天皇陛下、傘寿(80歳)のお誕生日

JOG-MAG NO.289(12.22)に「被災地を明るく変えた両陛下のお見舞い」との記事がある。両陛下の国民を思う気持ち、人間力が偲ばれる記事だ。東日本大震災48日目(4月27日)に南三陸市、仙台市を訪問された。それも地元への負担をかけないよう自衛隊航空機で日帰り往復するという強行軍だった(それまでは現地の救援活動に支障が出てはと、東京や埼玉県、千葉県、茨城県に避難した被災者のお見舞いに留めていた)。5月6日には岩手県の釜石市から宮古市、5月11日には福島県の福島市と相馬市をお見舞いされた。両陛下のお言葉に元気をもらった被災者の言葉がいくつも紹介されているが、仙台市長は「避難所で、被災した方が今のつらい現実を両陛下に訴えるのですが、その度に被災者の痛みをしっかり受け止められ、深い慈愛でお答えになるのです。今回の震災のような災害は、とても理不尽なものです。その理不尽なことが国民に起こった時に、ともにいて、慰めるということがどれほど大切なことかを深く思っていらっしゃるからこそ、一つひとつのおことばが国民に届くのだと思います。」と言う。ヘリポートから移動されるマイクロバスの車内でも、窓から被災者に挨拶されるために立ちっぱなしだったとか。この記事の最後に「両陛下はひたすらに国民の幸せと平和を願われている。それは親が無私の心で子供の幸せを願う「肉親の情」そのものである。その「肉親の情」を一身に受けているのが、「天皇皇后両陛下のもとの日本国民」の幸せである。」とある。ご高齢でのこの行動力にはほんとに頭が下がる。

「致知2013.7」に前侍従長の渡邉允氏の「天皇皇后両陛下にお仕えした十年半の日々」と題した記事がある。「朝から晩まで次々と性質の異なるお仕事に取り組まれており、それが1年を通して続くことになる」とそのお忙しい日々を語っている。例えば、午前中は宮中祭祀を執り行われた後、午後は宮殿に行かれて社会福祉関係者の拝謁や認証官任命式、その後、新しく着任した外国夫妻のためのお茶会、夜は御所で、近く訪問予定の国の歴史について学者の話をお聞きになるというようなお忙しさと言う。宮中祭祀は年間20回程度あるそうだが、例えば新嘗祭では夜6時から8時と夜11時から深夜1時までの4時間ずっと正座とか。避難所でも座っている被災者と話されるとき、床に膝をついて一人一人の被災者と話されている姿が印象的だ。決して物事を蔑ろにせず、いい加減になさらない姿勢(法律や条約の批准書などの認証行為でもすべてに目を通される)、非常に勤勉でいらっしゃる、そのような両陛下の生き方に多くを学ばせて頂いたと渡邉氏は言う。そして、陛下はいつ、いかなる時も国民の安全や幸福を第一にお考えになっていることを身を以て実感されたそうだ。

今日は「天皇誕生日」。JOG―MAG記事の最後に「天皇陛下は80歳の傘寿(さんじゅ)をお迎えになった。我々も「肉親の情」を持って、子供が親の長寿と健康を喜ぶように、お祝いしようではないか。それは日本という「我が家」の慶び事である。」と。心からお祝い申し上げたい。

トヨタの育て方(中経出版)

トヨタには、トヨタ自動車とリクルートグループによって2002年に設立されたコンサルティング会社「㈱OJTソリューションズ」と言う会社がある。この会社にはトヨタ在籍40年位以上のベテラン技術者が「トレーナー」となって、トヨタ時代の豊富な経験を活かしたOJTにより現場のコア人材を育て、変化に強い現場つくり、儲かる会社づくりを支援している。製造業、食品業、医薬品、金融など多彩な企業にそのサービスを提供している。そんなOJTソリュージョンズによる本が出版された。その名が「トヨタの育て方」(中経出版、2013.9)だ。主なものを紹介する。

部下が育っていないのは、リーダーや上司が部下を育てていないのが最大の原因と言い切る。トヨタの強さは、社員1人ひとりを「考える人材」へと育てるノウハウにあり、どの会社でも応用できるトヨタ流の人づくりノウハウを紹介している。

自分の“分身”を作れ

トヨタでは、真のリーダーはいわゆる「仕事の出来る人」ではない。真のリーダーとして評価されるのは、部下を伸ばすことができる人だ。部下を伸ばすコツは、仕事のプロセスを重視し、部下に自分で答えを見つける、いわゆる「考える人材」へと育てること。部下は「もらった答え」より「自分で見つけた答え」に達成感を覚える。自分の分身を育てた上で、上位の職制に上がっていく。多くの企業は、自分の実績をあげるのに精いっぱいで人を育てることをしない。

