「ありがとう」の反対語は「当たり前」???

最初、この話を聞いたとき、正直何を言っているのかよく理解できなかった。「致知4月号」の随想記事、蓮華院誕生寺内観研修所長(熊本)大山真弘氏の『「ありがとう」の反対語』の中に一文としてあった(「内観」については、ソフトバンク小久保氏の話として話題にしたhttp://jasipa.jp/blog-entry/8562)。同じ時期に、これもブログ(http://jasipa.jp/blog-entry/8564)で紹介した「社長のための‘お客さま第一’の会社のつくり方(小宮一慶著)」の中の一文に出てきた。

「ありがたい」を漢字で書くと「有る事難し」。日頃の生活を振り返っても、自分が今生きていること、毎日食事が出来ていること、家族といることなど、「当たり前」の事と思えば、何の感慨も出てこない。「ありがたい」と思う心は、それが「当たり前」ではないことに気付くことによって、起こる心と言える。しかしながら、悲しいことに我々人間は、あたり前と思っていることが、当たり前でなくなるまで、なかなか気づくことが出来なくなってしまっている。

「内観」では、まず母親についての記憶を辿りながら、「してもらったこと」「お返しをした事」「迷惑をかけた事」の三つの問いかけをする。一人静かに記憶を辿る内に、不思議なもので、心の奥にしまいこまれていた遠い日の思い出が一つ一つ蘇ってくると言う。まさに母親との関係で、「当たり前」と思って気にも留めなかったことが、「内観」によって、母親の深い恩に気付き、感謝の気持ちが沸々と湧いてくると言う。大山氏は、商社マンから転身、得度され、摂食障害やうつ病、アルコール依存症など、様々な問題を抱えた人たちを対象に、内観を実施されている。1週間も内観を続ければ、それまで他者を非難し、被害者意識に陥っていた方が、問題の原因が自分にあることに思い至るそうだ。正しいと思い込んでいた自分が、如何に人に迷惑をかけてきたか、にもかかわらず、如何に支えられて生きてきたかを悟り、感謝の念を抱くことで、楽に明るく生きられるようになると言う。まさに「当たり前」と思っていたことを「有ること難し」と気づくことによって、感謝の念が湧き出し、気持ちを楽にできると言う事だろう。

小宮氏は、自分の経営するコンサル会社の社員には、電話がかかると、まずは「ありがとうございます。小宮コンサルタンツです」と言うように指導しているそうだ。これは、17年前3人で創業した時、ほとんどかかってこない中、電話がかかってきた時の有りがたさが忘れられないからだと言う。

身近な人が亡くなった時、「生前にもっとよくしてあげればよかった」と後悔する人が多いのではなかろうか。「ありがとう」の反対語は「あたり前」。このことを意識しながら、日々の何気ないことにも感謝の心を忘れないようにしたい。

IT業界の職場の実態調査結果、ほんと!?

この2月当ブログにUPした「助けて!組織風土改革にすがるIT業界(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2013/2/5)」の続編版が3月18日のITproに掲載されていた(http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20130308/462061/?mle)。2月は、IT業界の組織風土に関するアンケート依頼が主だったが、その後セミナーなどでのアンケート結果と合せて971人の回答結果が出た、その集計結果である。この3月末発売の「日経情報ストラテジー5月号」に特集され、スコラ・コンサルトの柴田昌治氏とNTTデータ相談役の山下徹氏の対談記事もあると言う。

アンケートの設問を下記する。

  • Q1.同じ部門の社員同士であっても心に壁があり、会話や協力が出来ていない。同僚の事を、実はよく知らない
  • Q2.顧客(又はシステム利用部門)の厳しい要求に対応するため多忙を極め、周囲と相談したり、アドバイスしあう機会が大幅に減っている
  • Q3.メンタルヘルス不調の増加など、職場で何らかの問題が発生した場合、それを解決するためのチームを立ち上げたり、新たなルール・制度を設けるなど具体的な改善策を打っている
  • Q4.プロジェクトマネージメントの導入でスケジュールやコストの管理は厳しくなったものの、トラブルが発生した際の打開策は「長時間残業」であり、職場は疲弊しきっている
  • Q5.経営トップは「ソリューション提案力の強化」を掲げているが、そのために必要な人材育成策が整備されておらず、自身のスキル向上に不安を覚える
  • Q6.そもそも会社が「目指す姿」が見えない。会社の存在価値や仕事のやりがいを考えることをあきらめ、会社と一定の距離を置き、目の前の仕事をこなす日々が続いている

上記設問に対して「はい」と答えた比率が、Q1:48%、Q2:50%、Q3:26%、Q4:66%、Q5:74%、Q6:61%となっている。比率が想像以上に高い!母数が少ないので、何処までの信憑性があるのか分からないが、ITproの記事を読んだり、セミナーを受講している方がたはそれなりに問題意識がある人達と考えれば、ある程度の実態を表わしているとも考えられるのではなかろうか?

