驚きのトヨタFCV特許開放戦略!


トヨタ自動車が世界で初めて市販(昨年12月15日)を始めた燃料電池車(FCV)に関わる特許を無償で開放すると発表し、波紋を呼んでいる。FCVの開発開始は1992年、プリウスの開発開始より2年早いそうだ。20年以上の開発期間を経てやっと市販にこぎつけたということになる。その間の特許件数が約5680。巨額の投資をして開発した特許を無償で開放するのだから、よほどの決断だったと考えられる。

年初来、「水素社会元年(1月8日日経朝刊12面)」などの記事が目立ち始めた。やはり、トヨタの燃料電池車の市販発表が大きな契機となっているのだろう。ホンダも2015年中に市販を開始すると言っている。しかし、今回のトヨタの判断は、「オンリーワン」の技術のままでは、いつまでたっても普及しないとの危機感があり、巨額の投資が必要なFCVの開発に二の足を踏むライバル社などに参入を促す狙いがあると言う。トヨタはFCV車ミライ」の市販(販売価格670万円、国や自治体の支援で約400万円)を12月に発表したが、トヨタ自身もFCVの普及は限定的と考えているようで、2015年の販売台数目標はわずか400台、2020年の数万台(トヨタ販売台数の1%にも満たない)目標も変えていない。逆に、これまでの開発投資を活かすには、ライバル社に開示してもFCVを普及させることが第一と考えたのだろう。

電気自動車(EV)も思うように販売が伸びていない。いまだに車販売台数の1%にも満たない。そのため充電スタンドの建設が進まず(充電時間の問題もあるが)、販売加速のためにテスラは昨年6月にEVの特許を他社が使うのを認める方針を出した。FCVにも水素ステーションが必要だが、ステーション設置に数億円かかると言う(EVスタンドの10倍近い)。

「水素社会」はまだ緒についたばかりで、一次エネルギーからの変換効率や、運搬の問題など数多くの難問があるそうだ。推進派と懐疑派、双方があるようだが、明らかにFCVは日本が先陣を切っている。莫大な設備投資が必要なことで利権が絡み、政府の推進に発破をかけているとの話もあるが、資源のない日本にとって、夢の技術開発、何としても成功させてもらいたい。2020年の東京オリンピック、パラリンピックを絶好の世界に向けてのアピールの場にしたいとの強い思いを技術開発の推進力にしてほしい。福岡県では、北九州市などで「水素タウン」の実証実験が行われている。八幡製鉄所で発生した水素を利用して、住宅などに供給しているそうだ。

IT業界では、最近では基本ソフトアンドロイド(OS)「アンドロイド」が半導体メーカーや通信会社が参加する企業連合を通じて無償提供されている。ソフトウェアやサービスの開発を促進することでOSの価値自体を高める狙いで、IT業界では一般的な手法だ。未来の技術を1社独占ではなく開放しながら普及を促進していく、自動車業界では珍しい特許開放の決断が、世界の未来を切り開く手段になることを期待したい

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