体を感動で震わさないと・・・(日経)

昨日(9日)の日経夕刊1面のコラム「あすへの話題」に三菱ケミカルホールディングスの小林喜光会長の投稿がある。当ブログでも「感動・感謝・感激」に関する話題を数多く掲載させて頂いたが、新聞などでもこの3つの言葉に敏感で、なぜかすぐ目に留まる。今回の小林氏のタイトルは「小さな感動」だった。

「知恵を絞るのが私の仕事である」で始まり、「絞ればいつも知恵が出てくるわけではなく、逆に頭の中をまめに空にして体を感動で震わせないと、滲み出てこなくなる」とある。「私にとってはやはり、知恵より感動の方が重要なのだ。“芸術が爆発”なら人生は感動だ」と続く。そして日常生活にあふれている小さな感動に言及されている。美味しいもの、うまい酒、壮麗な1枚の絵、もの悲しい調べに感じ入り、庭弄りでのささやかな庭の草木をいとおしみ、実用的な多品種少量の野菜つくりでお日様と汗と大根の小さな花びらに感動する。そしてそんな感動を求めて朝早くから起き出してしまう。

感動の語源は論語の「感即動(感じるから動ける)」だそうだ。著名な思想家安岡正篤氏は「人は感動の度合いが大きいほど人間的な厚みが増し、その感動の量や感激の量が最終的な人格を作る」と述べています(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2011/4/1)。「感即動」とは「感じたら、すぐに動く」の他に、「感じさせることで、人は動く」という意味もあり「感じ方を変えれば即、行動が変わる」と捉えることもできるとある人は言う。

帝国ホテルと顧客満足度で競う「スーパーホテル」は「自律感動型人材の育成」を掲げる(https://jasipa.jp/okinaka/archives/1489)。その成果は、空室率の低さ、リピート率の高さに出ている。

今生かして頂いている幸せに感謝しつつ、日常的な小さな事柄にも感動できる、そしてそのような感動を皆さんに分け与えられるような人間になりたいとの気持ちを忘れないでいたい。

革新力The Company混沌を制する(日経)

日経1面に4月から連載されている「革新力The Company」は面白く読ませてもらっている。イノベーション力というか、いろんな知恵と実行力で、果敢に問題解決に挑戦している企業が満載だ。6月5日の「混沌を制する⑤」ではサブタイトル「過疎路線息吹き込む~賢者は逆境を活かす~」として、埼玉県のイーグルバスや、岐阜県の大垣共立銀行などが紹介されている。以前とある記事で興味を持ち、ブログにも掲載させて頂いた企業であり、興味深く読ませてもらった(イーグルバスはNSD在勤時のイントラで、大垣共立銀行はhttp://jasipa.jp/blog-entry/6477で)。

その記事は「人口約3200人の埼玉県東秩父村でITをフル活用した地域振興策が進む。仕掛けたのは同県川越市に本社を置く中堅バス会社のイーグルバスだ。」で始まっている。日本生産性本部の「ハイ・サービス日本300選」にも選ばれ、日経ビジネスなどメディアにも再々紹介されている。地方の路線バス事業は、人口減少もあり赤字に悩まされている。高速バスや観光バス事業を主事業にしていた該社は、大手が撤退した路線バス事業を2006年に引き継いだが、思い通りに行かず赤字から脱却できなかった。谷島社長は、この状況を克服するため「運行状況の可視化」技術を実現するために埼玉大学工学部に入学し、科学的な再生の道を探った。バスの乗降口にセンサーを取り付け、「どの停留所で、何時に何人が乗降するか」のデータを収集。利用率の悪い時間帯などをあぶり出し、時刻表やルートを頻繁に変えるシステムを開発。結果として、ビッグデータを多角的に収集、路線バス事業が抱えていた課題とその改善策をデータで徹底的に可視化し分析することで、2007年比で客を6万人増やし蘇った。さらに、ITシステムを活用して、観光施設の傍に「ハブ停留所」を作り、ツアー客の乗り継ぎ向上へ村営バスと路線を統合したり、コンビニエンスストアを整える大掛かりな「街つくり」構想を描く。谷島社長は言う。「苦難に直面する地方だからこそ新たな挑戦が出来る」と。

大垣共立銀行も日本生産性本部の「ハイ・サービス日本300選」にも選ばれ、「つきあいたい銀行ランキング」において大手銀行を抑えて全国一位に輝いたりしている。今回の記事では「通帳やカードがなくても手のひらの静脈認証だけで預金を出し入れできる全国初のATMを2012年に導入したことが紹介されている。これをさらに進めて地元商店街で「手のひら決済」を取り入れる構想も持ち、土屋頭取は「手のひらだけでの買い物」を大真面目に考えていると言う。過疎地巡回の移動店、ドライブスルー店舗など、大垣共立銀行は次々と全国初のサービスを実施、個人預金残高は20年以上連続で増加している。土屋頭取は言う。「首都圏は大きすぎ。地方はニーズをとらえやすく自由がきく」と。むしろ地方にいるハンディをプラスに転じて新たな商機を生み出す。

