企業の社風改革は待ったなし!損保ジャパンなどに学ぶ!


2月26日の日経朝刊8面”Deep Insight“の「社風改革、覚悟の”踊り場“」と題した上杉素直氏(本社コメンテーター)の記事に目が留まった。

時代の変化が激しい中で、社員一人一人が自主的に考えて行動できる社風を如何に作るかとの問題提起だ。上杉氏は。これまでの日本の濃い企業文化の弊害を“だまし絵”(添付図参照)を例えに説明している。アヒルとウサギのだまし絵だ。

     

視線の送り方によって、左を向いてくちばしを突き出すアヒルにも見えるし、右を向いて後頭部に2つの耳をもつウサギにも見える。双方を同時に認識するのは難しく、どちらか一方しか見えない。あるカルチャーに染まった集団は同じように絵を眺め、例えば全員がアヒルの絵だと認識し、だれもウサギに気づかない。ウサギが外部の環境変化だとしたら、その企業のだれも社会の変化に気づかない事態を招くことになる。上杉氏はみずほ銀行の不祥事は、「いうべきことを言わない、言われたことだけしかしない」という金融庁の指摘が正しいと思うが、そこに悪意はない」と言う。善悪で割り切れないからむしろややこしく、不祥事にまみれてカルチャーの刷新を誓うが、結局変革がかなわず失敗を繰り返すケースはみずほに限らず、こびりついたカルチャーの「解凍」が困難な事例も多い。カルチャーを解かすチャレンジをしている企業として損保ジャパンの取り組みを紹介している。

5社との合併を繰り返して今の損保ジャパンとなった経緯はあるが、現状人口減や自然災害の増加で厳しい環境になってきている。もともと上意下達のノルマ主義で、市場シェア日本一が社員の誇りだったが、2018年将来に向けて危機感を抱いた西沢敬二社長の始めた行動がユニークだ。従来の流儀をひっくり返して、未来に向けて目指すカルチャーを追い求め、実現させる活動だ。簡単に言えば従来のトップダウン型からお客を起点としたボトムアップ型への転換だ。2019年に32ページの冊子「Spirit-未来への指針」にまとめ、バイブルとして社員に配布。「企業文化を変える」と章題にうたい「創造性・独創性」「スピード」という目指すカルチャーを明文化した。すごいのは、「これから2年間は市場シェアを考慮しなくていいとした西沢社長の社風改革に対する執念と言うか社長の覚悟を社員たちが感じたことだ。最初はとまどいもあった活動だったが、社員が支店をリードする形は、人材育成や品質に関するプロジェクトチームを作る中で徐々に見えてきたと言う。「職員一人一人が当事者意識を持ってゴールを設定し、チームワークで到達する」新しい企業文化でシェアも回復しつつあるそうだ。

トヨタ自動車も、10年半ば「意志ある踊り場」というフレーズで、将来の成長への足固めの期間を敢えて作ったそうだ。シェアを一時的に放棄した損保ジャパンに通底するものがある。

2月28日日経朝刊28面“Women@Work”の「“多様性” 担当役員日本でも」との記事も気になった。多様な人材を集め、その人材を許容し、多様なスキル、能力、アイディア、経験、価値を生かすために、その旗振り役となる役員を任命する企業が出始めている。この役割を「CDIO」(Chief Diversity&Inclusion Officer)と呼ぶ。日立製作所CDIOのロレーナ・デッラジョヴァンナさんと東京海上ホールディングスCDIO鍋嶋美佳さんが紹介されている。D&Iとは多様な人材をただ採用するだけではなく、違いを尊重し、能力や個性が生かされている状態だ。デッラジョヴァンニさんは日立のD&1を「世界的にみるとまだまだ」と指摘する。一例としてあげるのが「意見を言うことをためらう文化」。自由闊達に意見を言い合える環境がなければ、イノベーションは生まれず、製造業にとって致命的。デッラさんはこうした風土を変えることが喫緊の課題と言う。日本ではCDIOを置くのは少数だが、伊藤忠商事では元厚生省の事務次官の村木厚子さんがその職に就く。全日空では執行役員がその責に就いているそうだ。

未来に向けての企業の挑戦が始まっている! | 冲中ブログ (jasipa.jp)でも、社員が意欲をもって働ける環境つくり、優秀な人材が集められる環境つくりに挑戦する企業を紹介した。3月1日の朝日新聞12面のコラム“経済気象局”でも「問われる企業の存在意義」では、ソニーグループのパーパス経営が紹介されている。

いい人材を集め、その人材を育て、活かす経営のための社風改革に向けて、今後の厳しい競争を勝ち抜くための各企業の挑戦が始まっている。パーパス「クリエイティビティとテクノロジーで世界に感動で満たす」に沿った社員の自主的行動が企業文化として定着してきたというソニーグループに続く企業が今後続々と出てくることを期待している。