これも昨年10月頃の社内ブログから引用したものです。
猪瀬直樹氏著作の「昭和16年夏の敗戦」という本が,昨年末来本屋に並んでいる。あるセミナー講演の際、猪瀬氏は、若者の文字離れを嘆くと同時に「上にも下にもしがらみのない30代が、適切な材料があれば、4年後を見通せる」と、その一例としてこの本を手にとってアピールされました。
早速この本を買って読みました。昭和16年と言うとその年の12月8日第二次世界大戦勃発の契機となった真珠湾攻撃の年です。その年の4月に国防国家の支柱となるべき人物の養成を使命とする「内閣総力戦研究所」(名前は勇ましい?)が設立され、軍官民3方面から「人格、身体、智能に卓越し将来の指導者たるべき資質を有するもの」36名を集め、そのほとんどが30歳代であった。組織を作ってから何をやるか議論したらしく、7月に「模擬内閣」を作り、当時の内閣を模擬しながら、いろんな議題を討議した。その中でも、7月以降急速に軍部が米国開戦に向けて動くなか、近衛内閣から東條内閣に変わり〈10月〉、天皇陛下を主とする開戦回避派との衝突がますます激しくなっていた。アメリカからの石油輸入に依存していた日本はアメリカが石油禁輸を打ち出した故に、インドネシアに活路を見出さんとしたが、「総力研究所」の模擬内閣は、ことごとく石油運搬船がアメリカに攻撃され日本に到着することはできないとのシミュレーション結果を示し、東條内閣に提示した。これは一例だが、アメリカとの戦争も綿密にシミュレーションし、敗戦を必然の結果として提示していた。しかし、最後は、大和魂で戦えば必ず勝てるとの機運におされ(アメリカにもヤンキー魂があると反対した人もいたそうだが)、御前会議において石油の確保可能量を「模擬内閣」の提示した数値を改竄し大丈夫として報告し、開戦に一気に向かったとの事でした。この本は猪瀬氏36歳の時の著作だが、勝間和代氏との対談を追加し、最近再度出版したものです。「模擬内閣」が戦争を止められなかったのは残念ですが、彼らのシミュレーションの結果は、実際の戦争の局面をずばり言い当てていたとのことで評判になっているとの事です。
このときは折角の提案が受け入れられなかったのですが、あのような軍部がのさばっていた時代に素直な意見具申を行い、当時の東條内閣もその意見を真剣に聞いたと言うことです。30代がもっともフリーに状況を判断し、先を読める世代だということは確かに一つの真理だと思います。
昨年TBS60周年記念番組「99年の愛―Japanese Americans」が高い視聴率(最後の日は19.1%)だったとか。まさに99年前にアメリカに渡った1世そしてその子供2世が真珠湾攻撃で折角の広大な農地も取り上げられ、激しい反日攻撃に晒される中で生き抜く姿を描いたものです(主演草なぎ剛、仲間由紀恵)。
平和について考えさせられると共に、若い人たちのしがらみのない自由な発想に我々はもっと素直に耳を傾ける必要があることを思う。若い人たちは、猪瀬氏が言う「言葉の力」をいろんな本を通じて身につけ、自分の意見を素直にぶつけられる素養を磨いてほしい。ハーバード大学のサンデル教授の「白熱教室」で意見が言えるように!
50代も 言霊というべき力 まだまだ足りません 猛省!