IT業界を左右する「女性力」

10月4日のITProに標記タイトルの記事(by日経コンピュータ市嶋洋平)があった。http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20121003/427161/?ml「IT業界における指導的立場の女性の比率を30%まで引き上げる」、JISA(情報サービス産業協会)が、ダイバーシティへの取り組みに本腰を入れ始めた、とある。管理職や標準レベル5以上の高度な専門職といったポジションを想定しての比率だ。

JISAでは、9月3日に、これに賛同する企業20社(NTTデータ、NRI、ITH,SCSK,富士通FIP,NSDなど)を公表し、今後も賛同する企業を募集している。この施策は、平成22年12月に閣議決定した「第三次男女共同参画基本計画」を受けての動きでもあるが、市嶋氏は単なる企業イメージ向上のためというより、日本のIT業界にとっては、女性を活用する仕組みや風土がないと発展は望めないと言う。あるITベンダーの幹部は「新卒面接では、試験などどれを見ても女子学生の方が優秀。入社後もプログラミングのセンスがいいことが多い」と苦笑したそうだ。と共に市嶋氏は、ITの適用領域が休息に拡大し、従来の基幹システムから、ビッグデータ本格活用に見るように、新たな成長の推進力となる「フロントオフィス」へと急拡大している中、一般消費財のECサイトの構築のような分野で女性の視点が必要になってくると言う。

JISAでは「女性活躍の推進はダイバーシティの試金石であり、人材面の構造改革であるとの認識のもとに、情報サービス産業が日本で最も女性が活躍する産業を目指すことを契機に、さまざまな意味における自主改革を促すことを狙いとしている」としている。

世界では女性の経営者が当たり前になってきている。IBM,HPの二大ITベンダーのトップは女性であり、フェースブック、ヤフーのナンバー2も女性だ。IBMのロメッティCEOは「企業はグローバルに製品やサービスを売り込む時代だ。そのために世界の企業間では、人材をめぐる競争も始まっている。企業自体が男女の性別や人種、国籍、アイディアなど様々な違いを受け入れる必要がある」と、日本人の「なぜダーバーシティが必要か」の質問に対して、欧米では当たり前の事ということを強調した。

来週開かれる[ITpro EXPO 2012]でリコーITソリューションズ取締役・会長執行役員 情報サービス産業協会{JISA)副会長國井 秀子氏(当ブログでも紹介http://jasipa.jp/blog-entry/7389)が、10月10日「情報サービス産業におけるイノベーションと女性の活躍」というテーマで講演が予定されている。「受託開発が多い日本の情報サービス産業ではこれまでイノベーションはあまり強調されなかったが、今やITは変革のキーである。そこで、イノベーション推進に向けて重要な施策である人材の多様性、特に女性の活躍や、新たな働き方について述べる」とある。

育児支援や休業・復職などの、女性が働きやすい職場環境つくりを急ぐことになると思うが、この目標実現のためには、国の風土や女性の意識改革はもちろんのこと、男性も変わらねばならないと思う。日本の行く末を考えると必然の方向性と思う。

選ばれる営業、捨てられる営業

各種業界のバイヤー(購買部門)の声を基に現代の営業マンに求められる「営業力」を解説した「選ばれる営業、捨てられる営業」(勝見明著・日本経済新聞社)の本が8月に出版されている(TOPPOINT10月号より)。この本で言う「バイヤー」は、我々の言う「お客様」、それも「受注判断の出来るお客様」ととらえることが出来る。

