「人材育成」カテゴリーアーカイブ

徒弟制度で人間力を備えた一流の職人を育てる秋山木工

横浜にある秋山木工は、特注家具専門のメーカーで、宮内庁の御用達であるほか、外資系ホテルの客室の家具、大手百貨店や一流ブランド店の売り場の家具の約半数を作っている会社だ。その一流の職人を育てる手法が、かっての徒弟制度だと言う。(「致知2014.8」~人間力を備えた一流の職人を育てる~筑波大学村上和雄教授と秋山木工秋山利輝社長との対談記事より)

まず入社すると丁稚見習いとして秋山利輝社長が代表理事の秋山学校で1年間の修業に努める。それを終えて丁稚となり、その後丁稚として4年間の研修を積む。この5年間は男女ともに頭髪は丸刈り、携帯電話も恋愛も家族に電話で連絡することも禁止。6畳一間の量で寝起きして共同の自炊生活をする。休みは盆暮れの合わせて10日間だけ。それ以外は朝早くから夜遅くまで社長や先輩から「バカ野郎」と怒鳴られながら「職人」になるための修業をする。そして職人になるための厳しい試験を受ける。職人に昇格すると3年間の職人生活を送る。それが終わると退職する。

こんな厳しい毎日を送ることになるが、入門希望者が後を絶たないそうだ。現在丁稚見習いから職人まで35人いるが、晴れて採用されるのは5人に一人もいないと言う。「たった5年の丁稚生活で、その後50年の使える技術が身に着く。それも日本一の職人だと周囲から評価して頂ける技術を。」と秋山社長は言う。「そのために、余計なことをすべて省き隔離された世界で仕事にエネルギーを1点集中させることでビッグバンを起こさせる。それが秋山木工の徒弟制度です。」と続ける。確かに職人の優秀さは、昨年の技能オリンピックで金銀銅を総なめしたことで証明される。なぜ職人になって3年で辞めさせるか?秋山社長は「自分の子分を作るために職人を育てているわけではない。日本をモノづくりで甦らせるために、自分を超える職人を最低でも10人育てなければ社会への恩返しは出来ない。ずっと部下に置いていると自分を超えられない」と言う。

どんな子を採用する?との問いに、秋山社長は「人間が明るくてパーの子」と明確に言う。実際秋山社長は中学までオール1だったとか。「パーの子」とは、何も考えずに「すべて親方に任せます」と自分を投げ捨てる覚悟ができる人間を言う。いわゆる「素直な子」と言う意味でもあるらしい。秋山社長も「自分がアホ」と悟ってから、何でも先輩に聞けるようになってから成長したそうだ。

さらに秋山社長は「技術より大切なのは人間力」と言う。秋山木工の給料査定基準も60%は人間力。お客さまから注文を頂いたら謙虚にお受けして、しかも誰にも負けない素晴らしい家具を作れる人を育てたいと。自分勝手な職人の世界、威張ってばかりの職人ではいつか滅びる。「親孝行できない人間は一流になれない」と両親とも面接し、日々の仕事の足跡や所長の所感を記したスケッチブックを月2回送って、親御さんのコメントを頂く双方向のコミュニケーションも実施している。

こいつを一流のスタープレーヤーにする」と丁稚以上に休みなく働く社長の真剣な姿が生徒にも伝わり、厳しい試練にも耐えながら、職人になった晴れの披露パーティで、親御さんともども涙にくれ喜ぶ日を迎えることが出来る。こんな真剣なプロ育成の場があるのに驚いたが、「人を育てる」ことに重要なヒントがもらえた気がする。

体で理解する「経営理念」研修

いつも愛読している「PHP Business Review松下幸之助塾2014年7・8月号」のテーマは「理念をきわめる」。その中に「体で理解する経営理念」との体験レポート記事があった。その記事のリード文は下記の通り。

高尚な文言が壁に掲げられながら文字どおり、「絵に描いた餅」になっていたり、毎日会社で唱和しているもののただの呪文になっていたりする経営理念に、なんとかして命を吹き込みたいと願う経営者は多い筈だ。そんな社長必見の、全く新しい研修が開発された。

「運動のできる服装で来てください」との言葉に半信半疑で参加した記者は、終わってみると経営理念と運動と言う異質のものが見事に融合していることに小さな感動を覚えたとある。

