人を幸せにする経営者になりたい!(アチーブメント青木社長)

人材育成関連の本を多数出版し、企業の人材育成研修でも注目を浴びるアチーブメント株式会社の青木仁志社長の記事に目が止まった(PHP Business Review松下幸之助塾2013.7・8号特集「哲学ある人づくり」)。タイトルは「人は人によって磨かれる」。

26年前「人を幸せにする経営者になりたい」と、社員5名でマンションの一室で創業。今では110名の社員を抱え、よい人材が集まる誇らしい会社に育てることが出来ていると自負する。実際、日本経済新聞社が就活生を対象にして行う「就職希望企業調査」(2013.2発表)では「サービス業・その他」部門で13位に、社員300名以下の中小企業では人気ナンバーワンになった。青木社長がみずから講師を務める「戦略的目標達成プログラム“頂点への道”講座は、講座開設後22年で26000名強が受講したそうだ。その青木氏の「人を育成する考え方・信念」の一部を紹介する。

自主責任経営

これは松下幸之助氏の言葉だが、「一人一人が自分の仕事にやりがいを感じ、責任を感じて目標達成を目指していくことが、個人の成長になり、ひいては、企業の発展になるとの考え方だ。青木氏は、会社とは、「理念」を掲げ、「志」で動かしていくものと言う。経営者に志があればそれに共鳴するピカピカの人材が集まってくる。該社の企業理念をホームページで調べた。

上質の追求
わが社は選択理論を基にした、高品質の人財教育を通して、顧客の成果の創造に貢献し、全社員の物心両面の幸福の追求と、社会の平和と繁栄に寄与することを目的とします。

青木社長はこの企業理念を強い志で、ビジョン、目標、計画、実践につなげていかれている。

落とさない採用システム

理念に共感してくれる「徳」と「才」のある人材を採用したいとの思いで、採用システムを組んでいる。志望者は毎年4000名ほどいるが、最初の3時間のワークの中で、一緒にワークした仲間の中から「この会社にふさわしい」と思える人を二人投票してもらう。採用までに7工程あるが、すべての工程で、「落とす」ためではなく、如何にこの会社と合っているかの確認に注力する。最終段階まで100時間ほどかけて採用を決めるそうだ。すなわち相思相愛の「恋愛結婚型採用」であり、「理念共感型採用」でもある。この制度を採用して、いい人財がどんどん集まるようになったと言う。

人を育てる

社員がやりがい、働きがい、生きがいを感じ、自分の価値をその企業の中で証明していく。これが本来の自己実現で、会社がこんな場を提供できれば、どんな厳しい、きつい仕事でも耐えられる。人間の価値で最も大事なのは「思考力」だと思うが、この力を育むためには、「怖れ」を排除することが必要。その「怖れ」とは、批判する、責める、文句を言う、がみがみ言う、脅す、罰を与える、目先の褒美で釣る・・・など。結果、人は委縮して、自己実現の回路が閉ざされる。

働くと言うことは「出来ること(CAN)」、「やりたいこと(WANT)」をやることで成り立つのではなく「やるべきこと(MUST)をきちんとやる」ことで成り立つ。「やるべきことをやる」と決めると、人の力を借りることが自然と出来るようになる。我が強い人は、人の力を借りず、自分だけでやろうとして出来ず、目標を下げてしまう。

教育の最大のテーマ

青木氏は松下幸之助氏の人づくりの考え方に共鳴される。「経営とは人を幸せにするためのもの」との考え方も、松下氏の理念に相通ずるもの。松下氏は「国家も経営、会社も経営、会社も経営」と言って、一人一人が如何に責任ある存在として成長していくかということを深く考えられていた。青木氏は「会社経営で大事なものは無形資産」で、自分の信条である、誠実さ、感謝の念、愛、志、熱意もすべて無形のもの。人づくりは教育でしか成し遂げられない。「みずから考え、自ら行動し、みずから価値を創りだしていく人材を育てること」が教育の最大のテーマと考え、志高く事業を推進されている。

青木氏が開発した教材の理論の原点「選択理論」(先述の企業理念にも出てきた)を一度勉強してみたい衝動に駆られている(byウィリアム・グラッサー博士)。

テレビ断食で日本再建!?

「テレビ断食の会」というのがあってその会長である田中暖人氏が、「致知2013.7」‘致知随想’に寄稿されている。毎日報じられる学校現場での問題の根源は「家庭の崩壊」であり、その原因の根っこは「家族同士の会話のなさ」にあると考え、このほど「テレビ断食の会」を立ち上げ、日々の生活から電子メディアに浸る時間を減らし、有意義な時間を取り戻す運動を推進されている。

ある調査では、今の子どもはテレビやゲーム、インターネットなどの電子メディアに週平均で約30時間、多い子は60時間以上も浸っているという。電子メディアの子どもに与える影響として、長時間のテレビ、ゲームにより、子供の脳は休むことが出来ず学習に集中できなかったり、主体的に時間を工夫して使う事を考えなくなってしまうことを指摘している。電子メディアがなければ、外で遊んだり、本を読んだり、絵を描いたりして、時間の過ごし方を工夫する。その過程で創造力や人間とのかかわり方を学ぶ。電子メディアは、「楽に楽しめる時間」をあたえてしまう、言い方を変えれば、「時間の使い方を工夫すること」をやめ、「電子メディアに逃げ込んでいる」とも言える。

田中氏は「日本がいまよりも、もっと良い国になるには家庭の力の再生にある。テレビ断食の運動はまだ緒に就いたばかりだが、この活動を通じて日本の家庭に会話を取り戻し、家庭が本来あるべき姿に戻ってほしいと願っている」と言う。

