IT業界も組織風土改革への取り組み急ぐ?!

9月5日のIT Proニュースに「悲鳴を上げるIT業界から組織風土改革の依頼が急増中」のタイトル記事が掲載された(http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20120824/418022/?ml。2012.6月号の日経情報ストラテジーの特集「組織風土改革の第一人者柴田昌治氏と考える、いい会社の条件」掲載と前後するように、柴田氏のスコラ・コンサルトにIT業界の方から、自社の組織風土改革のお手伝いの依頼件数が急に増えたそうだ。

リーマン・ショック以降、スコラ・コンサルトに寄せられたIT業界からの相談内容を集約していくと、次のようになるという。

1.SE(システムエンジニア)が多い職場で、会話や相談、協力ができていない
2.顧客の言いなりで多忙を極め、相談もし合えないことが原因で、メンタルヘルスの不調を訴える問題が増加している
3.マネージャーもプレーヤーにならざるを得ず、人を育てる余裕がない
4.請負仕事から提案型の仕事になかなか転換が進まない、対話能力が身に付いていない
5.親会社から“与えられる”仕事に頼っていたシステム子会社の行き詰まりと、急な「自立」要求へのプレッシャー(自ら考える仕事に転換できない)
6.そもそも会社が「目指す姿」が見えない、定まっていない

現在の不況から脱することが出来ても、IT投資額は元には戻らないとも言われている。JISAの言うパラダイムシフト、「受託開発型からサービス提供型へ」、「労働集約型から知識集約型へ」、「多重下請構造から水平分業型へ」、「顧客従属型からパートナー型へ」「ドメスティック産業からグローバル産業化へ」は必然の方向とも言える。 このような問題認識が浸透し、経営者が喫緊の課題として捉え、風土改革に取り組み始めたということであれば喜ばしいことだ。

今月のJASIPA理事会で、JASIPAの日本名をどうするか議論した(以前から‘JASIPA’だけではどんな団体かまったく分からないため、日本名を考えようとの機運があった)。結局、

日本サービスイノベーション・パートナー協会

となった。大きな目標だが、これを会員企業の共通の目標として各種活動を盛り上げ,各社の風土改革も支援していきたい。

日本人以上の日本人と言われる“白鵬”

昨年10月17日当ブログでは、大鵬との対談記事を紹介した(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2011/10/17)。その際、大鵬が「普通の日本人力士よりよっぽど日本の歴史や相撲の歴史を知っており、日本の伝統文化を守ってくれている」と言ったことを紹介した。再度、「致知2012.10」で今度は、経営破たんした日本航空をわずか1年で再生させた稲盛和夫氏との対談記事がある。

稲盛氏も対談の最後で、「ここまでの話を聞いて、本当に横綱は普通の日本人以上に日本人らしい心をもっていらっしゃる。白鵬さんが横綱になられて、大相撲は日本の国技なのに、外国人ばかりだ、という批判が少なくなったような気がします。相撲だけではなく、その心を追求してこられたから、そうなられたのだと思います」と言っている。

白鵬は、稲盛会長が塾長の「盛和塾」の会員になっている(昨年)。柔道の山下泰裕、サッカーの岡田武史氏も会員だ。前項でも紹介したが、白鵬の持論「心・技・体は心が8割、技・体は2割」に基づいて、心を磨くために稲盛氏の講演やCDなどを繰り返し聞いているそうだ。「未だ木鶏たりえず」と安岡正篤氏の教えを請うた双葉山を信奉し、相撲は心だと悟ったと言う。稲盛氏は、「経営も同じで、日本航空の再建でも、再建の主役は自分自身であり、その当事者意識を持つことの大切さを説き続け、その意識が変わることによって同時に業績も向上した。全社員の心を一つにすること、それが経営もポイント」と言い、盛和塾の「心を高める、経営を伸ばす」のテーマが相撲道も同じということで白鵬と意気投合している。

