我が身を削って人のためになる鉛筆!

25日のNHK「ゆうどきネットワーク」で紹介された創業60年の学童鉛筆製造メーカー北星鉛筆(葛飾区)。そこには、代々受け継がれてきた家訓がある。

鉛筆は我が身を削って人の為になり、真中に芯の通った人間形成に役に立つ立派で恥ずかしく無い職業だから、鉛筆の有るかぎり、利益などは考えず、家業として続けろ

この精神で、従来の鉛筆の需要が激減する中で、鉛筆を作る過程で出る木屑から作った粘土やウッドペイントなどいろんなアイディア商品を出し創業60年を迎える事が出来たと北星鉛筆の社長は言う。

知り合いの社長がFBで紹介していたPRESIDENT Onlineの記事が面白かった。「解明!運がないひとは、なぜ運がないのか」と言うタイトルでの京都大学工学研究科藤井聡教授の記事だ(http://president.jp/articles/-/8829)。

他人に配慮出来る人ほど運がいい

自分から遠い存在である他人のことまで思いやる利他的な人ほど得をし、目の前の自分の損得のみしか考えない利己的な人ほど、運をつかむチャンスを失い損をするという「認知的焦点化理論」を主張される。藤井教授は、犬(嗅覚)や蝙蝠(超音波聞き分け能力)と同じく、人間は「悪者を見破る能力」を進化の過程で異常に発達させ、それに成功した人たちが生き残ったとの淘汰説が、実験を通じて証明されていると言う。人間は悪者をすばやく発見する装置を備えた生き物だと指摘している。したがって、利己主義者が本性を隠して表面を取り繕っても、我々はほんのささいな言動からでも敏感に察知でき、そういう人には真の友人やパートナーが出来ない。一方で、利他性の高い「いい人」には、人が寄ってくる。

企業も同じで、成果主義が効果を上げても、全社的に利己的体質が過剰になれば、やがては会社自体が崩壊に向かう。利己主義者が効率を追求してビジネスライクに当面の利益をあげる一方、利他性の高い人は商売抜きで幅広い会合に付き合ったり、得にならない役割を自発的に引き受けたりで、日頃はとても非効率な存在に見えるが。が、「平時」から「危機(今回の東日本大震災のような)」になった時、利他主義者は強い。平時に培った人脈や関係が対応策の選択肢を広げてくれる。逆に利己主義者は変化に弱い。

創業100年をこえる企業は、国内に約2万社、全体の2%ほど。不況や戦争、災害を乗り越えてきた老舗には、家業を守り続けてきた立派な家訓があり、その家訓を守り続けてきた企業が長生きしているとも言える。

「頑張っているのに自分だけなぜこんなに不運続き」と嘆く人は、一度自分の胸に手を当てて考えることを、藤井教授は薦めている。

「ありがとう」の反対語は「当たり前」???

最初、この話を聞いたとき、正直何を言っているのかよく理解できなかった。「致知4月号」の随想記事、蓮華院誕生寺内観研修所長(熊本)大山真弘氏の『「ありがとう」の反対語』の中に一文としてあった(「内観」については、ソフトバンク小久保氏の話として話題にしたhttp://jasipa.jp/blog-entry/8562)。同じ時期に、これもブログ(http://jasipa.jp/blog-entry/8564)で紹介した「社長のための‘お客さま第一’の会社のつくり方(小宮一慶著)」の中の一文に出てきた。

「ありがたい」を漢字で書くと「有る事難し」。日頃の生活を振り返っても、自分が今生きていること、毎日食事が出来ていること、家族といることなど、「当たり前」の事と思えば、何の感慨も出てこない。「ありがたい」と思う心は、それが「当たり前」ではないことに気付くことによって、起こる心と言える。しかしながら、悲しいことに我々人間は、あたり前と思っていることが、当たり前でなくなるまで、なかなか気づくことが出来なくなってしまっている。