京都から大学を変える(京大松本総長著)

以前にも、懇意にして頂いている京都大学松本紘総長(今年満期を迎えられるそうだ)の大学改革に対する熱意を紹介した(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2012/2/17)。3年前の記事で、入試改革やグローバル人材育成のための全寮制の5年大学院の創設を熱く語っておられたが、その後着々と進んでいる大学改革(高校との連携も含めて)について、表題「京都から大学を変える」(祥伝社新書、2014.4.30)を出版された。

「今、大学で何が起きているか」の章から始まる。受験科目の減少に伴う受験科目に特化した学習やAO入試、推薦入試の弊害、就職活動の早期化などにも起因して、ますます学生の質が劣化している現状を問題視する。そして、世界大学ランキングでも、かってはアジアで圧倒的な地位を占めていた日本だが、近年は中国、韓国、シンガポールなどが猛烈な勢いで台頭してきていると言う。日本政府は「10年以内に世界ランキング100に日本の大学を10校入れる」ことを目標に掲げている(2013年は、2社ある調査会社でそれぞれ6校、2校しかない)。国際化指標(外国教員や留学生の受入数や、英語での論文数など)が、北京、香港、シンガポールなどは80点~90点代なのに、東大、京大は20点代という現状と言う。さらには、日本の大学での留学生の学習意欲のすさまじさに日本人ははるかに劣るとも。実際、日米の比較(大学生)でも、1週間に勉強する時間が11時間以上の比率が米国は58.4%、日本は14.8%(2007年度東大調査結果)。このような現実を放置していると、日本は「先進国」ならぬ「先衰国」になること必定。このような危機感を持って、「育人」こそが、資源の乏しい我が国におけるもっとも重要な未来への投資と、積極的に大学改革に取り組まれている著者の情熱と志が伝わってくる。その施策の一部を紹介する。

京大方式特色入試(2016年春より実施)

受験科目しか勉強しない傾向に対して、幅広い教養が創造力の源泉と言う筆者は、高校時代音楽や体育も含めて幅広い知識と教養の土台をしっかり身に付けることを目的として、2016年度より、学部ごとにある人数をこの方式で採ることとしている。高校での学修における行動と成果、そして各学部におけるカリキュラムや教育コースへの適合力を判定基準とする。前者では、在学中の各種活動歴や、学業活動報告書を学校長の責任で作成し、志願者は「学びの設計書」を提出する。後者は、各学部ごとに決められた選抜方式に則って行う。センター試験の成績もあるが、小論文や、口頭試問などがある。

国際高等教育院の設置(2013年4月)

地球規模の課題に取り組むための複眼的な視点を培える教養・共通教育を実施するために全学部連携の制度を作った。筆者独自のキーワード「異・自・言」を身に付けた人を育てる。「異」とは、異文化・異分野を理解し尊重する態度。「自」は、自国の文化などに対する知識や、日本人としての自らの考えの確立と主張。「言」は、言葉=対話力で、「異」と「自」を繋ぐ語学力を意味する。外国人教員を約100人に増やし、カリキュラムの約50%を英語による授業に切り替えていくと言う。

リーダーを育成する新大学院「総合生存学館」(通称思修館)(2013年4月)

現在の専門性を磨く修士課程(2年)、博士課程(3年)に変わり、幅広い知識と深い専門性、柔軟な思考力と実行力を備えたグローバル人材を育成するための新しいタイプの大学院だ。地球そのものを持続可能にするためには、資源・エネルギー問題、人口・食糧問題、さらには地球温暖化の問題など、専門に特化した従来の大学院では対応できないことや解決出来ない難題に対応するための人材育成を司る。企業も針先のような尖った専門性を有する人材よりも、幅広い専門性を有するグローバル人材を求めている。定員は年20人、学寮制。かなり厳しい教育制度だが、真に日本が世界に羽ばたくために必要な人材を目指す。

その他にも若手研究者を支援する「白眉プロジェクト」、海外経験を支援する「ジョン万プログラム」、新しい学問を生む「学際融合教育研究推進センター」などユニークで、世界が求める人材育成のための各種施策を実施している。

今、秋入学の話題など、各大学で改革が議論され、実行されつつある。昔から問題視さている有名大学志向の「お受験」ママのような視野の狭い考え方を廃し、グローバルに活躍できるリーダー育成をするための大学改革、そして入試改革が日本を変えることを期待したい。

冲中一郎