前稿(http://okinaka.jasipa.jp/archives/5712)で主に若者(子供含めて)に対する「素読のすすめ」を書きました。が、私のような高齢者に対する重要な情報を書き忘れていました。
最近もアクセルとブレーキを間違えて事故を起こす高齢者のニュースが毎日のように報じられ、認知症とともに大きな社会的問題となっています。この認知症にも「素読」は極めて大きな効果があることが、同じ記事に書かれているのです。
川島氏は「学習療法」と称して高齢者に対して美しい日本語を声を出して読ませるトレーニングを実施されている。その結果、認知症の進行が止まるだけではなく改善していくとの実証が得られているそうだ。普通は認知症の薬を処方されるが、それは進行速度を遅らせるだけ。「素読」をすることによって記憶容量が大きくなり、脳が可塑的変化を遂げるという劇的な変化を生む。高齢になるにつれ、一般的にゆっくりしゃべるようになるが、例えば1から120まで順番に数えさせると大学生であれば30秒を切るくらいだが、60代の人は50秒以上かかる。脳が衰えることで言葉のスピードも遅くなるのだ。脳の回転速度が遅くなれば判断も遅れ、次の行動も遅れることになる。オレオレ詐欺で相手のペースについていけず騙されるのもこのことが原因ともいえる。このことも、中身のある古典や名文をある程度の速さで素読し続けることで改善でき、お年寄りの脳にとっても効果が大きいと川島氏は言う。
70歳にもなると痴呆症は怖く、常に気になる病気だ。自覚症状がなく、他人に迷惑をかけることが、ガンなどの他の病気と違う。健康、とりわけ認知症に効果があると言われるもので出来ることは早速実行に移していきたい。
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ストレスが命を奪う!対策は?
6月18日、19日の両日に放映されたNHKスペシャル番組「キラーストレス」に注目した。1回目のサブタイトルが「あなたを蝕むストレスの正体~こうして命を守れ~」、2回目が「ストレスから脳を守れ」。
激動の社会の中、高まるばかりのストレス。その中でも、私たちの命を奪う可能性のある、いわば「キラーストレス」とでも呼ぶべきストレスの存在が脳科学や生理学など最先端の研究によって明らかになってきたそうだ。ストレスが人の体に「ストレスホルモンの暴走」を引き起こし、脳細胞や血管を破壊して、人を死に追い込む詳細なメカニズムを明らかにした。さらに「乳がん」の研究から、がんの進行とストレスとの密接な関係が浮かび上がってきた。これまで漠然と語られてきた“ストレスによる病の実態”が、具体的に明らかになってきたことで、私たちがリスクを食い止め、ストレスを予防的に対処する方法も、鮮明に浮かび上がってきたというのが、今回の番組のストーリーだ。
仕事上のストレス、家庭のストレスなど複数のストレスがある場合、キラーストレスが増殖し、心臓を圧迫し心拍数を増やし心不全を招く。ガンに関しても、ストレスホルモンがATF3遺伝子を刺激し、がん細胞への攻撃をやめてしまう。動脈硬化を起こしやすくするのは、ストレスホルモンが血液中の鉄分を血液の壁の細菌に蓄積させ、細菌が鉄分を栄養素にして成長し、血管を破ることになるから。
そもそも、キラーストレスとは、脳の扁桃体が不安や恐怖を感じると ストレス反応と言われる反応が始まる。ストレスホルモンが分泌されたり自律神経が興奮したりする。そのために心拍数が増える、血圧が高くなるといった反応が起こり(ストレス反応)、上記のような危険な状態を招く。データでは、都市部に住む人の方が田舎の人より扁桃体は反応しやすく、ストレス反応が起こりやすくなっていると言う。ストレスは、結婚、昇進、収入の増など、めでたい事でも定常状態が変化することで起こるそうだ(ライフイベントストレスチェックhttp://www.nhk.or.jp/special/stress/01.html参照ください))。
アメリカ心理学会は5つのストレス対策を勧めている。1)ストレスの原因を避ける、2)運動、3)笑う、4)サポートを得る、5)マインドフルネス
