「健康・老化」カテゴリーアーカイブ

楽しく介護予防!”シニア・リトミック”とは

高校時代の友人の娘さんが主催する「楽しく、介護予防!シニア・リトミック」に誘われ、家内と一緒に行ってきた(15日チェレステ松濤にて)。これからの高齢化社会に向けてスイスではすでに普及している”シニア・リトミック“を日本でもぜひ普及させたいと頑張っている仲間の皆さんの活動へのモニター参加だ。

“シニア・リトミック”という言葉は日本ではまだなじみがないことばだが、WHO本部のあるスイス(ジュネーブ)では、メディアでたびたび報道され、今では医療機関にまで取り入れられ、社会保険まで適用されているそうだ。もともと、スイスの音楽家エミール・ジヤック=ダルクローズ(1865-1950)が創案した音楽教育のエクササイズで、「音楽の源泉は感情にあり、感情は身体に宿る」ことで、感情と身体の躍動感の伴わない演奏は音楽的ではないとの考え方に基づくもの。このことから、“ダルクローズ・リトミック”とも呼ばれ、日本でも国際リトミック指導者連盟(F.I.E.R)の支部として1999年日本ジャック=ダルクローズ協会が設立されている。国際免許制度もあり、今回の講師となっていただいた中明佳代先生はこの国際資格を持っておられる(国立音楽大学の非常勤講師)。

今回、なぜ”シニア“の冠がついているか?ジュネーブで検証された実験で、リトミックが歩行バランスの改善に劇的な効果があり、転倒率の低下にも効果があったと報告されている。そのことを受けて、高齢化時代を迎えた国家的な課題でもある”介護予防“にもリトミックを取り入れたいとする音楽家の皆さん有志がその試みとして、今回シニアを対象としたモニター・レッスンを開催し、今後の普及の参考にしたいとのことだった。

シニア6名と中明先生他2名の主催者9名の小世帯で、スタジオの関係で1時間程度のレッスンだったが、「参加者のテンポに合わせたピアノ音楽を心地よく感じながら動く」という音楽と感情と身体とコネクションさせていくレッスンで、時間を感じさせない楽しいものとなった。例えば、

  • 室内をランダムに歩きながら、一定の間隔で相手を見つけ手を合わせ、決められた数の手をたきあう、一定の間隔を縮めながら繰り返す(相手を見つけたと思ったら他の人にとられてしまうなんて難しさを噛みしめる)
  • 膝を曲げて膝を1回たたいた後、膝を起こしながら手を3回打つ。これをやりながら自己紹介をしたり、歌を歌ったりする。

これらの行為を先生の音楽に合わせて行う。先生が我々の動作の速度に合わせて即興で弾いてくれるので、助かると同時に、満足感(自己肯定感)も得られる。不特定多数の方と、手をたたいたり、歌を一緒に歌ったりするため、あっという間に和やかな雰囲気になり、コミュニケーションも活性化する。

日本では、ますます高齢化人口が増える中、医療費問題が大きくクローズアップされてくる。私は、健康のため5年前からスポーツジムに通っているが、多くの高齢者の方が健康を維持するために通っている。各地ではラジオ体操なども盛んになってきている。このような中で、高齢者問題に立ち向かうために、ピアノの演奏技術を持つ専門家が自ら難しい資格を取りながら、いかに日本で普及させるか悩み、苦労している。以前、少子化問題に絡めて低体重児問題をアピールする福岡先生の話を紹介した(http://okinaka.jasipa.jp/archives/2077)。この問題も欧米では国家レベルで対策を進めているが、日本ではまだ具体的な動きはない。課題先進国の日本こそ、“シニア・リトミック”も含めて、高齢者の健康対策を世界に先駆けて体系的に進める方策を真剣に考えるべきと考える。高齢者問題も少子化問題も待ったなしだ。

素読のすすめ(前稿つづき)

