「人材育成」カテゴリーアーカイブ

「高校球児が日曜日の雪かき」の感動(城東高校)!

2月8日(土)東京は積雪27cmという45年ぶりの大雪に見舞われた。千葉では33cmの積雪だった。翌日の朝は冷え込んだため、雪が残る道路は非常に危険な状態で、交通機関も大幅に乱れた。成田空港は、東京からの交通路(JR,京成電車、高速道路)がすべて遮断され、9日夜は6200人が空港に宿泊を余儀なくされたとか。

9日私は、いつも通り朝一番にスポーツジムに行った。まだ明治通り沿いの道路は雪かきが出来ていない所も多く、恐々と注意しながら歩いて行った。あちこちで雪かきしている方にお会いしたが、その際「ご苦労様」と声をかけると「お気をつけて」と声が返ってくる。店の前は、店の方がやっておられるが、一般道をやっている方々はボランティアなのだろう。いつもは、ごみ拾いや駐輪禁止の場所での監視などをご高齢の方々がやっているのにお目にかかるが、結構若い方々も雪かきに精をだされている。

ジムからの帰りは、亀戸の緑道公園を利用した。ここも部分的には雪が取り除かれているが、ほとんどは残っており、横を通る車道を歩く人も多い。その中で、高校生が日曜日なのに、一生懸命通り道の雪かきをしてくれていた。緑道公園に接している都立城東高校の学生さんだ。野球部のユニフォーム姿が多かったが、女高生のすがたもあった。「ご苦労さん。野球頑張ってね」と声を懸けると、元気よく「ありがとうございます」との声が返ってきた。当日は東京都知事選挙もあったが、緑道公園を歩いて投票に行く人も多く(私もそうだった)、助けられたことと思う。このような光景はあちこちでみられたのだと思う。

声をかけて感謝の気持ちを伝えるしか出来なかった自分にいら立ちを覚えたが、「人が困っていると思えば、直ぐ行動に移す」方々が数多くおられることに安堵をしつつ、自分ももっと世間に恩返しをせねばとあらためて強く思わせてくれた。特に城東高校の皆さんの行動に感動しつつ、若い人たちの人材育成にかける熱き指導者にも思いを馳せることが出来た。ベランダから、朝早くからの練習や、試合などを見ることが出来るが、過去に一度甲子園に出た事のある城東高校に、今まで以上に応援したい気持ちが高まってきた。頑張れ!城東。

トヨタの育て方(中経出版)

トヨタには、トヨタ自動車とリクルートグループによって2002年に設立されたコンサルティング会社「㈱OJTソリューションズ」と言う会社がある。この会社にはトヨタ在籍40年位以上のベテラン技術者が「トレーナー」となって、トヨタ時代の豊富な経験を活かしたOJTにより現場のコア人材を育て、変化に強い現場つくり、儲かる会社づくりを支援している。製造業、食品業、医薬品、金融など多彩な企業にそのサービスを提供している。そんなOJTソリュージョンズによる本が出版された。その名が「トヨタの育て方」(中経出版、2013.9)だ。主なものを紹介する。

部下が育っていないのは、リーダーや上司が部下を育てていないのが最大の原因と言い切る。トヨタの強さは、社員1人ひとりを「考える人材」へと育てるノウハウにあり、どの会社でも応用できるトヨタ流の人づくりノウハウを紹介している。

自分の“分身”を作れ

トヨタでは、真のリーダーはいわゆる「仕事の出来る人」ではない。真のリーダーとして評価されるのは、部下を伸ばすことができる人だ。部下を伸ばすコツは、仕事のプロセスを重視し、部下に自分で答えを見つける、いわゆる「考える人材」へと育てること。部下は「もらった答え」より「自分で見つけた答え」に達成感を覚える。自分の分身を育てた上で、上位の職制に上がっていく。多くの企業は、自分の実績をあげるのに精いっぱいで人を育てることをしない。

「良い品、良い考(かんがえ)」が育て方の基本

「良い品」は「利益」をつくり、「良い考」は「人」をつくる。「良い品」は「良い考」から生まれる。すなわち、一人一人が意識して考えないと、会社の利益は生まれないというわけ。人を育てる上で、考えること、そして考えさせることを重要視する。トヨタには「創意くふう提案制度」がある。約6万人の社員から年間70~80万件の提案が寄せられる。上司は各提案に対し、よく考えて答えなければならない。大変だが、この繰り返しが、部下との信頼関係醸成に役立っている。!人を育てるとは「モノの見方を伝える」こと名誉会長帳氏は「人材育成とは、価値観の伝承にあり、モノの見方を伝えること」と言う。「これがいいこと」「これが大切」ということをきっちり教えることが部下の成長につながる。部下が考える際の拠り所とするためにも。このようなものの見方を仕事のプロセスの中で教えていく。(「企業理念」や「基本方針」も、考えるための大きな拠り所と言える)

