休日に遊びに来てもらえるカーディーラー(ネッツトヨタ南国)

先日「最高の感動サービスに徹するレクサス販売店」(http://okinaka.jasipa.jp/archives/2441)としてレクサス星が丘を紹介し、以前には「12年連続顧客満足度ナンバーワンに輝く経営」(http://okinaka.jasipa.jp/archives/476)でネッツトヨタ南国を紹介した。「PHP松下幸之助塾2015.3-4」の松下幸之助経営塾での講義録としてネッツトヨタ南国の現取締役相談役横田英毅氏の話が掲載されている。お客様の感動を生み出す組織づくりとして「社員の“満足”ではなく”幸せ“をめざす」とのタイトルだ。1980年に設立されてから、来店者数が前年を下回ったことがない。トヨタ販売会社の中で、‘99年の調査開始以降顧客満足度全国1位を維持、’02年には自動車業界初の日本経営品質賞を受賞。

大切なことは、大切なことを、大切にすることである

禅問答のような言葉だが、横田氏が講演でよく使う言葉だ。「あなたはこの1ヵ月、この1年何を大切にしてきたか?」と聞かれて答えに戸惑う人が多いのではと指摘する。売上や利益を挙げる人がいるかも知れないが、それが社員の“幸せ”、すなわち“生きがい”、“働き甲斐”なのかと問いかける。横田氏は“満足”と“幸せ”を分けて考えることを提唱している。すなわち、“満足”とは、力、富、モノ、称賛、便利さなど、追い求めるもの、何らかの形で見えやすいもの。“幸せ”とは、人との連帯、見返りを求めない行動、感謝の心など、追い求めるものではなく気付くもの、目に見えにくいもの、道徳的なもの。幸せになると、満足も手に入りやすくなるが、逆に満足を追い求めると幸せは遠ざかっていく。それが心のメカニズムと横田氏は言う。そして、

人に感謝でき、利他を一所懸命考えられる人が集まれば、コミュニケーションやチームワークが良くなる。最終的に業績を挙げられるのは、幸せな人の集団だ。

値引きのようなお客さまを満足させるサービスは、お客様の要求レベルがエスカレートしやすく、常にお客様の期待を超えなくては満足に至らない。一方で、“感動”は同じことの繰り返しで十分効果があると言う。そして、

当たり前の事を人並みはずれた熱心さで実行すること、これが凡人と非凡人の違いである(ネッツトヨタ南国の社訓)

ここで言う凡人は「やらされている人」、非凡人は、内側からの動機で仕事をしている人を言う。自分の内側から湧き上がるような動機を持っている社員が、群を抜くサービスを提供し、お客さまに感動をもたらす。満足はアニュアルや上司の指導で提供できるが、感動は一緒に感動できるような感性の高い社員でないと提供は難しい。「幸せである人の集団であるかどうかのチェックリスト」を提示する。

  • ・成長の実感があるか?
  • ・自分で考えて仕事をすることが出来るか?
  • ・自由に意見が言えるか?
  • ・自分の努力が評価されているか?
  • ・職場の人間関係、上司と部下の関係はいいか?
  • ・コミュニケーション、チームワークは良いか?
  • ・お客さま、同僚、ビジネスパートナーから感謝されているか?
  • ・所属している組織に誇りが持てるか?

一般的な企業では、上記の4~5項目が“x”となり、メンタルヘルス問題発生企業では6~7項目が“x”とのことだ。ネッツトヨタ南国では、5割の社員がすべて“○”、1個だけ“x”が3割、2個“x”が2割だと言う。自分で考え、自ら学び、感動できる人材、いわゆる「自律型感動人間」の育成を目指して、現状を把握するために上記チェックリストの活用は意味あることと思う。

吉田松陰の教えを尊び経営に活かす都田建設蓬台社長!

前回のブログで紹介した、都田建設代表取締役蓬台浩明氏が出版された「吉田松陰の言葉に学ぶ生きざま」(現代書林、2015.1)。本の帯には「あなたの心に火をつける松陰の熱い言葉37」との言葉が躍る。

本の「はじめに」で、吉田松陰の素晴らしさを要約されている。その第一は「志を持つことの大切さ」と言う。蓬台氏自身も志を持つことの重要さに深く気付き、経営者を目指すことが出来たそうだ。「仕事」をあえて「志事」と呼ぶ。「武士道精神」にならい、いつでも志を持って命がけで事にあたるとの意味だ。そして、経営者になった今、松陰先生の教えである「天才教育」を意識して社員教育に力を入れている。「天才教育」を親や学校、経営者が行えば、子供達や社員はもっと才能を発揮して、やがてそれぞれが「志事」に燃えるような人材に育つと主張する。実際、都田建設では社員1人ひとりが自分の才能を発揮して活き活きと輝きながら働き、社長である蓬台氏から見てもほれぼれするほど一生懸命に必死に「志事」に燃えてくれていると言う。吉田松陰の「天才教育とは?」。

