以前から、信じられないことが国会議員、地方自治体議員に起こる。現在も民進党の山尾氏のW不倫疑惑がマスコミを賑わしている。神戸市議会の橋本市議の政務活動費詐欺事件も氷山の一角かとも思えてしまう。国民や、市民の選択を経て選ばれた公僕が、バレレバ社会的制裁を受け、自分の人生破滅の危機を招くことくらい分かる筈と思うが、なぜなくならないのだろうか?
「失敗を認める難しさ(http://okinaka.jasipa.jp/archives/37)」で、デドローの【なぜリーダーは「失敗」を認められないか】(日本経済新聞社、2011.1刊)を紹介した。その一部を下記する。
「人は現実を否認しがちで、それが疵を深くする」人間本質機能として世界的にこのような事象はあちこちで起こっていると説く。我々に身近なシステムプロジェクトにおいてもリーダーがまさに同じ過ちをおかし、泥沼にハマってしまう現実を見ると、「ヤバいなと思っても、見ないふりをする」というのは人間の本質的な特性なのか?と・・・。「否認」とは、ある不愉快な現実に対し「本当ならひどすぎる。だから本当ではない」と考える無意識の心の働きを言う。米国ニューヨーク州知事がホテルに高級娼婦を連れ込んだところを目撃され辞任に追い込まれた事件があった。記者に「あんなことをしたらいずれ明るみに出ると、なぜ思わなかった?」と聞かれて『確かに見つかったら・・・ということは頭をよぎりました。でも明白な事実に向きあいたくないがために、それを無視してしまうことも、人生ではよくありませんか?』と答えたそうだ。否認の本質が明確な事実として述べられている。
前稿は、IT業界の大きな悩みである失敗プロジェクト抑制のために、人間の特性を認識した取り組みを、デドローの教訓を参考に説くことに主眼を置いたものだった。
しかし、国民から選ばれ、国民の貴重な税金を使って国民のために働く議員の自制の利かない、非人間的な行為はプロジェクトの失敗の比ではなく、国民の目に晒され議員自身の人生の破滅を招く怖さがある。こんな中でも「ばれなけらば」「ばれることはない」「ばれても知らぬ存ぜぬで押し通せる」と現実を否認したい思いで行動に走るのだろうか?
国会論議をみていても、「記憶にない」「記録にない」あるいは「前言を撤回する」と言えば責任は逃れられ、無為な時間を税金をかけて過ごせば自分達の思いが達成できる、など一般社会では通用しない常識がはびこっているように見受けられる。「働き方改革」「人づくり改革」などスローガンは立派だが、国会議員の「働き方改革」、「人づくり改革」に真剣に取り組まなければ日本の将来が危ぶまれることになりはしないか、心配だ。人柄を判断するのは難しいが、選挙で選ぶ我々の責任も真剣に考えたい。
短所の是正か、長所の伸長か(牛尾治朗氏)
「致知2017.9」の“巻頭の言葉”で、財界の巨頭牛尾治朗氏が表記タイトルで寄稿されている(現ウシオ電機会長)。これまで、当ブログにおいても、人の育成に視点を置いて、人の長所を見抜く達人“吉田松陰”(http://okinaka.jasipa.jp/archives/2531)や、「組織として結果を出せないマネジャーの多くは、部下の弱みに目を奪われて、彼らの創造性を引き出せないでいます。」と言うドラッカー(http://okinaka.jasipa.jp/archives/2515)などを紹介した。企業経営視点では、「弱みより強みを磨こう」と言うコマツの坂根氏(http://okinaka.jasipa.jp/archives/1917)や、船井総研の「長所伸展法」(http://okinaka.jasipa.jp/archives/1875を紹介した。
今回の牛尾氏の提言は、企業経営視点だ。世界的な政治的混乱の中でのグローバル化の進展、IoTやITの進展など、きわめて見通しの難しい状況下では、自社の競争力の源泉を冷静に分析し、短所を是正し、長所を伸長して未知の状況に柔軟に対応できる体制を整えるべきと主張する。ウシオ電機を創業したころ、あるコンサルタントから「長所も短所も、君が社長であること」との指摘があったそうだ。その後、自分が社長であることが短所になっている部分は人に任せ、長所に専念していくことになる。そのことがウシオ電機を今日に至らしめたという。牛尾氏はさらに「若く勢いのあるリーダーが長所伸長に意欲的であるのに対し、慎重な年配のリーダーは短所是正により熱心な傾向がある」と指摘する。さらに、「日本企業は戦略的に短所是正を得意とする企業が多い」と、事例を挙げる。日本企業は、研究開発で千個の試作品から二百個の不良品が出れば、その二百個を徹底的に分析し、問題点を改良していく。一方アメリカ企業は、良品にスポットを当て、なぜそれが良いのかを追求し、さらに磨きをかけていく傾向が強いと。牛尾氏の経験から、優秀な商品は、長所を徹底的に追及するところから生まれることが多いという。
