「日経SYSTEMS 2012年1月号」に「さらば失敗プロジェクト」と題した特集をしている。その一部情報がITproに掲載されていた(2011.12.21)。その記事に驚くべき事実が載っていた。
現在または直近の開発プロジェクトの94.5%に深刻な問題が発生し、そのうち89.9%が同じ失敗を繰り返している。~昨年10月から11月にかけてITpro上で実施した調査結果で、システム開発に携わる当事者が、自分達が参加したごく最近のプロジェクトの実情を答えてくれた貴重な現場の声~とある。発生した問題としては、スケジュール遅延が45%,コスト超過21.7%、稼働後のシステム障害14.5%、関係者間の信頼関係の悪化10.1%。
失敗の原因としては、「人間力の欠如(合意形成が上手くいかない、対立関係を解消できない)」が44.9%、「マネージメント力の欠如〔計画が甘い、指示・伝達がまずい〕」43.5%と続き、「技術力の欠如」は11.6%と低かった。
現場実感として、ここまでひどいとは私は思っていない。これまでアメリカ、日本などにおけるプロジェクト成功率は20~30%というデータが何度か発表されていた記憶がある。それでも低いが、今回の調査結果は、「開発に加わった当事者の意見」というのが味噌かも知れない。すなわち、開発当事者の「プロジェクト終了時の満足度」を表しているものと考えた方が、問題は浮き彫りになるかも知れない。「いいシステムが出来た」「お客さまにも喜ばれた」「自分はプロジェクトを通じて成長できた」「部下も育った」・・・のような達成感が、今のお客様との関係(従属関係)や、外注パートナーとの関係(多重下請け)、プロジェクト管理方法で味わえるのかどうかが本質的な問題として浮かび上がるのではなかろうか。
先日、当ブログでも「世の中に亡くならないもの(http://jasipa.jp/blog-entry/7161)」とのタイトルで、失敗プロジェクトの話をした。今、ITベンダーにとって、お客様と一体となってお客様のためになるサービスを提供し、お客さまから信頼されるIT業界に変貌することが叫ばれている。そのために「受託開発型からサービス提供型へ」、「労働集約型から知識集約型へ」、「多重下請け型から水平分業型へ」、「顧客従属型からパートナー型へ」、「国内競争から国際競争へ」の転換を積極的に図らねば、この実態からの脱却は出来ないのではなかろうか。失敗プロジェクトを減らす(同じ失敗は根絶)のはもちろんのこと、お客さまから、真に価値ある業界、満足を提供する業界と認められなければ先はないとの危機感を持って行動することが、今まで以上に求められている。