4月5日から12日の予定でウルグァイのムヒカ元大統領夫妻が来日された。東京外国語大学での講演や、テレビ出演での池上彰氏との対談など高齢(81歳)にもかかわらず精力的に活動された。訪日のテーマは“日本人は本当に幸せですか?”で、特に若い人たちに聞いてみたいとの事で大学での講演となったようだ。ムヒカ大統領の名言の一部は、当ブログの「世界で一番貧しい大統領」(http://okinaka.jasipa.jp/archives/3840)で紹介した。ムヒカ氏の言葉に多くの人が感動するのはなぜだろう。自ら「足るを知り」、はた目からは元大統領がなぜこんな貧しい生活をしているのかと思う生活を、自身は「一番幸せな生活」と言い切り実践している所だろう。政治は多数決、従って多数派の生活を実践するのが一番というのがムヒカ氏の言葉だ。
「脱・成長戦略で“1億総幸福社会”を!(http://okinaka.jasipa.jp/archives/4326)」でも言ったが、経済成長必ずしも幸福ではなく、全地球人が先進国並みの一人当たりGDPを実現することを地球そのものが許容出来ない(資源、水、食料が圧倒的に足りない)。ムヒカ氏は自らを「消費主義社会の敵」と称し、「貧乏なひととは、少ししかものを持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」と言う。さらには「お金があまりに好きな人たちには、政治の世界から出て行ってもらう必要があるのです。彼らは政治の世界では危険です。お金が大好きな人は、ビジネスや商売のために身を捧げ、富を増やそうとするものです。しかし政治とは、すべての人の幸福を求める闘いなのです」とも言っている。しかし、現実は、政治とカネの問題はなくならない。
朝日新聞で「憲法を考える」と言う連載コラムが続いているが、4月5日朝刊に「“経済による国の成長”に収斂」との記事があった。自民党の憲法改正草案の前文に「我々は、自由と規律を重んじ、美しい風土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる」とある。コラム氏は、この前文を「環境破壊には気をつけながら、教育などのすべての行動は、経済成長によるますますの発展につなげなければならない」と受け止めている。この議論は、大いに分かれるところでもあり、以前も「大国志向一辺倒で良いのか」などの議論はあった。が、昨今の新自由主義運営(競争社会)やそれが生んだ格差社会の深化が世界的に大きな問題になっており、日本でも学問までが経済成長に奉仕するものであるかのように扱われがちな現状には、大学人からも意義申し立てが相次いでいると言う。アメリカの哲学者マーサ・G・ヌスバウム氏は、これを世界的な傾向として、民主主義に不可欠な諸能力が競争の中で見失われつつあると著書「経済成長がすべてか?」で警告している。「繁栄はしているものの民主的でなくなった国に住みたいと思う人はいないでしょう」とも問いかけているそうだ。
アメリカの調査会社の調査結果が公表されているが、先進7か国の幸福度はすべて20位以下、コロンビアとフィジーが1,2位を占めている。純粋幸福度(「幸福を感じている人の比率」―「不幸を感じている人の比率」)で順位付けしているが、格差が激しい国ほど順位を下げているとの分析結果には納得性がある。ちなみにコロンビアは85点、85ヶ国の平均は56、日本は28位で52点だ、アメリカは42位、43点だ。折しも14日の各新聞で「子どもの貧困格差、日本は先進41カ国中34位」とユニセフの調査結果を報じている。1985年から2012年にかけ、格差は拡大し、真ん中の所得が約177万円から211万円に上がったのに対し、最貧困層の所得は90万円から84万円に下がったと言う。9日の記事では10代、20代の社会人の59%が自動車購買予定なし(自工会調査)とあった。将来に不安を持つ多くの人たちに消費を促す政策ではなく、足らざる所を補い合ってともに生きる社会の実現こそ、国の求めるところではないだろうか?ムヒカ氏の言葉に、もっと真剣に耳を傾けてはどうだろうか。(写真出展:www.countercurrents.org)
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