「日本の課題2014」カテゴリーアーカイブ

「漁師の魚。命かけて売る」女性の革新力!

今朝(7月13日)の日経朝刊1面の連載「革新力~変える意志⑤」の漁船の前に立つ勇壮な女性の写真が目を引いた。山口県萩市の大島で漁業を甦らせた28歳「萩大島船団丸」の坪内知佳代表だ。漁師60人を束ねて、水揚げした魚を梱包し、市場を通さず約150店の料理店に直送する。武器はスマートフォンで、対話アプリのLINEで漁船と連絡を取り、板前に取れた魚を写真付きで送る。「タイと味を送って」と坪内のスマ穂には顧客の依頼が絶えない。倒産寸前の漁師団から再建を頼まれ、漁師の経験はないが、コンサルタント経験を活かし料理店に飛び込み営業を重ねながら、地元漁協や、「面倒くさい」と反発する漁師を説得。鮮度と言う付加価値で、市価の2~3倍で卸すが評判はいい。行動力をバネにブランド魚を直送する新市場を開拓した。

「致知2014・7」にも、坪内さんへのインタビュー記事「ここに日本が守るべきものがある~私が萩で見つけた人生の花~」がある。結婚を機に山口県へ、そして離婚後萩市で翻訳業やコンサルタント業に従事。中途半端には出来ない性格から、いろんな業種・企業の相談にのめりこんでいる時、相談にのっていた萩大島船団丸に参画する船団長から相談をうけたそうだ。漁業の苦境を乗りきるには「一次産業の六次産業化、すなわち直販出荷化しかない」として、漁業関係者や、行政機関との折衝を進めた。しかし、荒くれ者が多い漁師の説得もなかなか進まず、反発者も多い中、「皆が幸せになるにはこの道しかない」と顧客の開拓や、全国への宣伝などに自ら行動しているうちに皆がついてきてくれるようになったと言う。基本は「本気でぶつかる」「とことん話し合う」こと。平成24年に「萩大島船団丸」の代表に平成24年に就き、1年で黒字化させたそうだ。今では、全国の漁労関係者や養殖事業の方々などが視察に来る。坪内氏は「日本の水産業を変え、業界の意識を変えていきたい」と意気込む。

政府も成長戦略の大きな目玉として「女性の戦力化」を挙げている。しかし、日本には都議会のやじ問題でも顕在化しているが、企業においても女性を特別扱いしている風土はあると思う。諸外国に比してまだ少ないとは思うが、日本でも女性の活躍が目立ち始めている。女性の能力を引き出すには、政府、企業一体となった本気の取り組みが求められている。

今一度日本人の自信を取り戻そう

毎年内閣府でとりまとめ、国会に報告することが義務付けられている「子ども・若者白書」が6月に公表されている(内閣府)。この中に、日本を含めた7カ国の満13~29歳の若者を対象とした意識調査(我が国と諸外国の若者の意識に関する調査(平成25年度))の結果が報告されている(韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン)。この調査によると、「自国人であることの誇り」は日本が70%で4位で、「自国のために役立つことをしたい」は55%でトップだった、が、「自分自身に満足しているか」は日本46%で最下位、他国平均は7割を超える。「自分の将来に明るい希望を持っている」(52%)、「上手くいくかわからない事にも意欲的に取り組む」(52%)、「社会における問題に関与したい」(44%)、「私参加により、変えてほしい社会事象が少し変えられるかもしれない」(30%)、何れも最下位だ。日本人であることの誇りが自分自身への満足を大きく下回るという日本だけの傾向をどう考えるか?

朝日新聞の社説(6.17)では、社会の気分として「どうせ・・・」の基調が漂っているのが影響していると推測している。高望みしなければ失望せずに済む。低成長時代に身についた「幸せな生き方」とも言えるとしている。その風潮が子供たちにも影響を与えていると考えると、大人が率先して社会の中での役割を担い、行動に移し、その風潮を変えなければ変わらない。

一方では、このブログでも書いた「自己肯定感」を如何に植え付けるかも重要な教育のポイントとなるのではなかろうか(http://okinaka.jasipa.jp/archives/69)。ブログの記事の一部を紹介する。

「自己肯定感」と言う言葉は心理学の用語で「自分の事が好きですか?」ということだそうです。この「自分を認める」ことが人が成長するために必要な要素で、これがあれば人は自然に成長するとの事です。このことがNHK地方局で放送されてから一挙に世間の関心が集まり、この活動が全国に広がり始めたそうです。インターネットで「パーソナルポートフォリオ」で検索すると岩堀さん(福井県鯖江市の小学校教諭)のページも出てきます。