評価基準は、成果プラス「人望」

トヨタの管理職の人事評価要素には「人望」を評価する項目がある。あるトレーナーは「あの人のような仕事をしたい。あの人のように信頼できる人になりたい。そう素直に思わせる人」と言い、ある人は「自分の責任をわきまえていて、その責任を取ることを恐れない人」と言う。「人望」の評価項目がない会社でも、個人的に「人望」を意識することで、部下の反応も変わり、信頼関係も出来てくる。(「会社人生は“評判”で決まる」(http://jasipa.jp/blog-entry/7585)の“評判”と同じ)

「指示待ち人間」では人は育たない。自律的に自分で「考える人材」を育てられるかが、企業の成長の鍵を握ると言う考え方には大いに同感できる。目先の利益だけを追いかける上司は、部下の信頼を得られず、いずれ失速するのではないだろうか。トヨタの強さをあらためて認識できた。

考える力を深める!

安倍政権が力を入れている“教育再生”。道徳を教科化する話題やら、大学改革、義務教育改革など連日マスコミを賑わしている。「致知2013.11」に「考える力を深めれば知識は知恵に変わる」と題した東京大学大学院理学系研究科教授上田正仁氏の記事が掲載されている。そのリード文には「原発事故や金融危機に象徴されるように、私たちの目前には、これまでのマニュアルでは対応できない問題が山積している。この時代を生き抜くカギは私たちの“自ら考え、創造する力”を鍛えることだと上田教授は説く」とある。

東大生が大学院や社会に進んだ途端、挫折してしまうケースの多さに、その解決策は長年の自分自身の課題だったと上田氏は言う。物心がついてからずっと、「答えが決まっている問題を如何に効率よく早く解けるか」で評価され、「成績が良い事=優秀」との物差しを人生成功の物差しであるような錯覚に陥ってきた学生たち。大学院や社会に出た途端、答えの出ない問題に直面して戸惑いを覚えるのも致し方ない。しかし、「自分で課題を見つけて自分で考え、解決していく」これがビジネスでは成功するための基本ルールとなる。

上田氏は、その力をつけるためには「問題を見つける力」「解く力」「諦めない人間力」が必要と言う。これらの力をつけるためには、根気よく「何は分からないかが分からない」状態から「何が分からないかが明確になる」レベルに高めるため徹底的な調査を薦める。既に分かっていることを調査するのではなく、「何が分かっていないか」を意識しながら調査することがポイントと言う。「解く力」は、自分自身が考え創造した問題だから答えはどこにもなく、自ら編み出さねばならなくなる。1直線に答えに向かって進むのはまず不可能で、一見関係のなさそうな方向に好奇心の赴くまま寄り道をしながら進めることがポイントと指摘する(いいアイディアはトイレや風呂で見つかる?)。いずれにしても、失敗をしてもへこたれず、何度も粘り強く試行錯誤を繰り返すだけの執念や人間力が問われる。

この問題に関して、30年前のチャレンジを思い出す。鉄鋼では「チャージ編成」や「スケジューリング」など、高度な(?)アルゴリズムで答えを出す問題がある。しかし、本来変数の方が方程式の数より多く、答えは複数存在する筈なのに、システム屋が独断で一つの答えを出す不思議な世界が存在した。答から逆に問題を定義しているのではないか?日立システム開発研究所のご支援を頂きながら、「業務の論理(問題定義論理)」と「解法の論理」、「政策の論理(複数解が出た場合しかるべきユーザー側責任者に選択・決定してもらう)」と言う3つの論理に分類し、それぞれの論理を分離して解決する方策を検討した。最初新人に「業務の論理」を定義させることでやらせたが、「先に答え(解法)を考えてから問題を定義する」習慣はどうしてもぬぐえず、現場を経験させつつ、何度もやり直させながらかなりの期間を経てやっと定義できるようになった。「業務の論理」は日立に開発して頂いた知識工学言語でユーザーにも理解できるものとし、「解法の論理」は巡回セールスマン問題など世の中にあるアルゴリズムを選択した(室蘭工業大学にお世話になった)。今もスケジューリング問題などで動いているのだろうか?大学の恩師に勧められ、国際学会に発表した懐かしい思い出も蘇るが、上田先生の言われる「考える力=問題定義能力」は、これからますます進むグローバルな競争時代に向けて、課題がますます顕在化してくることが懸念される。企業においても、この課題を直視し、如何に自律型人材(not指示待ち人材)を育てるかに注力してほしい。