長所と短所は表裏一体で、長所を伸ばせば短所も増え、逆に短所を直したことで長所を殺してしまうこともある、その意味で長所の伸長と短所の是正は同時にできない。その時々の会社の状況をよく見極めながら、長所の伸長と短所の是正のどちらから着手するか決断することが肝要と提言する。会社の業績が思わしくない時には、先に短所の克服を優先し、会社の伸び盛りには思い切って長所を伸ばすことに集中するのも効果的とも。
牛尾氏の提言に共感できる。が、この提言を実行するには、自社の強み(長所)、弱み(短所)が的確に把握できていなければならない。競争相手はどこか(グローバルな競争の中では国内外も含めての話になる)、その中で、簡単に他社が追随できない自社の長所は何かを社内で共通認識できなければならない。私のいたIT業界においても、長所、短所の共通認識ができ、長所を伸ばし、短所を克服する活動が身についているかというと、なかなか覚束ないところがあるように思える。上記のような視点をもって、常に外の世界を知り、内を見ることを心掛けながら、まずは長所、短所の把握を急がねばならないと思うが、いかがだろうか?
「宝物ファイルプログラム」でみんなを元気にする!
以前、当ブログでも紹介した(“自己肯定感が劇的に人を成長させる”http://okinaka.jasipa.jp/archives/69)一般社団法人子どもの笑顔代表理事岩堀美雪さんが「致知2017.8」の対談記事に登場している。岩堀さんの「宝物ファイルプログラム」を適用して社風がガラリと変わりお客様からの評判を飛躍的に挙げたシバ・サンホーム社長柴部崇氏との対談だ。
「宝物ファイルプログラム」とは、前稿ブログでも説明しているが、岩堀氏いわく「自分の長所に目を向けて、自分のことが好きになる。つまり、“自己肯定感”を高めるための具体的で効果的なプログラム」と紹介する。さらに「人間は自己肯定感が低いと他人の顔色ばかり気にして生きづらくなったり、本来持っている力を十分に発揮できなかったりします。高くなると、家族や仲間のことがいつの間にか大好きになり、毎日が楽しくなり、持っている力を十分に発揮できるようになります。」とも。
「宝物ファイルプログラム」で用意するのは、クリアファイル。子供用と大人用があるそうだが、子供用のクリアファイルの表紙の次のページには「みんなに良いところがあるから、そのことを忘れないでね」と言って、「自分のことを大好きになろう」「家族や友達のことも大好きになろう」と書かれている。この考え方に基づいて、頑張りたいことや、好きな物、残したい写真、お世話になった人、そして自分の長所を自ら書くと同時に、友人や保護者からも誉め言葉をもらってファイルする。このファイルを見れば、保護者も気が付かない一面を知ることが出来、それがまた本人の意欲につながる。自分の長所や友達の長所など、最初はなかなか思いつかないが、時間がたつとともにいくつも書けるようになる。
社内のギスギスした人間関係に頭を悩ませていた柴部社長がある経営者向け研修会で岩堀さんの話を聞き、社内にお招きし社員研修を行っていただいた。月に1回、計3回の研修で、幼少時代からの自分を振り返りながら、両親やお世話になった人を思い出しながら、いまある自分を見つめなおす。その効果が、お客様の「皆仲がええな。元気やな。任せて安心やな」の評価となり、業績も上がっているとのことだ。
岩堀さん自身も小学校の先生として31年間勤められた中で、学級崩壊状態の小学5年生クラス担任を受け持ち、「宝物ファイルプログラム」の適用を試みたがうまくいかずうつ病寸前のところまで経験されたそうだ。が、ある時から根気よく生徒のいいところを見るようにしたところ見事に行動が変わっていき、卒業式の時子供たちが大泣きし、ある子は「先生、まさかこのクラスでこんな楽しい日が来るなって思ってもみなかったです」と言ってくれたことが忘れられないとのことだ。
”自己肯定感“、子供にとっても、大人にとっても人生を変えるキーワード。考えてみたい。