レジリエンス(逆境力)が道を開いた!羽生結弦

フィギュアスケートのグランプリファイナルでの羽生の復活は、世界に感動を与えた。「致知2015.1」に、国内外のビジネスマンにレジリエンス(逆境力)を指導、その意義を伝えられている久世浩司氏(ポジティブサイコロジースクール代表)の「逆境力が道をつくる」との記事の中に、ソチオリンピックでの浅田真央選手に関する次のような文章がある。

ソチ五倫の団体戦ショートプログラムでトリプルアクセルに失敗して三位、女子シングルスのショートプログラムも転倒を重ねて16位まで順位を落としました。「何もわからない」と放心状態でインタビューに答えていた浅田選手ですが、翌日に行われたフリーでは八度の3回転ジャンプを見事成功させ自己ベストを更新したのです。一度も転倒せず滑りきったのはレジリエンスの強みと言うほかありません。

羽生選手もグランプリ中国大会での不幸な事故で、グランプリ中国大会と日本でのNHK杯では不本意な成績で、何とかグランプリ出場を果たしたレベルだった。しかし、グランプリファイナルでは見事今シーズンベストの成績でダントツの優勝、昨年に続き2連覇を果たした。何という精神力、逆境力かと世界中が驚かされた

レジリエンスに関しては、当ブログ”逆境力(レジリエンス)=“折れない心”の育て方とは?(http://okinaka.jasipa.jp/archives/564)で、ある私立高校では、イチローや長友選手など逆境を乗り越えた生き方の勉強を通じて、逆境力をスキルとして身に付けるレジリエンス教育を実施していることを紹介した(NHKのクローズアップ現代)。と同時に、「レジリエンスの鍛え方」(久世浩司著、実業之日本社、2014.3)という本の紹介もした。

久世氏はP&Gに入社し、30代半ばマーケティングの責任者の時代に赴任先のシンガポールで商品の風評問題に直面、海外のメディアにも叩かれ売り上げが激減し、ただもがき苦しんでいた時期があったと言う。その時に出合ったのが、「ポジティブ心理学」という新しい学問に関する新聞記事だったそうだ。そして、その教室がシンガポールの自宅のすぐそばで、そこで出合ったポニウェル博士、そのワークショップが“レジリエンス”だった。ちなみに“ポジティブ心理学”(当ブログでも3回ほど紹介した。例えばhttp://okinaka.jasipa.jp/archives/365)は健常な精神状態の人をより元気に、幸せにする心理学。一方“レジリエンス”は、ストレスを抱えて落ち込んでいる人をまずは元の心の状態に戻した後、より高みに引き上げていくというもの。久世氏は「干天に慈雨」のことばそのままに、ポニウェル博士の言葉が心に吸収されていったと言う。その教えをコツコツと仕事の中で実践する中で、精神状態も安定し少しずつだが仕事も軌道に乗り、業績もV字回復するまでになった。その成果を実感し、仕事の悩みを抱く同世代のビジネスマンに広く知ってもらいたいとの思いが強くなり、40歳を前にP&Gを退職し、国内初のポジティブ心理学の社会人向けスクールを設立された。

久世氏は、スポーツ選手にも見るように、”武士道“を精神の基本としてきた日本は逆境から立ち上がる堅忍不抜、不屈の精神を美徳としてきたレジリエンスの国と言う。大地震に遭遇しても、その試練にくじけることなく悲しみを乗り越えて雄々しく前進し、意識せずともレジリエンスを発揮しているとも言う。仕事の中で、ストレスに打ち勝ち勇気ある一歩を踏み出せる人を応援していくために頑張りたいと締めくくる。失敗を素直に見つめなおし、さらに高みを目指す羽生選手、浅田選手の強さに感心するだけではなく、見習うべく”レジリエンス“にも興味を持ってもらいたい。

日本の豊かさは世界一!?

「ほんとに経済成長至上主義でいいのだろうか(http://okinaka.jasipa.jp/archives/1946)」との問題提起を11月にしたが、期せずしてGDP至上主義からの脱皮を訴える2種類の記事に遭遇した。一つは、「英エコノミスト誌のいまどき経済学(サウガト・ダッタ編・松本剛史訳、日本経済新聞社。2014/9)」、もう一つは「文芸春秋SPECIAL2015年季刊冬号」の「衝撃レポート これが日本の実力だ」(福島清彦氏)http://hon.bunshun.jp/articles/-/3003だ。

