたくて教員資格もとったが、20歳の時難病にかかり急に目が見えなくなった方だ。昨年10月にホテルニューオータニで開催された致知出版社主催の全国木鶏会での浦田さんの話には感銘を受けた。「皆さんは私が目が見えないとは分からないと思いますが・・・」と笑顔で話す姿は、全く健常者と変わらない姿に見えた(ブログはhttp://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2011/10/26)。

障害者の方の前向きに明るく努力されている姿に、健常者も多くの刺激を受けると思います。健常者では想像だに出来ないスキルを身に着けている方も多いと聞く。是非ともパラリンピックもみんなで応援して、北京以上の成績を是非とも挙げてほしいと願う。

答はお客の中にある!

昨日は、あるJASIPA会員企業で、リーダー層を集めたサロンを実施した。4月からはじめている「JASIPA経営者サロン」の企業版である。7月28日にも別の企業で実施したが、昨日は2回目の試みであった。19時から開始し、終わったのが22時過ぎ。議論続出であっという間に時間が過ぎていった。

テーマはずばり「顧客から信頼される会社、社員となるためには」。出席者は10名。私の方から、JISAでも推進している「IT業界の構造改革」の必然性から、顧客へのサービス競争の激化を説き、これに打ち勝つためには何をせねばならないか、1時間ほどプレゼンをした。その後、「第2回JASIP経営者サロン」(http://jasipa.jp/blog-entry/7566)と同様、「顧客満足度」に関して意見交換をした。「如何にお客様からの期待、本音を聞き出すか」、「その期待に応える提案を如何にするか」、現場にいながら、お客様(一次請けベンダー含めて)と如何にコミュニケーション(言うべきことを言う)を取るか、皆さん悩んでいる実態も浮かび上がった。とかく、「お客様の指示通りにやっておればいい」となりがちだが、これではお客様からの信頼は勝ち取れない。「さすが○○さん!」「さすが△△社さん!」と言われる存在にならなければ、ますます激しくなるお客の奪い合いに勝てない。喧々諤々の議論から、何かを得てくれたのではないかと思う。

クリエイティブ・ディレクタ佐藤可士和氏は、ユニクロ、セブン・イレブン、楽天、ホンダなどの広告キャンペーンや、オフィスデザインなどで企業のブランドを挙げている方だ。よくも次から次へとアイディアが出てくるものと思うが、佐藤尾氏曰く「アイディアは自分がひねり出すものではなく、相手の中にある。たとえ初めて経験することであっても、対象と真剣に対峙すれば答えは見つかる」と。ヒット商品を生む秘訣は「前提を疑う」ことと、「人の話を聞く」こと。「デザインとは、一つのソリューション。一般的には表層的な形や美しさを作ることだと思われがちだが、クライアントの言葉にならない熱い思いやビジョンを引き出し、最適な形に具現化していくことだ。何人ものクライアントを抱えていると、つい目の前のクライアントを大勢の中の一人と考えがちだが、それは違う。クライアントにとっては、1回、1回は真剣勝負で、社運をかけて臨んでいるわけだから、失敗なんて許されないのだ」。(致知2012.9号より)

成功者は、お客様の視点に立ち、徹底してお客様の問題解決にあたっている。佐藤氏は打率10割、すべてホームランを目標にしているそうだ。我々にも大いに参考になる話だ。

冲中一郎