勝見氏は次の5つの能力が求められていると言う。

  • ①顧客シミュレーション力:激変する事業環境の中で、バイヤーは複雑で高度な課題に直面している。そんな中で、バイヤーの立場となって考える「顧客シミュレーション力」がまず求められる。バイヤーの立場の人に力を貸すことが出来れば、バイヤーはお客の中で地位を高めることが出来、業者とより親密な関係に発展できる可能性が拓ける。バイヤーは顧客選択の責任を負っており、例えば業者が納期遅れを起こした時、社内で先頭に立って弁明をしなければならない立場にある。営業マンに対して、バイヤーは自社での立場を考え、その思いを共有してほしいと言う。「マニュアル通りに商品をただ紹介する営業マンが多い中、バイヤーの思いを知ろうとして、ストーリー立てして説明しようとする営業マンには、いろいろな内部事情もついつい話してしまう。」と打ち明ける。つまりは、相手に対する「思いやり」と「気配り」があれば顧客シミュレーション力も高まり、顧客シミュレーション力の高い営業マンに対しては心を開き、貴重な本音ベースの情報を提供してくれる。
  • ②社内調整力:営業マンは売るだけが仕事ではなく、売ったものをお客様の期待に添うように実行に移すことが重要だ。その実行に対する自信は、実行のための最善の体制を作るための社内調整力がベースとなる。バイヤーは商品を決める際に、この力も見ていると言う。この力は、営業マンの自分が背負っている商品に対する強い思い入れでわかるそうだ。
  • ③共感力:お客様の「よりよくありたい」との課題を共有し、相手の課題を自分のものとして感じ取ることが出来るようになることが、誰にも負けない熱意を生み出し、顧客を感動させる原動力となる。注文を逸しても、商品の問題にせず、お客様のニーズをしっかり理解できなかったことを反省し、次に活かすことも重要。
  • ④基本力:約束した時間を守る、相手の興味を引くプレゼンをする、など基本中の基本を確実に実行できる力。
  • ⑤情報力:市場の情報を収集し、それに付加価値をつけて発信する力。「お客様の役に立ちたい」との思いを仕事の中心に据えることによって、視野が広がり、感度の高い情報力が身に着く。

我々IT業界にも通用する話、特にIT業界の構造的問題とも言われる「顧客従属型(顧客から言われるままに仕事をする)」から脱皮し、「顧客パートナー型(顧客と一体となって提案・実行できる)」となるための考え方として大いに参考になるもと思う。

儲かる会社のすごい仕掛け

小林製薬やサイバーエージェントのような儲かる会社には「社員が寝る間も惜しんでアイデアを考える仕組みがある」と言う。「NEWプロジェクトの作り方」(伊庭正康著、フォレスト出版)の要旨がTOPPOINT10月号に紹介されていた。

例えば小林製薬では年間40万件を超えるアイデアが社員から寄せられる。仮にその年のヒット製品が10個だとすると、99.9%は無駄なアイデアになる計算だ。99.9%のアイデアが捨て案になる現実の中で、社員たちが喜んでアイデアを出し続けているところがすごい。社員たちが喜んで知恵を出し合う、そんな「すごい仕掛け」があると言う。

最に紹介する仕掛けは、社内に「コミューン(共同体)」を作ること。人材スカウト業のレイスが行った仕掛けは、里親制度。入社3年目の社員を「里親」に認定し、その下に入社2年目の社員を「里兄、里姉」として置き、そして新人を「里子」としたバーチャルな家族をつくる。1:1のメンター制度ではなくコミューンにし、毎月1回は「里家家族会」を開く。費用は会社負担。「見守ってくれている感じがありがたい」と評判で、離職率が30%から2.7%に下がったそうだ。昔と違って、上司がしばしば変わる中で、だれが自分を見てくれているのか、だれに相談していいのか分からないような状況下に置かれることで元気を無くする社員も多いのではなかろうか。

儲かる会社は、新規顧客を増やし、既存客のリピート率を高めながらも安売りはしない、そんな「三律背反」するシナリオを実現させている。ある結婚式場では「お客様の希望をかなえたい」という気持ちを社員全員が持ち、「入院中のお母さんに病院で晴れ姿を見せるために病院で結婚式を挙げる」という判断は社員が行っても構わない制度にして、10年弱で挙式数を倍以上に増やした。リッツカールトンやサウスウェスト航空も同じく事前承認は必要ない。お客様が最も感動するサービスは、社員の自律的な行動から生まれる。お客様の感動が「三律背反」のシナリオを実現させる原動力となる。

他にも「危機感」は事実を見せて伝えよ、プロジェクトには本気のメンバーを選択せよ、コンテスト方式で全員を巻き込め、など成功企業の実例を紹介している。

企業理念や、経営方針が社員に行きわたると、儲かる仕掛け(顧客に喜んで貰える仕掛け?)はいろんなバリエーションを持って展開でき、成長スパイラルを現実のものと出来る。