褒めて育てる!

前回紹介の日経新聞の連載「C世代 駆ける」(№9)に「褒める達人検定」の話が載っていた。記事には「高度経済成長を知らず成功体験の乏しい若手のやる気をどう引き出すか。悩める管理職が取得に懸命になっている資格がある。相手の長所を見つけ、ほめる技術を1~3級で認定する「褒める達人検定」。褒め言葉の語彙を増やし、短所も前向きにとらえる極意を磨く。09年の開始以来、セミナー受講者はのべ1万5000人にのぼる。主催会社シーズ(大阪市)が大企業の社員1000人を調べると、褒める上司のもとで働く社員の方がより多く企画を提案するなど仕事への意欲が高い事がわかった。35歳以下と若いほどその傾向が強い。怒られながら育った先輩社員たちは戸惑いながらも世代間の溝を埋めようともがく。」とある。

叱った方がいいのか、褒めたほうがいいのか?脳科学者の茂木健一郎氏は、多くのプロフェッショナルの話などで検証しながら、「叱る、褒める」の問題以上に「上司と部下の信頼関係が出来ている、上司が自分を全面的に受け入れてくれる存在である」なら、叱ることも受け入れることが出来ると言う。「部下の成長=自分の喜び」という考え方が肝心で「部下の成長=自分の苦労」というメッセージでは、部下の自発性の芽は育めない。しかし、脳には、うれしくないことや、苦しい事を逃げようとする働きがあるため、叱る際には、最初に褒めてやると、脳が受け止める態勢になり、そのあとの苦言も比較的すんなり受け入れられると言う。(「プロフェッショナルたちの脳活用法2〔NHK出版〕」より)

以前何かに書いてあったが、有るテーマを3組にやらせた。1組目はどんな成果が出ても叱り続け、2組目は逆にほめつづけ、3組目は無視し続けた。すると2日目は1組目が高い生産性を挙げたが、2日目以降は2組目が最も生産性が高くなった。3組目は常に最下位だった。すなわち叱ることは、短期的には効果はあるが、褒めることの方が高いモチベーションを維持・継続できるということだそうだ。

叱る材料はみつけやすいが、褒める材料はなかなか見つからない(本人を常日頃からよく知る努力が必要)。部下の育成のためにも、真剣に考えたい。

C世代が面白い!

日経1面に年明けから連載されている「C世代駆ける」の記事が面白い。「C世代(ジェネレーションC)」はここ数年米国で使われ始めた言葉で、「コンピュータ(Computer)を傍らに育ち、ネットで知人とつながり(Connected)、コミュニティ(Community)を重視する。変化(Change)をいとわず、自分流を編み出す(Create)世代」を言うとか。今40代の若いころは「X世代」と言われ、社会や出世と距離を置き、内向的で自分の趣味に興じると言われた。今10代、20代の若者(C世代)はインターネットと携帯情報端末の普及で再び絆を求め、人と人とつながり、街に出始めた。今40歳を迎えつつある団塊ジュニアと、それ以降の人々は右肩上がりの時代をほぼ知らない。自分達で何とかするしかない、という覚悟はバブル世代より強い。途上国なら独裁の打倒、新興国では旧秩序に挑む起業との現象が象徴的。(1月9日7面~「C世代」と拓く新世界~の記事より)

「今どきの若いものは」が口癖の高齢者は多いが、これからの日本、世界を担うのは今の若い人たち。この連載を見ると、将来をにらんで果敢に行動する若者が多いのに驚くとともに、「頼もしい!」という気持ちにさせられる。「政治を取り戻せ」と20代の投票率向上を目指す学生団体(代表はお茶の水大学の19歳の学生)で、国会議員と夕食会を開き議論している。日本の文化を外国人にアピールし、外国での「ニッポン好き」を進化させている若者たち。地域の活性化のために東大やデンバー大学を出た若者が対馬に移住し、「対馬」をブランド化するために奮闘している。徳島県でもナシ加工を営む若者がいる。孤族がバラバラに無縁社会などと言われる今の日本。その落とし穴を「Co族(Collaboration)(Co-working)」が軽々と飛び越える。東北震災地の診療、教育でも若者が率先して活躍している。

高齢化社会の到来が、ますます若者にしわを寄せ、将来に向けての希望を失わせることが危惧されている。私もまさに団塊世代。若い人たちの頑張っている様子を知るほどに、若い人たちに負担を強いる構造は何とかせねばならないと強く思う。

「情報産業新聞」1月1日号に登場

昨年末にブログ(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2011/12/24)に記した「グローバル社会の人材育成」がテーマの対談記事が、情報産業新聞の1月1日号に掲載されました。IT業界に人材を送り出す専門学校の経営者と、人材を受けるIT業界団体との新春座談会という形で紹介されています。後者を代表して、中小ITベンダーの経営者が集まるJASIPA特別顧問の私が参加しました。国内IT市場規模がますます減少する流れの中で、いかにグローバルに戦える人材を育成するか、ITベンダーでも大きな課題になっているが、人材供給側も非常に関心が高く、今回の対談も専門学校側からの提案で実現しました。

英語ができると言うだけでは、グローバル人材とは言えない。「お客様から信頼を得られるベンダー、人材とは」の追求の中に、グローバル人材の答えはある。まさに、多重下請構造から脱皮し、お客様に真のサービスを提供できる業界に生まれ変わるための人材育成像を追求するのと同義とも言える。そうでなければ、海外のコストの安い労働力と競争はできず、海外へ進出している日本企業からも見離される。このような視点で、人材供給側の大学、専門学校と、受け側のITベンダーとの対話がもっと必要だとの認識を得ることが出来た。

日経に年明けから連載中の「C世代駆ける」に若い世代の活躍の様子や、期待像が描かれている。今朝の記事では、「社員を採用するうえで語学力重視するかの設問に、「重視」「やや重視」を合わせると74%だが、非重視も23%あり、海外展開を急拡大する新日鉄やキリンビールは‘非重視派’で採用段階では別の能力も必要と言えそう」とある。

情報産業新聞の記事に関しては、現在PDF化してもらっており、いずれJASIPA会員にはお見せできると思います。

冲中一郎