天の才を生ずる多けれども、才を成すこと難し(講孟箚記より)

蓬台氏なりに次のように訳されている。「どんな人間も一つや二つ、素晴らしい能力”天(の)才”を持っている。その素晴らしい能力を大切に育てていけば素晴らしい人間になる。これこそが人を育てる上で重要なのだ。

蓬台氏が支持する帝王学の師匠・徳山暉純先生曰く「吉田松陰とは生徒たちの先天的能力を引き出す”先生”であり”理解者”だった」と。「吉田松陰は名コーチだった」と蓬台氏は言う。

そのコーチングとは、まず相手としっかり話し合うことから始まる。身分や貧の差などは関係ない。生徒たちの目を見て心を探り、輝く才能や隠れた素質を見つけ出す。そして、本人にそのことを気付かせ、ともに磨き合っていく。周りにも教えていくーまさに相手主体の方法だ。尊敬して師と仰ぐ松陰先生に、ここまで大切にしてもらえば生徒たちの士気も上がるに決まっている。その気持ちこそ、吉田松陰先生の教えが生徒たちに深く浸透した最大の要因だ。蓬台氏は、親や教師、また社会の中で指導者になった場合、指導する者たちがいかに、相手の天才を引き出すか?これが重要ではないでしょうか?と言う。

師道を興さんとならば、妄りに人の師となるべからず、また妄りに人を師とすべからず。必ず真に教ふべきことありて師となり、真に学ぶべきことありて師とすべし(講孟箚記より)

【現代語訳】指導者の立場になった場合に、心得ておくべきことがあります。それが、軽い気持ちで人を指導してはいけないと言うことです。真剣に人を教えることが出来てこその指導者であり、組織の頂点に立つ指導者こそ、真剣に学び、学びながら指導するべきなのです。

いい上司は、弱みより強みに注目して、それを育てる人」こそ部下との信頼関係が醸成でき、都田建設のような”生き生きと輝きながら働ける職場作り”のための大切な要因ではないだろうか。「強みに注目せよ!」リーダーこそ肝に銘ずべきテーマだ。

吉田松陰は“人の長所を見抜く達人”!

前回のブログ(http://okinaka.jasipa.jp/archives/2515)で「いい上司は、弱みより強みに注目する人」と書いた。NHKの大河ドラマ「花燃ゆ」で話題の吉田松陰こそ、まさに「相手の長所を見抜く達人」だというのは、ジャーナリスト岡村繁雄氏。PRESIDENT Onlineの記事「勇気をもらえる吉田松陰の言葉」(http://president.jp/articles/-/14555)の記事に、アメリカ軍艦での密航に失敗して入れられた国元の野山獄での話が掲載されている。一癖も二癖もある投獄者に分け隔てなく接し、孟子の講義塾を開いた。中でも明倫館の元教授でひねくれ者として有名な富永有隣も松陰に心を開く姿はドラマの中でも印象に残っている。岡村氏の記事の中で作家童門冬二氏の言葉を引用して下記のように述べている。

罪人だけでなく、家族から厄介者扱いされ、ここに長く閉じ込められた人もいたのです、松陰は、そのような人物ですら長所を見つけて交誼を結び、それぞれの才能を引き出そうとしました。まさに“野山獄の太陽”だったのです。

岡村氏は

松陰は相手の長所を発見する勘がいいのかも知れない。彼が好んだ孟子の性善説の影響だとしても、人間の短所を見ないと言うのは、ある意味で途方もない楽天家だったのだろう。

と述べている。

以前、「「おもてなし経営」を実践する都田建設(http://okinaka.jasipa.jp/archives/135)」で紹介した蓬台浩明氏がこの1月に「吉田松陰に学ぶ本気の生きざま」という本を出版された(現代書林)。その前書きに「松陰先生は、潜在能力(天才)を引き出す名コーチだった!」とある。蓬台氏は、ドラーッカーにも傾注しつつ、吉田松陰の教えや生き様を学びつつ、社員1人ひとりが生き生きと働く会社を作り上げている。この話は別途ブログにUPすることにしたい。

冲中一郎