トヨタには、トヨタ自動車とリクルートグループによって2002年に設立されたコンサルティング会社「㈱OJTソリューションズ」と言う会社がある。この会社にはトヨタ在籍40年位以上のベテラン技術者が「トレーナー」となって、トヨタ時代の豊富な経験を活かしたOJTにより現場のコア人材を育て、変化に強い現場つくり、儲かる会社づくりを支援している。製造業、食品業、医薬品、金融など多彩な企業にそのサービスを提供している。そんなOJTソリュージョンズによる本が出版された。その名が「トヨタの育て方」(中経出版、2013.9)だ。主なものを紹介する。
部下が育っていないのは、リーダーや上司が部下を育てていないのが最大の原因と言い切る。トヨタの強さは、社員1人ひとりを「考える人材」へと育てるノウハウにあり、どの会社でも応用できるトヨタ流の人づくりノウハウを紹介している。
自分の“分身”を作れ
トヨタでは、真のリーダーはいわゆる「仕事の出来る人」ではない。真のリーダーとして評価されるのは、部下を伸ばすことができる人だ。部下を伸ばすコツは、仕事のプロセスを重視し、部下に自分で答えを見つける、いわゆる「考える人材」へと育てること。部下は「もらった答え」より「自分で見つけた答え」に達成感を覚える。自分の分身を育てた上で、上位の職制に上がっていく。多くの企業は、自分の実績をあげるのに精いっぱいで人を育てることをしない。
「良い品、良い考(かんがえ)」が育て方の基本
「良い品」は「利益」をつくり、「良い考」は「人」をつくる。「良い品」は「良い考」から生まれる。すなわち、一人一人が意識して考えないと、会社の利益は生まれないというわけ。人を育てる上で、考えること、そして考えさせることを重要視する。トヨタには「創意くふう提案制度」がある。約6万人の社員から年間70~80万件の提案が寄せられる。上司は各提案に対し、よく考えて答えなければならない。大変だが、この繰り返しが、部下との信頼関係醸成に役立っている。!人を育てるとは「モノの見方を伝える」こと名誉会長帳氏は「人材育成とは、価値観の伝承にあり、モノの見方を伝えること」と言う。「これがいいこと」「これが大切」ということをきっちり教えることが部下の成長につながる。部下が考える際の拠り所とするためにも。このようなものの見方を仕事のプロセスの中で教えていく。(「企業理念」や「基本方針」も、考えるための大きな拠り所と言える)
評価基準は、成果プラス「人望」
トヨタの管理職の人事評価要素には「人望」を評価する項目がある。あるトレーナーは「あの人のような仕事をしたい。あの人のように信頼できる人になりたい。そう素直に思わせる人」と言い、ある人は「自分の責任をわきまえていて、その責任を取ることを恐れない人」と言う。「人望」の評価項目がない会社でも、個人的に「人望」を意識することで、部下の反応も変わり、信頼関係も出来てくる。(「会社人生は“評判”で決まる」(http://jasipa.jp/blog-entry/7585)の“評判”と同じ)
「指示待ち人間」では人は育たない。自律的に自分で「考える人材」を育てられるかが、企業の成長の鍵を握ると言う考え方には大いに同感できる。目先の利益だけを追いかける上司は、部下の信頼を得られず、いずれ失速するのではないだろうか。トヨタの強さをあらためて認識できた。