前稿(http://okinaka.jasipa.jp/archives/5712)で主に若者(子供含めて)に対する「素読のすすめ」を書きました。が、私のような高齢者に対する重要な情報を書き忘れていました。
最近もアクセルとブレーキを間違えて事故を起こす高齢者のニュースが毎日のように報じられ、認知症とともに大きな社会的問題となっています。この認知症にも「素読」は極めて大きな効果があることが、同じ記事に書かれているのです。
川島氏は「学習療法」と称して高齢者に対して美しい日本語を声を出して読ませるトレーニングを実施されている。その結果、認知症の進行が止まるだけではなく改善していくとの実証が得られているそうだ。普通は認知症の薬を処方されるが、それは進行速度を遅らせるだけ。「素読」をすることによって記憶容量が大きくなり、脳が可塑的変化を遂げるという劇的な変化を生む。高齢になるにつれ、一般的にゆっくりしゃべるようになるが、例えば1から120まで順番に数えさせると大学生であれば30秒を切るくらいだが、60代の人は50秒以上かかる。脳が衰えることで言葉のスピードも遅くなるのだ。脳の回転速度が遅くなれば判断も遅れ、次の行動も遅れることになる。オレオレ詐欺で相手のペースについていけず騙されるのもこのことが原因ともいえる。このことも、中身のある古典や名文をある程度の速さで素読し続けることで改善でき、お年寄りの脳にとっても効果が大きいと川島氏は言う。
70歳にもなると痴呆症は怖く、常に気になる病気だ。自覚症状がなく、他人に迷惑をかけることが、ガンなどの他の病気と違う。健康、とりわけ認知症に効果があると言われるもので出来ることは早速実行に移していきたい。

ストレスが命を奪う!対策は?

6月18日、19日の両日に放映されたNHKスペシャル番組「キラーストレス」に注目した。1回目のサブタイトルが「あなたを蝕むストレスの正体~こうして命を守れ~」、2回目が「ストレスから脳を守れ」。

激動の社会の中、高まるばかりのストレス。その中でも、私たちの命を奪う可能性のある、いわば「キラーストレス」とでも呼ぶべきストレスの存在が脳科学や生理学など最先端の研究によって明らかになってきたそうだ。ストレスが人の体に「ストレスホルモンの暴走」を引き起こし、脳細胞や血管を破壊して、人を死に追い込む詳細なメカニズムを明らかにした。さらに「乳がん」の研究から、がんの進行とストレスとの密接な関係が浮かび上がってきた。これまで漠然と語られてきた“ストレスによる病の実態”が、具体的に明らかになってきたことで、私たちがリスクを食い止め、ストレスを予防的に対処する方法も、鮮明に浮かび上がってきたというのが、今回の番組のストーリーだ。

仕事上のストレス、家庭のストレスなど複数のストレスがある場合、キラーストレスが増殖し、心臓を圧迫し心拍数を増やし心不全を招く。ガンに関しても、ストレスホルモンがATF3遺伝子を刺激し、がん細胞への攻撃をやめてしまう。動脈硬化を起こしやすくするのは、ストレスホルモンが血液中の鉄分を血液の壁の細菌に蓄積させ、細菌が鉄分を栄養素にして成長し、血管を破ることになるから。

そもそも、キラーストレスとは、脳の扁桃体が不安や恐怖を感じると ストレス反応と言われる反応が始まる。ストレスホルモンが分泌されたり自律神経が興奮したりする。そのために心拍数が増える、血圧が高くなるといった反応が起こり(ストレス反応)、上記のような危険な状態を招く。データでは、都市部に住む人の方が田舎の人より扁桃体は反応しやすく、ストレス反応が起こりやすくなっていると言う。ストレスは、結婚、昇進、収入の増など、めでたい事でも定常状態が変化することで起こるそうだ(ライフイベントストレスチェックhttp://www.nhk.or.jp/special/stress/01.html参照ください))。

アメリカ心理学会は5つのストレス対策を勧めている。1)ストレスの原因を避ける、2)運動、3)笑う、4)サポートを得る、5)マインドフルネス

運動については、「少し息があがる程度の早歩きなどの有酸素運動」を行うと脳の構造が変化し、自律神経の興奮が抑えられることがわかってきた。30分を週3回が目安で、もちろん、多く行うほど効果が期待出来る。

番組2回目は、今話題の「マインドフルネス」に関して詳細に紹介している(早稲田大学の熊野宏昭教授)。47%の人が、上司に怒られた過去に悩み、また怒られないか未来を心配する「マインドワンダーリング」に捉われている。「今の瞬間」の現実に常に気付きを向け、その現実をあるがままに知覚し、それに対する思考や感情に捉われないでいる心の持ち方を「マインドフルネス」と言う。姿勢を良くし、眼を閉じて呼吸を感じ、湧いてくる雑念や感情に捉われず、吸った息、吐いた息を感じ、体の外の空気にまでフォーカスしていく(詳しくはNHKスペシャル マインドフルネスhttp://www.nhk.or.jp/special/stress/02.html参照ください)。

昨年12月改正労働安全衛生法でストレスチェックの義務化が制度化された。ストレスで”うつ病”などの病を患う人が増えている現状を如何に克服できるか、“マインドフルネス”の手法は、欧米では、大企業や、刑務所など様々な所に急速に普及しつつあると言う。日本でもこれから普及してくると思われる。

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