運動については、「少し息があがる程度の早歩きなどの有酸素運動」を行うと脳の構造が変化し、自律神経の興奮が抑えられることがわかってきた。30分を週3回が目安で、もちろん、多く行うほど効果が期待出来る。
番組2回目は、今話題の「マインドフルネス」に関して詳細に紹介している(早稲田大学の熊野宏昭教授)。47%の人が、上司に怒られた過去に悩み、また怒られないか未来を心配する「マインドワンダーリング」に捉われている。「今の瞬間」の現実に常に気付きを向け、その現実をあるがままに知覚し、それに対する思考や感情に捉われないでいる心の持ち方を「マインドフルネス」と言う。姿勢を良くし、眼を閉じて呼吸を感じ、湧いてくる雑念や感情に捉われず、吸った息、吐いた息を感じ、体の外の空気にまでフォーカスしていく(詳しくはNHKスペシャル マインドフルネスhttp://www.nhk.or.jp/special/stress/02.html参照ください)。
昨年12月改正労働安全衛生法でストレスチェックの義務化が制度化された。ストレスで”うつ病”などの病を患う人が増えている現状を如何に克服できるか、“マインドフルネス”の手法は、欧米では、大企業や、刑務所など様々な所に急速に普及しつつあると言う。日本でもこれから普及してくると思われる。
脳は鍛えることが出来る?(ブレインフィットネス)
身体と同じように、脳も鍛えることが出来るとの説が2007年前後を転換点に言われ始めたそうだ。「脳トレ」などの言葉もその頃からよく使われるようになったと言う。昨年「脳を最適化する~ブレインフィットネス完全ガイド~」(アルバロ・フェルナンデス他共著、山田雅久訳・CCCメディアハウス刊・2015.11)が出版された。著者は、脳の健康に関する最新情報を調査し発信するマーケットリサーチ会社「シャープブレインズ」の最高経営者や最高科学顧問、そして認知心理学博士だ。
脳には約1000億もの神経細胞(ニューロン)が存在する。ニューロンには生体電気的な情報を扱う特殊な力があり、この情報を「シナプス」という連結部分を通じて他のニューロンへ伝える。このニューロンによるネットワークの形成により脳は機能する。ニューロンネットワークに繰り返し刺激を与えることによって、その脳機能が最適化できるとの説から生まれたのが「ブレインフィットネス」だ。そして「ブレインフィットネス」の例を挙げている。
- ・身体エクササイズ(有酸素運動)はニューロン間のつながりを増やし、脳の容量を増加させる。30~60分の有酸素運動を最低週3回行うことを推奨している。その強度は、心拍数と呼吸回数が上る位がいい(散歩程度だけでは十分と言えない)。
- ・食習慣も認知力に関して長期にわたる影響を与える。そして「地中海食」を薦める。野菜、フルーツ、不飽和脂肪酸(オリーブオイル)などを多く、乳製品、肉、飽和脂肪酸は少なく、魚は適度に食べ、適度のアルコールを適度に摂る食を言う。
- ・学習や新しい活動へのチャレンジが脳を強化する。何事においても上達すると脳への刺激が弱くなるため、常にチャレンジの度合いを挙げていくことが必要(クロスワードや数独は脳に対する効果はあまりない)。
- ・学習や仕事が脳を守る。過去に従事した仕事の複雑さの度合いが、リタイア後の脳の機能性に影響し続ける。
- ・読書は認知症のリスクを減らすが、テレビを見ることはリスクを増やす。
- ・中年期から晩年期における社会的つながりが、認知力低下を減らす。そのため、ボランティアや社会的グループ活動などへの参画は脳の機能低下に効果がある。
- ・ストレス・コントロールを生活の中に組み入れることも重要。運動や、リラクゼーション(瞑想、太極拳、ヨガ、散歩など)、ユーモアや笑いも効果がある。
筆者は言う。「ブレインフィットネスに“特効薬”はない。脳と脳科学がどう作用しあうかを理解しながら、食事、有酸素運動、ストレス管理、メンタルへの刺激、社会的交流など、脳を健康にするライフスタイルの構築に取り掛かることが出来る。それが基本だ。」と。
最近各種メディアでも、認知症に関する放映や記事が目立つようになってきている。私も含めて多くの方が「自分は関係ない」とは言えない現状がある。このような調査研究結果も参考にしながら、自らのライフスタイルを考えることも大いに意味があると思える。