京大野球「あるもの」磨き進化?

今朝の日経スポーツ欄の「選球眼」というコラムにスポーツライターの浜田昭八氏が珍しく京都大学の野球部のことを書いている。出だしが「今、京大の野球が面白い」。しかし、今年の春季リーグで連敗記録をどこまで伸ばすかと言われた弱体野球部が日経に取り上げられているので驚いた次第。早速インターネットで調べると、この5月に関西大学に1:0で完封勝利し、連敗記録が60でストップしたとの記事があった。22期連続最下位との記事もある。しかし、浜田氏のコラムでは、今年は負けても僅差の敗戦で、昔の敗戦とは違い期待できると言う。確かに9月から始まった秋季リーグでは、再度関学に4:1で勝ち、立命には2試合0:1の僅差で負け、同大とは1:1の引き分け。確かに昔の京大とは違う!

浜田氏の目で見ても、ピッチャー田中(兵庫・白陵)や捕手内外野の守備は安定し、牽制も絶品という。なぜこうも変わったのか?3年前から、元阪神の仲田幸司投手を育て、沖縄興南高校を甲子園の常連校に育て上げた比屋根吉信氏が監督に就任しているそうだ。2010年春夏連覇をした興南高校の我喜屋監督を当ブログで紹介した(http://jasipa.jp/blog-entry/6187) が、比屋根氏は1976~1986年、沖縄県の高校として初めて興南高校を準決勝に進めた監督として評判をとった。

何をやったか?高校球児を積極的にスカウトできる5私大に対して、京大の部員は少ないが「ないものねだりはしない。“あるもの探し”です」と、少ない部員の中で見つけた原石を磨く。そして「年功序列では勝てない」と1-2年生を積極的に抜擢した。改革には痛みが伴う。上級生になると出場の機会が巡ってくる空気が一変し、当然のように競争が激化し、退部を考える4年生も出たそうだ。しかしここからが比屋根氏の素晴らしいところ。2日間、延べ10時間に及ぶ4年生同士の話し合いで思い止まらせた。秋季リーグ前に就任した主将は「下級生がのびのびプレーできるのは、4年生のおかげ」というまでにチームの雰囲気は変わったそうだ。「善戦を褒められるぐらいで、京大勢はもう満足しない」でコラムを締めている。

成果はこれからだが、アメリカンフットボールの水野監督といい(http://jasipa.jp/blog-entry/7277) 指導者によってこれほどまでに違ってくるのに驚く。私が在学中、高校の同窓生が野球部の捕手をやっていたが、東大との定期戦でも、コテンパンにやられる姿しかみられなかった(東京6大学で最下位が定位置の東大でも強い!)。企業も、指導者次第で大きく成果が左右されるのは同じだと思われる。人が唯一の価値源泉のIT業界も、技術だけではなく、社員のマインドを如何に持たせるかが、会社の帰趨を握ると言えるのではなかろうか?まさに白鵬の言う「心8割、技・体2割」(http://jasipa.jp/blog-entry/7998)に通じる話だ。