「健康・老化」カテゴリーアーカイブ

脳は鍛えることが出来る?(ブレインフィットネス)

身体と同じように、脳も鍛えることが出来るとの説が2007年前後を転換点に言われ始めたそうだ。「脳トレ」などの言葉もその頃からよく使われるようになったと言う。昨年「脳を最適化する~ブレインフィットネス完全ガイド~」(アルバロ・フェルナンデス他共著、山田雅久訳・CCCメディアハウス刊・2015.11)が出版された。著者は、脳の健康に関する最新情報を調査し発信するマーケットリサーチ会社「シャープブレインズ」の最高経営者や最高科学顧問、そして認知心理学博士だ。

脳には約1000億もの神経細胞(ニューロン)が存在する。ニューロンには生体電気的な情報を扱う特殊な力があり、この情報を「シナプス」という連結部分を通じて他のニューロンへ伝える。このニューロンによるネットワークの形成により脳は機能する。ニューロンネットワークに繰り返し刺激を与えることによって、その脳機能が最適化できるとの説から生まれたのが「ブレインフィットネス」だ。そして「ブレインフィットネス」の例を挙げている。

  • 身体エクササイズ(有酸素運動)はニューロン間のつながりを増やし、脳の容量を増加させる。30~60分の有酸素運動を最低週3回行うことを推奨している。その強度は、心拍数と呼吸回数が上る位がいい(散歩程度だけでは十分と言えない)。
  • 食習慣も認知力に関して長期にわたる影響を与える。そして「地中海食」を薦める。野菜、フルーツ、不飽和脂肪酸(オリーブオイル)などを多く、乳製品、肉、飽和脂肪酸は少なく、魚は適度に食べ、適度のアルコールを適度に摂る食を言う。
  • 学習や新しい活動へのチャレンジが脳を強化する。何事においても上達すると脳への刺激が弱くなるため、常にチャレンジの度合いを挙げていくことが必要(クロスワードや数独は脳に対する効果はあまりない)。
  • 学習や仕事が脳を守る。過去に従事した仕事の複雑さの度合いが、リタイア後の脳の機能性に影響し続ける。
  • 読書は認知症のリスクを減らすが、テレビを見ることはリスクを増やす。
  • ・中年期から晩年期における社会的つながりが、認知力低下を減らす。そのため、ボランティアや社会的グループ活動などへの参画は脳の機能低下に効果がある。
  • ストレス・コントロールを生活の中に組み入れることも重要。運動や、リラクゼーション(瞑想、太極拳、ヨガ、散歩など)、ユーモアや笑いも効果がある。

筆者は言う。「ブレインフィットネスに“特効薬”はない。脳と脳科学がどう作用しあうかを理解しながら、食事、有酸素運動、ストレス管理、メンタルへの刺激、社会的交流など、脳を健康にするライフスタイルの構築に取り掛かることが出来る。それが基本だ。」と。

最近各種メディアでも、認知症に関する放映や記事が目立つようになってきている。私も含めて多くの方が「自分は関係ない」とは言えない現状がある。このような調査研究結果も参考にしながら、自らのライフスタイルを考えることも大いに意味があると思える。

毎日を楽しめることが年齢に負けない第一歩!

年を重ねるのが楽しくなる生き方とは?(http://okinaka.jasipa.jp/archives/352 )」とのテーマで「脳を鍛える大人のDSトレーニング」で有名な川島隆太氏ほか東北大学加齢医学研究所スマートエイジング国際共同研究センターの先生方が提唱する「スマートエイジング」の考え方を以前紹介した。

11日の日経Gooday記事に東海大医学部教授(血液腫瘍内科)川田浩志氏の「反省しません。その方が健康でいられるから」毎日を楽しめることが年齢に負けない第一歩です、とのGooday流アンチエイジングセミナーでの講演内容が掲載されていた(http://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/14/093000039/102100071/?waad=FwS1YNlU)が、スマートエイジングと同じような考え方で興味深かったので、ここで紹介する。川田先生は、病気になってもう打つ手がない患者に接していると、病気になるのを避ける方法はないものかと思うようになった。アンチエイジングの為には「食事」「運動」「メンタル」の3要素の重要性が説かれているが、川田先生はまず「メンタルありき」と考え、メンタリティの人体への影響に関するエビデンスを徹底的に研究した。その結果下記のような真実が分かったと言う。

その1~人生を楽しむほど死亡リスクは下がる:日本国内の男性対象の調査で、「人生を楽しんでいますか?」との質問で「楽しんでいる意識が高い人」は「そうでない人」に比べて脳卒中、心臓病による死亡リスクが半分だった。ロンドン大学でも「人生の楽しみ度(Enjoyment of Life:EOL)」と「8年後の身体機能」の関係を調べるとEOLが高いと「寝たきりになりにくい」事が判明したとか。

その2~「幸せ度の高い言葉を多用する人は行動量も多い:18万人のツイートを解析したところ、「Happy」とか「Ha・Ha・Ha」といった幸せレベルを高く示すような単語をツイートしているひとほど、移動距離が長くて行動半径も広いことが分かったと言う。行動量の増加は科学的にも体にもたらす恩恵が大きいことが証明されている。動くことによっておこる「交流」という副次的効果も大きい。

さすればどうすれば「幸福度」を上げられるか?