「内観」では、まず母親についての記憶を辿りながら、「してもらったこと」「お返しをした事」「迷惑をかけた事」の三つの問いかけをする。一人静かに記憶を辿る内に、不思議なもので、心の奥にしまいこまれていた遠い日の思い出が一つ一つ蘇ってくると言う。まさに母親との関係で、「当たり前」と思って気にも留めなかったことが、「内観」によって、母親の深い恩に気付き、感謝の気持ちが沸々と湧いてくると言う。大山氏は、商社マンから転身、得度され、摂食障害やうつ病、アルコール依存症など、様々な問題を抱えた人たちを対象に、内観を実施されている。1週間も内観を続ければ、それまで他者を非難し、被害者意識に陥っていた方が、問題の原因が自分にあることに思い至るそうだ。正しいと思い込んでいた自分が、如何に人に迷惑をかけてきたか、にもかかわらず、如何に支えられて生きてきたかを悟り、感謝の念を抱くことで、楽に明るく生きられるようになると言う。まさに「当たり前」と思っていたことを「有ること難し」と気づくことによって、感謝の念が湧き出し、気持ちを楽にできると言う事だろう。

小宮氏は、自分の経営するコンサル会社の社員には、電話がかかると、まずは「ありがとうございます。小宮コンサルタンツです」と言うように指導しているそうだ。これは、17年前3人で創業した時、ほとんどかかってこない中、電話がかかってきた時の有りがたさが忘れられないからだと言う。

身近な人が亡くなった時、「生前にもっとよくしてあげればよかった」と後悔する人が多いのではなかろうか。「ありがとう」の反対語は「あたり前」。このことを意識しながら、日々の何気ないことにも感謝の心を忘れないようにしたい。

IT業界の職場の実態調査結果、ほんと!?

この2月当ブログにUPした「助けて!組織風土改革にすがるIT業界(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2013/2/5)」の続編版が3月18日のITproに掲載されていた(http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20130308/462061/?mle)。2月は、IT業界の組織風土に関するアンケート依頼が主だったが、その後セミナーなどでのアンケート結果と合せて971人の回答結果が出た、その集計結果である。この3月末発売の「日経情報ストラテジー5月号」に特集され、スコラ・コンサルトの柴田昌治氏とNTTデータ相談役の山下徹氏の対談記事もあると言う。

アンケートの設問を下記する。

  • Q1.同じ部門の社員同士であっても心に壁があり、会話や協力が出来ていない。同僚の事を、実はよく知らない
  • Q2.顧客(又はシステム利用部門)の厳しい要求に対応するため多忙を極め、周囲と相談したり、アドバイスしあう機会が大幅に減っている
  • Q3.メンタルヘルス不調の増加など、職場で何らかの問題が発生した場合、それを解決するためのチームを立ち上げたり、新たなルール・制度を設けるなど具体的な改善策を打っている
  • Q4.プロジェクトマネージメントの導入でスケジュールやコストの管理は厳しくなったものの、トラブルが発生した際の打開策は「長時間残業」であり、職場は疲弊しきっている
  • Q5.経営トップは「ソリューション提案力の強化」を掲げているが、そのために必要な人材育成策が整備されておらず、自身のスキル向上に不安を覚える
  • Q6.そもそも会社が「目指す姿」が見えない。会社の存在価値や仕事のやりがいを考えることをあきらめ、会社と一定の距離を置き、目の前の仕事をこなす日々が続いている

上記設問に対して「はい」と答えた比率が、Q1:48%、Q2:50%、Q3:26%、Q4:66%、Q5:74%、Q6:61%となっている。比率が想像以上に高い!母数が少ないので、何処までの信憑性があるのか分からないが、ITproの記事を読んだり、セミナーを受講している方がたはそれなりに問題意識がある人達と考えれば、ある程度の実態を表わしているとも考えられるのではなかろうか?

IT業界の置かれた立場を考えると、やはり由々しき問題である。こんな実態では、「お客様にとっていい仕事」が出来るわけがない。ITpro川俣記者は「職場全体の問題であって、誰かが変えてくれるのを待つだけではなく、自分なら何が出来るかを考え、小さなことでも変えてみるのが必要」と奮起を促している。特にQ5,Q6に関しては、理念を掲げるだけではなく、それを実行に移す施策が全社員に実感として受け止められる形に持っていくことが経営層に求められる。働く人たちの「幸せとは」を、真剣にみんなで考えて見る必要がありそうだ。そうでなければ、IT業界から優秀な人たちが逃げていく。

冲中一郎