大学生のインターン制度が変わる!!

夏休みなどに1か月以上、実務に就く長期インターンシップの人気が高まっている。専門サイトでは登録者数が前年比3割増え、月額40万円を支払う企業も相次ぐ。ジョブ型など専門能力を問われる雇用形態が増える中、学生は「修業」できる場を希望。企業は優秀な学生が大学で学んだ最新の知見を事業に活かす狙いがある。

上記は9月4日日経朝刊記事「インターンで月給40万円~プリファード、入社は問わず、最新研究 学生から吸収~」のタイトル記事の前文だ。

まず紹介されているのは、日本屈指のユニコーン企業「プリファード・ネットワークス」で、人工知能分野では有名な企業だ。優秀な学生を採用するために、2014年から長期インターンを始めている。今年も8月10日から1か月半のインターンを開始している。プリファードは、参加者を選考する場合、同社への入社希望は問わない。社員はビジネスでの実用化に注力するため学術的な発見に遅れる懸念から、コストをかけても「大学で最先端の研究をしている学生の経験を共有する」ことを最大の目的としている。1日8時間、週5日勤務で時給2500円、月給換算で40万円超だと言う。今ではIT大手の幹部が「自社で学生の能力を見極めるより、プリファードでインターン経験の方がよっぽど確かな技術力の保証になる」と話すほどの評判らしい。

LINEも長期インターン制度を実施している。6週間で約60万円を支払う。実際にサービスに実装する機能を担当させ、達成感を与える。他社に就職してもこの達成感を思い出し転職してくるそうだ。優秀な人材を集める種まきの場と位置付けている。

現時点では、20年卒のインターン経験者で「1か月以上」は5.2%どまり。対して「1日」は70.6%との調査データがある(リクルートキャリア)。一方で長期インターンへの関心は高まっている。期間3か月以上の案件を扱う情報サイト「ゼロワンインターン」では、8月時点の登録学生数は前年比34%増の約6万8千人、登録企業数は12%増の1208社となったそうだ。現場の裁量で実務を任せやすい中小企業が中心らしいが、大手企業でも動きが出始めたと言う。三菱UFJ銀行は19年に2か月間で導入し、大量の金融データを活用したAI開発などを経験してもらい、理系学生の間で話題にあることを狙う。経団連と大学の協議会は今年4月、1日インターンは教育的意義に乏しく「あり方を早急に検討する必要がある」としたそうだ。

記事の最後に小河愛実氏の下記コメントが日本のインターン制度の変化を示唆している。

ジョブ型採用で先行する欧米では、長期インターン制度が主流で半年から1年かけて学生の能力を見極める企業も多く、米フェイスブックでは月給が”8000ドル“に達するそうだ。日本でも日立やKDDIなどジョブ型雇用に舵を切る大手企業が増えつつある。中途採用や海外採用も含め、高い専門性を持つ人材を採用しやすくするためだ。

コロナ禍で、テレワークやワーケーションなど働きかたの変化が加速し、ジョブ型への雇用の変化も進むなか、競争がますます激しくなり、如何に優秀な学生を見極め、採用するかが企業の生命線になると思える。人事制度の一環としてインターン制度を考えてみることも重要な施策ではなかろうか。

ハーバードでも「心理的安全性」に注目!

「ハーバードで一番人気の国・日本」(https://jasipa.jp/okinaka/archives/4478)などの著書で、米国有名大学で日本のことが取り上げられることが多いことを紹介されている佐藤智恵氏が、6月に「ハーバードはなぜ日本の”基本“を大事にするのか」(日経BP)を出版されている。

“前作の続編”との位置づけで、ハーバード大学経営大学院で取り上げられている日本企業をさらに掘り下げ、ラーメンの国際化を果たした安藤百福氏、AKB48のアジア進出、亀田製菓の“柿の種”の米国進出、世界初”宇宙のごみ掃除“に挑むアストロスケール、革新的人事システムのリクルート、高収益と社員の幸せを両立させているディスコ、50年かけて製品化したホンダジェットを未来へ羽ばたく日本のイノベーションとして詳述している。

その中で、前作の中でも紹介した東日本大震災時の福島第二原子力発電所の事例を再度紹介し、その成功の要因をチーム増田の「心理的安全性」として紹介している。「心理的安全性」に関しては、「心の資本を増強せよ」のタイトルのブログ(https://jasipa.jp/okinaka/archives/9256

米グーグルが大掛かりな社内調査を経てたどり着いたキーワードが「心理的安全性」だとして紹介した。チームにおける心理的安全性と生産性の関係を初めて実証したのは、1999年ハーバードのエドモンドソン教授で、「チームメンバーがお互いに“このチームでは対人リスクを取っても大丈夫だ”と信じている状態」と定義した。「失敗を報告したら罰せられる雰囲気」は社員を委縮させる。エドモンドソン教授が著書の中でグーグルやトヨタ自動車と並んで「心理的安全性」を創出した事例として紹介されているのが、東京電力福島第2原発を救った「チーム増田」の事例だ。