元NHKアナウンサーで名を馳せた鈴木健二氏(今は84歳)も近著「心づかいの技術(新潮新書、2013.6.20刊)」で、「家族は常にお互いの目を見合わせて暮らしていかなくてはなりません。しかしいま、日本人の目は家族に向けられず、テレビ向けられています。家族が比較的揃うのは夕食の時間ですが、どうしてその中にテレビに映る他人を入れて、家族全員が他人を見つめたり、話を聞いたりしているのでしょうか」と疑問を呈している。続けて「このままでいくと、日本の家族は対話を失って、無言のままバラバラになって崩壊してしまいます。お願いです。せめて食事の時間だけはテレビを消して頂けないでしょうか。あなたにとって最も大切な家族を守るために」と。いま、日本の小・中・高生のテレビ視聴時間は、欧米諸国の同年代の子達の2倍、その一方読書時間は欧米の子の半分だとのこと。鈴木氏は、子供たちに「テレビや、ゲームの時間を半分にして、その分だけ本を読みなさい。テレビだけ見ているとバカになるよ。日本でテレビが始まる前から放送局で働いていて、テレビの中だけでも、36年も番組を作ってきた私が言うんだから間違いないよ」とボランティアでやっておられる子供たちへの授業の終わりに必ず言うことにしているそうだ。

私もついつい食事をしながらテレビを見ていて、家内に注意される(怒られる)ことがある。孫を含む家族で食事する時は、テレビをつけず話に花を咲かせることに努力したい。家内と二人だけの時は勘弁してもらって。

車椅子のアーティストの生き方に感動!

「先天性四肢欠損症。生まれつきほとんど手足が無い(唯一左足3本の指のみ)という重度の障碍を抱えている佐野有美(あみ)さん、23歳。プロの歌手として活動する傍ら、年間約100回、講演で全国各地を飛び回り、多くの方々に感動と勇気を与えている。」(致知2013.8インタビュー記事「笑顔は最高のおしゃれ」より)

幾多の困難を乗り越えられ、「今はとても幸せ」と。その壮絶な人生体験と、そこからつかみ取った信条を聞くと、健常者である自分の生き方の甘さを感じると同時に、生き方のヒントを得ることが出来る。「悩みは、過ぎ去った‘過去’を悔やみ、‘将来’への不安から来るもの。‘いまここ’を見れば悩みはない筈。だから何も悩まず、今にベストを尽くせる」と言われる博多の歴女白駒妃登美さん(http://jasipa.jp/blog-entry/8227)。「自分が置かれた場所で精一杯咲き、そこが和やかな場になるようにすればいい。その力があるのに、ただ環境のせいにして甘えている人が多い」と言われるノートルダム清心学園理事長の渡辺和子さん(http://jasipa.jp/blog-entry/7878)、曹洞宗大本山總持寺参禅講師大童法慧氏の「いま、ここ」(http://jasipa.jp/blog-entry/7593)。まさに、これらの人の言葉を実践し、幸せな心を掴んだ有美さん。早速インターネットで調べると、YouTubeにも数多く登場し、多くの人の感動を誘っている(http://www.youtube.com/watch?v=K3z48SmqPxU)。

食事や着替え、メイクに加えて、パソコン(3級検定資格を有す)の操作や字を書くのも、唯一ある左足の3本の指でこなす。水泳も100㍍泳げる。本人は、小さい頃から両親がいろいろ考えて教えてくれたからと言うが、本人の努力は想像に絶するものだったろう。本人曰く、生まれつき明るい性格だったが、その反面気が強くて自己中心的な性格だった(有美さんが生れたとき、両親は将来を考え心中も考えたそうだが、その時の有美さんの笑顔に、一緒に頑張っていこうと思い直したそうだ)。小学校(普通学校に行った)の時、周囲からいろんなことを言われて言い返していたが、一人ぼっちになった時、一人では何もできないことに気付き、自分の存在を否定しがちになってしまった。中学校でもその気持ちをひきづっていたが、友達の大切さや感謝の気持ちを大切にしながら自分を出していこうと高校に進み、友達、先生に恵まれチアリーダー部に入った。そこでも落ち込むことがあったが、先生からの「もう有美には手足は生えてこない。でも、有美には口がある。だったら、自分の気持ちははっきり伝えなさい。有美には、有美にしかできない役目がある」との言葉に衝撃を受け、チアリーダー部でもステージがある時は司会を務めたり、練習中も声だしに徹するなど自分の役割を見出していった。その先生の言葉が、今の講演活動や、音楽活動に繋がっている(歌手デビューは平成23年。その年に「あきらめないで」で日本レコード大賞企画賞)を受賞)。

有美さんは、講演で伝えたいことはとの質問に、まず「諦めない事」と言う。何かチャレンジする時「出来るか、できないか」よりも「やりたいのか、やりたくないのか」そちらの気持ちの方が大事と。それから「自分がまず輝くこと」。有美さんの座右の銘は「笑顔は最高のおしゃれ」。そして言う。「昔は自分の障碍を嫌ったり、避けていた時もあったが、いまは自分がこの体で生まれてきたからこそ大切な事を感じることが出来ているのかもしれないと思う。確かに日常生活の中で不便を感じることはある。でも、私は不幸ではないなと。いまとても幸せです。」

「いまここ」に精一杯の力を尽くす、その事の素晴らしさを有美さんは教えてくれた。頑張れ!有美さん!

冲中一郎