JASIPA会員である山田みち子さん(ファイナンシャルプランナー・相続士)が、この4月24日に表題の本を出版された(新潮社)。早速著者から本を贈呈され、この種の本としては初めて読ませて頂いた。副題に「老後をもっと豊かにする”お金の生かし方“」、そして本の帯に推薦者(本郷尚氏)の「資産はこれまで頑張ってきた被相続人が受けるべき対価、今あなたに必要なのは自分への”生前贈与“です」とある。著者は、もともと保険会社に勤め、その間にファイナンシャルプランナーの資格を取り、独立後は相続士の資格も取って、様々な相続問題の相談に当たられた方だ。その経験から、相談にやってくる方のほとんどが相続人(財産を受け取る側)で、被相続人(財産を残す側)からの相談はめったになかったことが、この本を書く動機になったと言う。
山田氏の視点には共感を覚えるものが多い。子ども、孫可愛さに極力多く遺産が渡るように節税対策として、二世代住宅を作ったり、息子の同居の誘いに乗ったりして、若夫婦との生活習慣の違いなどで悲劇を味わう老夫婦も数多く見てきたそうだ。そこで、山田氏は相続を気にする場合の、「悪しき考え方」と「良き考え方」を指摘する。
「悪しき考え方」は
- 子供に遺産を多く残そうとする。子どもの要求にもすぐ応じる。
- 資産が多い場合は節税にも熱心。
- 子供や孫が大事、自分の事は後回し。
「良き考え方」は
- 資産の全体像を把握し、使い道は自分で決める。
- 資産は子供に遺すより、自分が使う事を優先する。
- 頭が働くなった後、そして死後、残された人が困らないようにする。
子どもたちに甘えを生じさせると、子どもたちのためにもならないとの教えでもあり、自分で稼いだお金は自分のために使って当たり前との至極当然の勧めだ。そして、今はやりの遺言のような「エンディングノート」だけではなく、これからを生きる「再出発ノート」を書くことを勧めている。これまでの人生を振り返り、子どもの時の果たせぬ夢なども思い出しながら、これからの人生を思い描くノートだ。
自分の楽しみのために使うお金を第一義に考えたうえで、医療や介護など自分の安全を確保するためのお金も計算に入れておく必要がある。さらには、自分が動けなくなったり(認知症など)、死んだあともめ事を起こさないように、遺言書など手を打っておくことももちろん必要なことと説いている。
“再出発後の人生は楽しみ一杯”の最終章では、JASIPA事務局長(72歳)が「社会と関わり、夢を持ち続ける」とのタイトルで紹介されている。若いIT企業を支援したいとの夢を持って10年以上、今ではJASIPAになくてはならない存在感を示されている。僅かな報酬も、JASIPA会員の皆さんとの飲み会などに使われている。
「これからの人生こそ、我が真価が問われる」「如何に楽しく、満足できる生活を送るか」など、この本をきっかけとして考えねばと思う。著者は言う。「”考えたくない“と言っている場合ではない。まして遺産をほしがる子供の言いなりになっている場合でもありません。自分の体力、気力、そして財力を如何に有効活用するかを考える姿勢が大切」と。