福島第1原発の大事故は周知の事実となっているが、10km離れた福島第2原発はあまり報道されていないが、第一原発と同じくらいのメルトダウン寸前の深刻な被害を受けていた。

刻々と変化する現実に、所長と作業員が一体となって作業の優先順位を確認し、皆の知恵と不眠不休の努力でメルトダウン直前(2時間前)にすべての原子炉での冷温停止を達成することが出来た。なぜ福島第二原発で見事に大惨事を回避できたのか?エドモンドソン教授は著書の中で「心理的安全性を高めるためのリーダーの正しい行動」として次の8点を挙げている。

  • 直接話をしやすい雰囲気をつくる。
  • 自分が今もっている知識の限界を認める。
  • 自分も良く間違うことを積極的に話す。
  • メンバーの意見を尊重する。
  • 失敗を罰せずに学習する機会であることを強調する。
  • 具体的ですぐに行動に移せる言葉を使う。
  • 「やっていいこと」と「やってはいけないこと」の境界線をはっきりさせる。
  • 「やってはいけないこと」をやってしまったメンバーには公正に対処する。

著者佐藤氏は増田所長に、上記8点を軸に震災前から震災後に至る行動を振り返っていただき、その結果を報告している。詳細は省略するが、基本は社員に忌憚のない意見を求め、結果責任は自分が持つ。そしてその行動を態度で示し社員の信頼を得る、しかし、やってはいけないことはしっかり注意することは必要との姿勢だ。

トヨタの「アンドン」を心理的安全性の観点からエドモンドソン教授は説明している。「トヨタは失敗や問題をすぐに報告する文化があります。これは心理的安全性があるからこそできるのです。トヨタの企業文化には、心理的安全性があり、それがカイゼン活動を推進し、高品質の車を作ることにつながっている。」と。

ハーバードでも教材になっている半導体製造装置メーカーのディスコを独自の組織の構築に成功した学びの多い会社として紹介し、「現代においては”既存の組織の維持“よりも”新しい組織形態の構築“が人事のますます重要な仕事になりつつある」とバーンスタイン準教授

は言っている。

働きかた改革が進められているが、「心理的安全性」の観点で、現状組織を見直し、社員全員がアイディアを自由に出し合える新たな組織に作り直し、これからの厳しいグローバル競争社会に対処していくことも必要ではないだろうか。

”ポテサラ””が問う家庭の姿(日経)

8月5日の日経朝刊6面Opinion中外時評に「“ポテサラ”が問う家庭の姿」との論説委員辻本浩子氏の記事に目が留まった。というか「ポテサラ」と言う聞いたことのない言葉に引かれたというのが正しい。

“ポテサラ”とは7月にネット上で話題になった”ポテサラ論争“で、きっかけは

幼児を連れて買い物中の女性が、総菜コーナーでポテトサラダを手に取ったとき、高齢男性が「母親ならポテトサラダ位つくったらどうだ」と言い、女性がうつむく

と言う内容だ。近くにいた人が女性を応援する趣旨で投稿するとあっという間に拡散したそうだ。約30万の“いいね”があったとか。身近なテーマで同じ思いをした人が多いからこそ話題になったのではと辻本氏は言う。

ポテトサラダはシンプルに見えて結構手間のかかる料理であり、特に”母親なら作れ“との女性に対する上から目線の価値観の押し付けが問題だと言う。

7月末に出た男女共同参画白書のデータが紹介されている。働く男女の、仕事のある日の家事時間を比べたものだ。独身時代は男女とも家事の時間はほぼ同じだが、結婚すると女性が男性の2.6倍になる。子供が生まれると2.8~3.6倍にまで差が広がる。

コロナ禍で在宅勤務が増え夫婦ともに家で働くケースも出てきて、これまで潜在化していた夫婦間の不均衡が目にもさらされている。コロナ禍を機に家事・育児の分担を工夫したと言う人は約3割いたそうだ(内閣府調査)。多いとは言えないが変化は生じつつある。男性の長時間労働抑制など、男性の分担をより増やすには働きかた改革も必要となる。

2019年の男女平等度調査でも世界153か国の中で121位と下位に低迷している。政府の目標であった女性管理職比率30%(2020年)も大きく未達成で、仕切り直しとなった。コロナ対策で評価を挙げたドイツ、ニュージーランドの宰相は女性だ。諸外国では、重要ポストで活躍する女性も数多く顔を出す。日本では、政治の世界や財界の要職の女性比率も圧倒的に低い。これからの人口減少に備え、女性活躍の推進は不可欠だ。女性の家事・育児負担を男女平等にし、女性の能力を最大限活用できる社会を実現させるため、男性の意識改革も急がねばならない。

私ことだが、退職して家事の大変さが良くわかった。先述の内閣府調査でも、献立を考えるのも「妻」、「どちらかと言うと妻」が8割以上と言う結果が出ている。しかし、今更分担を変えると言うのも躊躇する自分がいる。料理実習講座を受けたが、いまだに料理は献立を考えるのも含めて家内の仕事だ。「女性活躍推進」は日本の将来の重要課題だが、どうやったらいいのか、皆さんはどう考えますか?

冲中一郎