「PHP Business Review松下幸之助塾2013.3・4月号」特集‘商いの原点’の中の記事の紹介だ。記事のリード文「全国チェーンによる市場寡占が進みがちな業界にあって、独自の商売観に徹して、県内カメラ販売15年連続ナンバー1、カメラ専門店業界売上15年北関東ナンバー1、写真品質コンテスト15年連続優秀賞受賞と、実績を伸ばす栃木県のサトーカメラ。その成功は、一つにはアナログからデジタルへという大転換に適応し、地域に密着して顧客の心をとらえたこと、そして二つには、社員に商売の醍醐味を教え込んだところにある。鋭い感性を武器にこの20年、同店のマーケティングを牽引してきた佐藤勝人専務にその商売哲学を聞く」。利益率は40%と言う。
「モノを買う喜び」では、ネットが勝る世の中。サトーカメラは、何のためにカメラを買うかを追求した結果、企業理念は
地域のありとあらゆる人々に想い出を写真に撮る喜び、みんなで写真を見る幸せ、後世に写真を残す感動を提供します
マニア的に自分でカメラを使いこなしている人はせいぜい2,3割。残りの7,8割の人は何をどうしていいのか分からず悩んでいる。この人たちの手助けをしたいと考えた。メーカ主導型の展示・販売をやめ、店内はお客様の撮った写真や、お客様が知りたい情報を書いたPOPなどで壁は一杯。携帯電話のカメラで撮った高画質のプリントを、最適なペーパーと最高機種の焼き付けマシンで、Sサイズなんと1枚10円で提供。お客様がプリントする機械の前には、アソシエイト(スタッフ)が寄り添い話しかける。そのそばのソファにはカメラの手入れをするお客様が・・・。1店舗に1日平均約300人のお客様が来られる。1990年にクレジットカード付きのポイントカードを日本で最初に導入したが、「お客様に本当に還元すべきはサービスだ」と、カード会社の撤退に合わせて廃止。顧客管理が出来なくなると不安視する人もいたが、アソシエイト1人が300人位の名前を覚え、以前より積極的に会話をするようになり全く問題なし。お客さまとの行事も昔は、事前に準備し、お客様に事前にお知らせしてと言う風に準備にかなり時間をかけたが、SNSを活用して『こんなイベントをやります』と書き込むとすぐにその日のうちにお客様が来てくれる。
モノに満ち足りたお客様が何を求められているのか?店がリードしてお客様を巻き込むと言うより、お客様自らが主役になって情報交換しながらくつろぐ空間を用意する。サトーカメラの各店舗では夕方になると近所の常連さんたちが店にたまって、写真を見せあったり、アソシエイトとおしゃべりしながら何時間も平気で店にいる。
価格競争の「ネット販売」に対して、「店頭販売」の付加価値サービスとは?と言う問いの答えがサトーカメラの事例にあると思う。佐藤専務の頭にあるのは、生産性や効率追求の企業の論理ではなく、お客様のためとの強い思いだ。