その3~今やるべきことに集中すること!:「人は過去、未来に執着する傾向がある」が、変えられない過去や、分からない未来にとれわれず、「今に集中すること」。このことは、当ブログでもいろんな方が言われる話として何度もUPさせて頂いている(EX. http://okinaka.jasipa.jp/archives/347)。2~3分深呼吸をするだけでも、脳内前頭葉野の委縮を遅らせることが可能と言う。

その4~「幸福度」は自分次第で変えられる:個人の幸福度を決めている要因として、「遺伝」が50%、「お金や生活環境」が10%、残り40%は研究結果では「自分次第」ということ。自分を幸せに出来る可能性は後天的に40%もあるということ。「幸せはいつも自分の心が決める」相田みつをの有名な言葉と同じ意味とも思える。

その5~その日に得た良いことを三つ記録する                                                 

その6~実直で誠実に生きている人ほど死亡リスクが低い

とも言われている。

年をとり体力、知力が劣化していくことを恐れて生きるより、自然体で年を重ねることで日々幸せと喜びを感じる生活を目指すことが最高の生き方だ。と分かっていても、家内から「口をへの字にせずスマイルを」と毎日のように言われてしまう。気をつけねば。

食事療法がひらくがん治療の新たな道

標題のタイトルで、「遺伝子のスイッチオン」で有名な筑波大学名誉教授村上和雄氏と、西台クリニック院長済陽高穂(わたようたかお)氏との対談記事が「致知2015.10」に掲載されている。以前にも、参考になるかと思い、ガン治療に関する記事を挙げている(がん患者の駆け込み寺http://okinaka.jasipa.jp/archives/2928、末期がんの自然治癒http://okinaka.jasipa.jp/archives/2016)。この年になると同僚、先輩の訃報を多く聴くようになるが、そのほとんどがガンによるものだ。昨年末に肝臓がんで亡くなった高校同期は、見つかった時は既にレベル4で、本人から、「いいと思うことはすべてやるから何でも教えてほしい」との要請があったが、何も出来ず診断4か月後帰らぬ人となってしまった。今回登場の済陽氏を「末期がんや晩期がん患者の60%以上を治癒改善に導くと言う実績を持つ済陽式食事療法で、ガン治療に新たな道を切り開いた方」と紹介している。

済陽式食事療法の八大原則を下記する。

  • ①塩分を制限する(1日5㌘以内)
  • ②動物性蛋白質・脂質を制限する(四足歩行動物の肉類は週に1回程度)
  • ③新鮮な野菜と果物を大量に摂取する(1日200~500mlのジュースと野菜350㌘~500㌘)
  • ④胚芽を含む穀物、豆類、イモ類を摂取する(週に1~2回は玄米)
  • ⑤乳酸菌、海藻類、キノコ類を摂る 
  • ⑥レモン、はちみつ、ビール酵母を摂る
  • ⑦油はオリーブ油またはごま油にする
  • ⑧自然水の摂取

 

この指標は、病気予防のためのもので、例えば末期の患者に対しては絶対に禁酒であるとか厳しく指導されているそうだ。

済陽氏は消化器がんの手術で有名な中山恒明先生に師事したり、米国留学したりして外科手術の腕を磨き、都立荏原病院では消化器がんだけでも2000例以上の手術をやられた。患者さんを救いたいとの一心だったが、手術後5年生存率は52%程度しかなく、「手術と言う患者さんの心身に重い負担を強いるものなのに、結局命を助けることも出来ていない。これではあまりにも患者さんに申し訳ない」と、外科手術だけに頼るのではなく、放射線治療や、抗がん剤治療を勉強したが、こうした治療も完全に治すのは難しかった。そんな時、手術ですべてのがんを取り除くことが出来なかった患者が独自に探した「甲田療法」と言う食事療法を試み1年半でがんが無くなったことや、留学中に世話になった先生から前立腺がんになったとの知らせが入り、「甲田療法」を勧めたところわずか半年ですっかりがんが治った事例などから、食事療法に興味が湧き、真剣に考え始められたそうだ。7年前に開院された西台クリニックでは、年間600名を超える患者さんを相手に最新性の機器を使ったがんの高精度献身と、食事指導をされている。がんで悩まれている方に何らかの参考になればと願うばかりだ。