白鵬の話では、双葉山は右目がほぼ見えなかった中で、69連勝を達成したことの素晴らしさを言う。立ち合いでも「勝ちに行くぞ」という気負いがまるでなく、相手の立ち合いをしっかりと受け止めてから自分の型に持っていく。そういう立ち合いを「後の先」というが、右目がほとんど見えない中で立ち合い遅れを克服したそうだ。そして69連勝がストップした時、安岡正篤氏に「ワレイマダモッケイタリエズ」と打電したそうだ。

白鵬は、双葉山が目指した「木の鶏のように動じない心」を目指して相撲道にすると同時に、武道を通じて日本の子どもたちに精神を鍛えて頑張るようメッセージを発信し続けることを夢とすると言う。この話に稲盛氏は「自身が強くなることに加え、青少年の夢を育んでいきたいと言う姿勢は、“才能を私物化しない”との自分に言い聞かせてきた言葉と通ずるものがある」と、称えている。

これまで長い間一人横綱で頑張ってきた白鵬。大相撲も9月場所真っ最中。5人が連勝継続中だが、二人横綱にしてやりたい気持ちと、白鵬に優勝させたい気持ちと複雑だ。

「自分を信じる勇気」を持てますか?

マリナーズの川崎宗則内野手、女子プロゴルファーの金田久美子選手などのトップアスリートや一流経営者を成功へと導いてきたメンタルトレーナー久瑠あさ美さん。これまで延べ1万人以上のクライアントと向かい合ってきた人の「心のあり方が人生の価値と質を決める」との記事に注目した(致知2012.10.)。

「誰しも底知れぬ力を秘めている」。多くの人は自分が見えていることや認識できていること、つまり顕在意識がすべてと思っているが、その顕在意識が脳に占める割合は僅か3~10%と言われているそうだ。残りの90%以上の潜在意識、自分の中に眠っている底知れぬ力の存在に気付いていないと言う。その潜在意識を引っ張り出すのが久瑠さんの役割。

お父さんの会社が倒産して先行きの選択肢が狭まったり、モデルや女優として成功しつつあったときに自宅マンションが火事になってすべて失ったり、そんな危機状態の時も、前向きに肯定的に物事を捉えることによって自分の潜在意識に火をつけ、新たな道を進む、そして行き着いたのが心理カウンセラー。初めてのお客様だった、恋人の暴力に不眠症で打ちひしがれている女子大生に無我夢中で対応していたところ、目に輝きを取り戻し、自ら人生を切り拓いていったそうだ。その時、人間の底力、潜在力に感動し、自分のライフワークにすることを決意したとか。

久瑠さんが大切にしていることは「クライアントの性格を変えようとか、意図的に精神を強くさせようとかとはせず、自らの内側にある潜在能力は自分が思っている以上に素晴らしいのだと自覚させること」と言う。アスリートがスランプに陥った時、自分を疑うことがパフォーマンスに最も悪影響を及ぶす。天性の感覚でやれていたことを頭で考えだすとおかしくなる。川崎選手には、俊足を持ち味にしている感覚を取り戻すために、チータの走りやサッカーのロナウジージョ選手のビデオを繰り返し見せ、動きのリズム、テンポ、間合いを感じ、潜在意識に自分の成功体験として内在化させていく。久瑠さん自身も、一人一人違う心に対して、自分の中の固定概念や一切のフレームを排除し、感性でクライアントに対する。

久瑠さんは、潜在意識に気付き、立ち直る人は「自分を信じる勇気」を持っている人と言う。経営者でも「根拠のある自信」が揺らぎ落ちていく人が多い。自分のフレームを度外視して生きていける人、明日生きることに根拠なんかいらないって思える人間の強さが必要。「資格を取る」、「人脈を作る」のも大切だが、それを使いこなす心が備わっているかどうか。その心は、「使命感」。打たれようが、スランプだろうが、心の次元が高まっていれば諦めず、「人生のリングに上がる」ことが出来る。クライアンへの最初の質問は「自らの人生を懸けて何をしたいのか?」「その仕事を通してあなたは何を伝えたいのか?」だ。格闘家は、「観客に感動を与える」ためにリングに上がる。

形ある者は有限だが、人間の内なる心の世界は無限。誰もがその潜在意識を出し切っていない。自分を信じて前に進もう!

冲中一郎