会社に社長をサポートする№2はいますか?

「優秀なナンバー1がいるのに潰れた会社はゴマンとあるが、優秀なナンバー2がいる会社で潰れたところはほとんどない」と言うのは、西田塾も運営し、30年あまり会社経営をアドバイスしてきた㈱サンリ代表取締役会長西田文郎氏。西田氏に関しては、以前にも、北京オリンピック金メダルのソフトボールチームの指導方法に関して、当ブログにもUPした(http://jasipa.jp/blog-entry/7406)。

最近、「№2理論 最も大切な成功理論」(現代書林)を出版された。平たく言えば、ナンバー1はCEO(最高経営責任者)の役割、ナンバー2がCOO(最高執行責任者)の役割を担う。ある程度会社が大きくなってくると、たしかにこの役割を同一人物が行うことには無理が生じると思う。CEOは明日を語り、COOは社長の思いを実行に移す。そのために、経営サイドと社員サイドの間に立って、ミドルマネージメントを担うのがナンバー2との主張だ。ホンダの事例が良く紹介されるが、技術屋の本田宗一郎氏と事務屋の藤沢武夫さんという、得意分野をうまく補完し合う関係もある。専門分野を違う二人で視野を拡げる事例として、ホンダを「世界のホンダ」に押し上げた排気量50ccの小型オートバイ「スーパーカブ」の話があった。自動二輪といえば90cc以上が常識の中で、本田宗一郎氏も技術屋として「50ccは無理」と思っていたのを、藤沢氏が強引に50ccのカブを推し進めた成果と言う。前回のブログ(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd)でも書いたが、ナンバー2は、権力の座に長くいると、傲慢になりやすいため、ナンバー1に対する牽制機能を果たす役割も担う存在でもある

西田氏は、ナンバー2になる人の人選には慎重を期す必要性を訴える。「利己ぶっている人」や「要領の良すぎる人」は絶対にダメで、決定的な要件は、「仕事能力」よりも「自己犠牲能力」と言う。そして、ナンバー2になる七つの心得を挙げる。

  • ①トップの考え方を徹底的に理解せよ
  • ②「自分の美学」を捨てよ
  • ③ナンバー1に心底惚れよ(ナンバー1はナンバー2が喜んで自己犠牲を払ってくれるような、魅力ある人間でなければならない)
  • ④形だけでもナンバー1を立てろ(どうしても惚れられなければ、尊敬せよ。尊敬もできなければ、せめて好きになれ。好きになることも出来なければ仕方ないから形だけでもナンバー1を立てろ。そのうち好きになる)
  • ⑤愚直であれ。とことん愚直であれ。
  • ⑥大いなるイエスマンであれ(無責任なイエスマンではない。誠実で実直なイエスマン。トップに自信と確信を与えられるイエスマン)
  • ⑦トップにヒントを与えて、積極的に助ける黒子になれ

要は、お互いに信頼でき、権限も委譲でき、自分の弱いところを補完してくれ、そして部下にも惚れられる人材をナンバー2として選ぶこと。そのためには、ワンマンは怖いとの認識をナンバー1が持つことから始まる。経営者としては、一度、じっくり考えたいテーマだ。

耳触りな話を聞けるか?

日頃余りしない資料の片づけをしていたら、表題の新聞の切り抜きが目に留まった。裏の記事がロンドンオリンピックなので、昨年8月中ごろの日経の記事だと思う。元アサヒビールの社長だった樋口廣太郎氏に関するエピソードだ。「樋口廣太郎の『感謝』の仕事学」の本の中の話で、日経特別編集委員の森一夫氏が書いたコラムだ(樋口氏はその1か月後に86歳で亡くなられた)。

「悪い情報ほど積極的に集める。それに耳をふさぎ、目をそらしていたら、気付いた時には取り返しのつかない事態を招きかねません。」という。だが、誰しも偉い人の機嫌を損ねたくない。そこで耳障りな話を持ってきた部下には「大切なことを教えてくれてありがとう」と感謝しなさいと戒める。