兵庫県一円の中小企業に向けて経営コンサルティングをしている㈱クリエイションと、企業・学校向けに体験学習や野外研修を実施している㈲アウトドア・エデュケーショセンターが実施した「体験から学ぶ“経営理念を実現する人材”育成研修」(1日コース)だ。目的は、社員1人ひとりが「わが社に必要な人材(会社の目的・目標を達成する人材)になるために、”自分“がどう行動すべきか、どう振舞うべきなのかを”体験“から学びながら考え抜く」ことだ。

研修スケジュールは3部構成だ。

1.自社の経営理念の理解を深め、とるべき望ましい行動や態度を考える(グループ分けし、それぞれのグループに会長や社長、取締役などが会社の歴史や理念、経営環境などの説明を受け、その後グループをシャッフルして、それぞれの話を各人が説明し、取るべき行動や態度を議論しその結果を発表する)

2.野外活動を通じて、自分自身の現在の基本姿勢や基本能力を把握し、”私“が日常意識すべき課題を見つける

3.最後に「わが社の社員」として必要な人材になるためにどう行動すべきか、南緯が課題なのかを明確にする

特に興味があるのが、2番目の野外研修だ。縦に蜘蛛の巣のように張り巡らされたロープとロープの隙間をロープに触らぬように制限時間内にグループ全員が通り抜ける問題(一度誰かが通った隙間は通れない。上の方の隙間は皆で抱え上げなければ通れない)や、直径5メートルの円の中心に置かれた水の入ったバケツを、長さの異なる3本のロープを使って円の中に入ることなく安全に(水をこぼさずに)円の外に移動させる、島に見立てた箱の間を長さの異なる二枚の板を使って全員が地面に足をつけることなく移動するなどの問題をグループごとに実行する。このような問題を皆で考えるとき、「自分は率先して知恵を出したか?」「声をかけたか?」「仲間の体を支えたか?」、「みんながやってくれるから、自分はやらなくても」と他人任せにしていないか?など、自主性、協調性などがいやというほど思い知らされると言う。もう一つのポイントは、野外研修に入る前に「ふだんあなたはどれだけ本気で物事に取り組んでいますか?」「どれだけ本音で物事を言い合っていますか?」などの行動様式を自己評価し、自らの課題を発表してから野外研修に取り組む。そして後で振り返る時、現実の課題を目前にすると、最初の課題と違った自分に気付く。本気度が足りない、思っていた以上に進んで課題に取り組む、最初に無理だとあきらめてしまう、などなど。

総じて参加者には好評だと言う。会社の進むべき方向を認識し、自分の問題として捉え率先して周囲を巻き込んで行動できる人材を育成する。経営者の悩みの一助となる研修として野外研修が見直されているようだ。

女子サッカー、バレーで何度も全国制覇した高校の監督の言葉

なでしこジャパンが初のアジアカップ優勝(25日)!その女子サッカーで、全国最多となる8度の日本一に輝いている宮城県の常盤木学園高等学校。それを率いるのは、鮫島など数多くの日本代表選手を輩出し、「なでしこの父」と呼ばれる阿部由晴監督。その言葉(「致知2014.6」インタビュー記事“指導とは教え導くことではなく、教え導かれること~なでしこの父に聞く「常盤木式」の原点~”より)。

簡単な事を真剣に聞く人間は強くなる
分かった、分かったと聞き流す人間は強くならない

阿部氏曰く、伸びない子に多いのは過保護なタイプ、我慢できない子。さらに、言う。

チームの成長のためには指導者の成長が不可欠

阿部氏は、週1回は講演会や勉強会に参加して自分を成長させる努力を怠らない。

同じく宮城県の古川商業高校(現古川学園)の女子バレーボール部を全国大会77回出場、全国制覇12回、2011年には三冠(春、夏、国体)を達成させた国分秀男元監督。その言葉(「知2010.3」花巻東の硬式野球部佐々木洋監督との対談記事「勝運をつかむ」より)。

言葉は意識を変え
意識は行動を変え
行動は結果を変える

国分氏は、高校野球でも「優勝します」と宣言した高校の中から優勝校が出ていると言う。2009年釜石東が優勝した時、その決勝戦。相手は大分の明豊高校。8回終わって4:6。その時佐々木監督が言った言葉は「まだ2点差しかないぞ」。そうすると9回に2点入れて延長戦で勝利した。部下を鼓舞する言葉選びの重要性を説く。人の心に火をつける「点火型」の人間になるか、火を消しまくる「火消型」の人間になるか、言葉を選びたい。

何の記事か忘れたが、こんな言葉もあった。

意識が変わると行動が変わる
行動が変わると習慣が変わる
習慣が変わると人格が変わる
人格が変わると人生が変わる

会社の風土改革、意識改革の必要性を説く。