明星大学の高橋史朗教授が著書「日本が二度と立ち上がれないようにアメリカが占領期に行ったこと」の出版記念講演会(致知主催の今年4月の読者の集い)でのお話を紹介する。日本青年研究所の調査結果で「自分はダメな人間だと思うか」という質問に対して、日本の高校生は66%がYes(アメリカ22%、中国13%、韓国45%)だったそうだ。終戦後のアメリカの占領政策は「日本が二度とアメリカに刃向わないようにする」ことで、「修身・歴史・地理」を教育課程から外し、徹底的に武士道はじめ日本が育んできた文化を締め出した(罪意識扶植計画ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラムWGIP=戦争についての罪意識を日本人に植え付ける宣伝計画) http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/entry/6333。その影響が大きいと高橋氏は言う。私はサンフランシスコ平和条約で日本が主権を回復した翌年小学校に入学したが、音楽の教科書に「君が代」はなかったと記憶している(文科省が削除)。子供たちの自信を回復させるためには、まず大人がしっかりと日本の歴史や文化を学んで、子供の範となることが大事と高橋氏は締めくくる。

子どもたちの自信を取り戻すために、まさに「戦後レジーム(体制)からの脱却」に向けて、政府と国民一体となって取り組むべき課題が多いように思う。

問題「先送り」で日本の破局は不可避?

「最後は金目でしょ」と言った石原環境大臣の発言が批判を浴びた。放射性廃棄物の処分場問題での発言だ。「最終処分場は30年後に県外に移設する」との条件でとりあえず大熊町、双葉町を処分場にすることで政府は進めている。住民説明会で住民は「30年後の県外移設をどうやって約束できるのか?」と詰め寄っているが、納得性のある説明は出来る筈がない。問題先送りの典型だ。

財政再建で、増税や歳出カットをいまやるべきか?地球温暖化防止のために温暖化ガスの排出を今、抑制すべきか?なども同じ問題だが、「世代を超えた超長期の問題」で、「現在か将来か、どちらの世代がやるべきか」が争点の核心だと言うのは、日経21面「大機小機」のコラム氏(風都氏)だ。先月5月16日に「世代間協調の不可能性」と題したコラムが印象に残った。「社会保障と税の一体改革」もなかなか手がつかず、次世代に禍根を残すことになりそうだが、今先送りした問題は、次世代でも先送りすることになり、結局は破たん不可避となる可能性が大きいと警告を発する。その論理は「課題に取り組む世代に何らかの利益、インセンティブが無ければ先送りする」という、経済学者サミュエルソンが1958年に出した「世代重複モデル」の論文で論じた根拠だ。つまり、世代を超えるコミットメントが必要とされるプロジェクトは、利己的合理的な人間からなる社会では実行できないのだ。これをコラム氏は「世代間協調の不可能性」命題と呼んでいる。

しかし、これでは我々を含む現在あるいは、これまでの世代のわがままが故に、いずれ日本沈没、世界沈没を待つしかないことになってしまう。温室効果ガス削減目標も各国の思惑で決まらない。昨年11月のCOP19では日本は原発停止の関係もあり25%目標を8%に修正して提示し各国から総批判を受けた。「デフレ脱却」の為との大義で公共事業などに大判ふるまいをする。ほんとに経済成長一辺倒がはたしていいのだろうか?国を統治する国会議員、官僚などはすべて「利己的合理的な人間」と思いたくはないが、将来を考えた積極的な意見が表に出てこない現実をどう考えればいいのだろうか?議員定数削減にしても全く前に進まない。真剣に次世代を含めて行く末を真剣に考え、行動を起こすことを期待したいと思うが、東京都議会のヤジに見るような、人間性をも疑いたくなる議員集団の事実を目のあたりにしてしまうとほんとに地球の将来、日本の将来が心配になってくる。どうすればいいのか、名案は浮かばないが、我々は声を上げること、そして「真の議員」を見分けて選ぶことしかないのだろうか。

昨日(1日)集団的自衛権容認を閣議決定した。「1強他弱」の政治構造の中で、国の安全保障体制を大きく変革する大事なテーマも、政権はパフォーマンスだけで、受けの良さそうな内容だけを説明し、リスクを含めた全体像を丁寧に国民に説明する事も無く、与党内部で決めてしまおうとしている。まさに「先送り」というより「害送り」にならぬよう祈るばかりだ。民主党政権のひどさが今の1強多弱の状態を招いてしまったと思うが、この怖さを深く心に刻み、今後の行動につなげていくしかない。孫、曾孫と続く将来において、現在の人達に対する恨み節ではなく、感謝の気持ちを持ってもらえるような施策が今こそ、求められているのではないだろうか?次の選挙までにはよく考えたい。