他の経営者も似た話をよくするが、実際には苦言を嫌うお偉いさんが多いようだと森氏は語る。住友銀行の頭取、会長を歴任した磯田一郎氏に森氏が取材に行くと「最近、うちの評判はどうかね」と行内では入らない情報を探っていた。

その磯田会長に副頭取だった樋口氏は、商社のイトマンへの野放図な融資をいさめた。気に障ったのだろう。「邪魔立てするな」と一蹴された(自著「樋口廣太郎 我が経営と人生」より)。ある同行元幹部によると、部屋を出ようとする樋口さんにガラスの灰皿が投げつけられたそうだ。樋口氏がアサヒに転出したのはこれが原因だったらしいと森氏は言う。名経営者とたたえられた磯田氏だったが、絶大な権力に毒されたのだろう。このイトマン事件で失脚し晩節を汚した。

森氏は最後に言う。「一般的に狭量な人物は、耳の痛い話を聞きたがらない。結局は人間としての器の大きさに帰する問題である」と。

稲盛氏が、日々「動機善なりや」と自らに問いかけながら、いろんな施策をうったと聞く。人間とは弱いもので、権力の座に長くいるとついつい傲慢になりやすい。信頼できる「ナンバー2」を必要とする理由とも言える。

助けて!組織風土改革にすがるIT業界

こんなタイトルの記事が、今日のITpro 日経情報ストラテジーに掲載されていた(http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20130124/451669/?mle)。戸川尚樹記者の記事だ。組織風土改革の第一人者として、「会社を変える日本式最強の法則」(ダイヤモンド社、2002)など多数の著作本があるスコラ・コンサルトの柴田昌治氏は、昨年2012年6月号の日経情報ストラテジーで「組織風土改革の第一人者 柴田昌治氏と考える、いい会社の条件」を特集したが、「6月号の特集掲載と前後するように、IT業界の方から、うちの会社の組織風土改革もお手伝いいただけないでしょうか、とお声がけいただく機会が増えました」(http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20120824/418022/?ST=cio)と言う。今回の記事は、「組織風土改革が待ったなしのIT業界」との問題認識のもと、今年の5月号で「組織風土改革の処方箋」を特集するため、職場の実態を知るアンケート回答依頼である。

昨日、あるJASIPA会員企業様から声をかけて頂き、該社が初めて「パートナー会」を開催するにあたって講演をする機会を頂いた。「お客様の価値を感じて働く企業へ」と題して約1時間50名ほど集まられたパートナー(ITベンダー)の方々を前にして話をさせて頂いた。JISA(情報サービス産業協会)でも大議論になっているように、今、日本のIT業界はこれまでにない、脅威に直面している。マーケットは縮小し、お客さまからの真の信頼が得られていない中で、パイの奪い合いになっている。こんな環境の中で、何をしなければならないか?これからは「サービス競争(付加価値競争)」になる。そのためには、お客様の期待を常に把握し、その期待に応えることを第一義とした「全員経営」の必要性を訴えた。と共に、「社員の成長」こそが企業の成長の価値源泉との話もさせて頂いた。先般紹介した坂本光司先生の「日本でいちばん大切にしたい会社」のご講演でも「人を大切にする会社が成長する」(http://jasipa.jp/blog-entry/8437)と言われたが、まさに私の思いと一緒だった。自らの強みを把握し、社員と思いを同じくして、その強みを伸ばしていく、そのため原動力は社員の高い意欲だ。

昨年来、JASIPA会員企業からお声を頂き、お話をさせて頂いている。サービス競争が激化する中で「お客様の価値を感じて働く企業」に脱皮して頂くために、私も何らかのお手伝いが出来ればと思っている。該社の方がFBに挙げていただいた写真です。

冲中一郎