「良い品、良い考(かんがえ)」が育て方の基本

「良い品」は「利益」をつくり、「良い考」は「人」をつくる。「良い品」は「良い考」から生まれる。すなわち、一人一人が意識して考えないと、会社の利益は生まれないというわけ。人を育てる上で、考えること、そして考えさせることを重要視する。トヨタには「創意くふう提案制度」がある。約6万人の社員から年間70~80万件の提案が寄せられる。上司は各提案に対し、よく考えて答えなければならない。大変だが、この繰り返しが、部下との信頼関係醸成に役立っている。!人を育てるとは「モノの見方を伝える」こと名誉会長帳氏は「人材育成とは、価値観の伝承にあり、モノの見方を伝えること」と言う。「これがいいこと」「これが大切」ということをきっちり教えることが部下の成長につながる。部下が考える際の拠り所とするためにも。このようなものの見方を仕事のプロセスの中で教えていく。(「企業理念」や「基本方針」も、考えるための大きな拠り所と言える)

評価基準は、成果プラス「人望」

トヨタの管理職の人事評価要素には「人望」を評価する項目がある。あるトレーナーは「あの人のような仕事をしたい。あの人のように信頼できる人になりたい。そう素直に思わせる人」と言い、ある人は「自分の責任をわきまえていて、その責任を取ることを恐れない人」と言う。「人望」の評価項目がない会社でも、個人的に「人望」を意識することで、部下の反応も変わり、信頼関係も出来てくる。(「会社人生は“評判”で決まる」(http://jasipa.jp/blog-entry/7585)の“評判”と同じ)

「指示待ち人間」では人は育たない。自律的に自分で「考える人材」を育てられるかが、企業の成長の鍵を握ると言う考え方には大いに同感できる。目先の利益だけを追いかける上司は、部下の信頼を得られず、いずれ失速するのではないだろうか。トヨタの強さをあらためて認識できた。

凡人が勝つ唯一の道(どん底からトップ営業に這いあがった営業マン)

就職してから7年間、クビ寸前のダメ営業マンが一転して4年連続のトップ営業に。今は群馬県高崎で営業サポート・コンサルティングと言う会社を立ち上げ、大企業の営業研修や、全国初となる大学での営業の授業を行っている菊原智明氏。「致知2013.11」の致知随想に表題の記事を投稿している。

父親の影響で、営業に興味を持ち、「月に5台売れ」と言うトヨタより、「4カ月に1戸売ればいい」というトヨタホームに入社。しかし、とんだ思い違いで、トヨタ車はファンが多いがトヨタホームはファンがほとんどいない。7年間頑張ったが、営業成績は全くダメで結婚を契機に家を建てて転職しようと考えていた。自分の家だけは失敗したくないとの思いで様々な情報や資料を集めている時、ある資料に、家を建てたお客様の後悔事例が沢山載っていた(濃い色の床は傷が目立つ、コンセントはもっとつけておけばよかった・・・など)。これをヒントに、「お役立ち情報」としてこれらの情報をお客様に郵送したところ、お客さまからいい反応が返ってくるようになった。その時初めて営業が面白いと心の底から感じたと言う。

会社はいかにオプションをつけて高く売るかを営業マンに求める。菊原氏は、お客様の期待に応えたい一心で、会社の言いなりにならず、ある時は「エアコンは家電量販店で買いましょう。その方が安いですよ」と提案する。ひたすら目の前のお客様に提案していく。こうして、8年目に年間16棟の契約を頂き、以降4年間トップ営業となった。トークが得意でない菊原氏は、その後も営業レターを毎月お客様に送り続けたそうだ。メールや問い合わせには直ぐに返すことなど、小さなことの積み重ねと、「続けること」が凡人が勝つ唯一の道だと言う。コンサルティング会社の本業の傍ら、これまで30冊以上の本も出版されている。これも毎日1時間コツコツとか書き続けておられる成果だと言う。まさに「継続は力なり」。

先月のブログで「営業の秘訣は“お客さま第一”(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2013/11/11)」で同じ住宅販売の積水ハウス会長兼CEOの和田勇氏の事を紹介した。同じブログで、元ソニー生命の伝説の営業マン大坪氏の営業ノウハウも記した。まさに「営業はお客様のために」の気付きがあれば、お客さまからの信頼を得る方策はいくらでもあることを菊原氏の記事も物語っている。凄腕営業マンとトークでやりあっても勝ち目がないとあきらめるのではなく、自分を素直に見直して自分の出来ることを捜し、それをこつこつ粘り強くやっていけばトップ営業にもなれる。「お客さまのために」の視点さえ忘れなければ。