前者は、世界のエリートが読む英「エコノミスト」誌の経済学担当記者たちが、現実の経済問題を基に、経済学の基本と最前線を解説している。お二人の記事には、2008年にフランス大統領のニコラ・サルコジが設置した米コロンビア大学のジョセフ・E・ステイグリッツ教授(ノーベル賞受賞者)を委員長とする委員会の調査結果の話が出てくる。この報告書は「暮らしの質を測る」として邦訳されているそうだが、「GDP崇拝を捨てよう」と言う呼びかけだそうだ。リーマンショックを契機に、経済政策に関する議論が百出し、多くの通念に異が唱えられているようになったと言う。各国の人達が感じる豊かさ、幸福感はGDPのような財貨とサービスの価値のみでは表わすことが出来ず、「暮らしの質」すなわち、健康や医療、教育レベルなどGDPでは捉えられないものの評価をどうするかが焦点の議論だ。

前者では、2003年から2007年にかけての最高の経済実績を上げたのは米国か日本か?との問いを投げかける。一般の認識は、米国の平均実質GDP成長率が2.9%で日本の2.1%を大きく上回っていることから米国を挙げる。しかし、当時は米国の人口は1%の伸びを示していたが日本は2005年を契機に減り始めていた。そこで「一人あたりのGDP成長率で見ると、日本は年率2.1%で増加、米国は1.9%、ドイツは1.4%と日本がはるかに上回っている。すなわち、日本はGDPがゼロ成長でも人口が減っているため、平均的な市民の暮らしはよくなっている一方で。米国市民の暮らしは悪化していることになる。エコノミスト担当記者は、政府がなぜそれをGDPとともに発表しないのか?と疑問を呈する。日本は特に発表することが利益につながる筈で、当時の日本国内の「低迷している」との暗い雰囲気を払拭し、「近年の一人当たり所得はむしろ成長している」との報で、消費増につながったかもしれないと指摘する。

後者では、スティグリッツ教授の委員会報告を契機に、2012年国連が主要20か国を対象に新しい経済統計を発表したが、この経済統計「一人あたりの総合的な豊かさ」で日本は米国を抜いてダントツの一位となっていることを報じている。この指標は(1)国民の頭脳力である人的資本、(2)ヒトが生産した資本、(3)国民の信頼関係である社会関係資本、(4)農業や鉱物資源を中心とした天然資本に着目し、これこそが、国民の生活の豊かさと経済の持続性を表わすものだとしている。この4資本のうち、数値化の難しい(3)を除く3資本の資本残高を計算した結果(数値は2008年データを使用)だそうだ。特に日本が評価されたのは国民の教育水準や業務遂行能力である人的資本の水準の高さと、人が生産した資本、すなわち軽罪が高い生産性を維持するのに必要な企業設備や道路港湾などの諸設備の水準の高さと言う。

福島氏は、今後の日本の人口減少と高齢化を考えると、「GDP偏重のアベノミクス」のGDP2%目標達成は困難と予測する。そしてGDP目標未達成で構わないと主張する。GDPの成長とは時として相反する4資本への投資を促進することで、国民は豊かになれる(環境や教育への投資)。日本人はもっと自信を持っていい。「経済成長をし続けなければならない」という古い思い込みから自由になり、4資本の充実と言う、日本が既にトップを走る目標に向けて経済戦略を設定し直した時、日本経済は新たな未来を見出すだろうと締めている。既にEUでは2020年に向けての長期戦略で、GDPという言葉は使っていないと言う。資源有限の世界で各国間GDP競争からの転換をし、「足るを知る」世界を未来に向かって創っていくことを是非とも推進してほしい。その意味でも、一度福島氏の記事(文芸春秋)を読まれることを勧めたい。

「やせ」の女性、過去最多に!8人に1人(厚労省発表)

今日のニュース(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141210/k10013854501000.html)で、

女性で「やせ」の人(BMIが18.5未満)の割合が昨年は12・3%と8人に1人にあたり、1980年以降最も多くなったことが、9日公表された厚生労働省の国民健康・栄養調査でわかった。年代別に見ると、やせている人の割合が最も高いのは20代の女性で21.5%、次いで30代が17.6%、40代が11%だった。厚生労働省は「以前は20代の女性でやせている人が目立ったが、最近は30代や40代でも増えている。

とあった。

前回のブログ「お産を控えた女性はダイエットに注意」(http://okinaka.jasipa.jp/archives/2077)で警告を発したが、低出生体重児(出生体重が2,500g未満の赤ちゃん)問題が、ますます重要となることを現している。すなわち

胎児期子宮内で栄養不足が原因で小さく生まれた赤ちゃんは、少ない栄養でも生きぬいていける代謝系を持って生まれる。しかし、栄養豊富な現代生活の中ではその代謝系では適応出来なくなる 。その結果成人病のリスクがより高くなる、という(「成人病胎児期(発症)起源説」(バーカー説))。

厚生労働省の言うように「女性の方は、やせすぎにならないよう食事をしっかりとって適正な体重を維持するよう心がけてほしい」。特に出産を控えた方や妊婦の方は特に留意していただきたい。