IT業界の置かれた立場を考えると、やはり由々しき問題である。こんな実態では、「お客様にとっていい仕事」が出来るわけがない。ITpro川俣記者は「職場全体の問題であって、誰かが変えてくれるのを待つだけではなく、自分なら何が出来るかを考え、小さなことでも変えてみるのが必要」と奮起を促している。特にQ5,Q6に関しては、理念を掲げるだけではなく、それを実行に移す施策が全社員に実感として受け止められる形に持っていくことが経営層に求められる。働く人たちの「幸せとは」を、真剣にみんなで考えて見る必要がありそうだ。そうでなければ、IT業界から優秀な人たちが逃げていく。

国に頼らず景観守る独自防潮堤(浜松中田島砂丘)

浜松駅からバスで15分、ウミガメが産卵に訪れる日本三大砂丘中田島砂丘。南海トラフ巨大地震では高さ15メートルの津波が押し寄せると言うのが静岡県の想定だ。国の補助金を当てにして進められる気仙沼市では、高さ9.8メートル、幅45メートル、長さ約1キロのコンクリート製巨大防潮堤の建設を計画中だ。が、中田島砂丘でこんな巨大なコンクリート製の防潮堤を築けば、美しい砂浜が覆い尽くされてしまう。そこで、天竜川河口までの17.5kmを保安林に土を盛って高さ十数メートルにかさ上げし、防潮堤の役割を担わせることにした。(毎日新聞夕刊 2013.3.19 http://mainichi.jp/feature/news/20130319dde012040015000c.htmlより)

防潮堤は国から原則2分の一(災害復旧事業ならほぼ全額補助)の補助金が出るが、一昨年策定されたルールで縛られ、例えば高さも浜松の例では7メートルでコンクリート製、3年以内完成でないと補助は出ない。なぜ浜松市では国の基準に縛られずにこんな決断が出来たのだろうか?

昨年6月のニュースで『「防潮堤つくって」静岡県に300億円寄付、一条工務店』(http://www.asahi.com/national/update/0612/TKY201206120004.html)との情報があった。県の担当課長は言う。「民間企業から大口寄付をいただき、地元の要望に沿った独自の立案が可能になったためです」と。一条工務店の宮地社長は「“万里の長城”と言われた岩手県田老町の堤防が津波で破壊されたことにショックを受けた。限界を超えた力にはコンクリートは弱い。南海トラフ巨大地震に対応するには。コンクリートよりも盛り土構造が優れている」と言う。

一条工務店は、ブログでも過去2回紹介した。一度は「お客様よりお客様の家づくりに熱心であろう」(http://jasipa.jp/blog-entry/8125)とまさに「お客様視点での家つくり」を行い、地方都市においてグループで2400億円の売り上げを上げる成長企業になっていることを、2回目は、一般住宅に太陽光発電をコスト面で採用しやすくした「夢発電システム」で第9回エコプロダクツ大賞国土交通大臣賞を受賞した(http://jasipa.jp/blog-entry/8380)ことの紹介だ。メガソーラー建設にも触れた。今回の寄付に関しても、「ここまで大きくなれたのは地元の支援のたまもの。当社創業の地へ恩返ししたい」と言われる。静岡県の川勝知事は「地元へ恩返ししたいという気持ちに感じ入った。出来た堤防には“一条堤”と呼んで謝意を表したい」と言う。

一条工務店には感動する。が、毎日新聞の記者は言う。補助金をもらうために、住民の自主性を圧殺してまで工事を急ぐ被災地行政の悲しいゆがみを指摘する。どうして、「国は金を出すが、具体策は地方自治体に任せる」とならないのだろう。TPP論議で阿部総理は、「日本の農村風景は日本の心。絶対に残す」と明言している。日本のすばらしい四季を彩る山、川、海の景観を守るためには、民間に頼るしかないというのではあまりにも寂しい。

頑張れ!一条工務店!