はみだす人がイノベーションをおこす?!

今朝の日経の6面「活かす企業人」にクレディセゾン人事部長の武田雅子氏が投稿している。カード事業も厳しく、常にイノベーションが求められている状況の中での採用方法が面白い。求める人材像は、「常にクライアントオリエンティッドで活躍できる人。ルールの中でレールに乗る人ではなく、自分たちのやり方や過去の慣習、業界の常識をも超えて働ける人」という。そのような人材の見極め方がユニークだ。

入社希望者に、自分がどういうタイプかを設問に答えながらネット上で自己診断する「夢中力診断」を受けてもらう。これは社内で活躍している人を分析して「兄貴・姉御系」「切り込み隊長系」「異才オーラ系」「インテリガテン系」「こだわり職人系」「何とかします系」「メンバー思い系」の7タイプに分けているもの。こういう多様な個性を持つ夢中人が集まって熱く議論を戦わせたときにイノベーションと言う化学反応が起きるので、「夢中になれる力=夢中力」を重視しているとのことだ。選考の際、5人程でのグループワークを実施し、集団の中で主体的に動けるか、全体を意識出来ているかを見る。さらに最終面接では「自分が過去に成長したと思ったのはいつ?」と質問をし、自ら限界を決めず、目標の為には自分を変えられることを知っている人かどうか確認する。その行動に再現性があるかも含めて。

該社では、新人の80%が女性で、係長以上の役職者の約半数が女性とか。以前も紹介したがクレディセゾン林野宏社長が、昨年末にまた本を出版されている。「BQ~次代を生き抜く新しい能力」(プレジデント社、2012.12)で、この熾烈な競争の中で勝ち残るビジネスパーソンに必要なスキルは「BQ(Business Quotient)=ビジネス感度」と言う、従来からの主張を本にされたものだ(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2011/6/2)。

時代時代に応じた会社が必要とする人材を定義する方策として、上記のような分類は非常に面白い。命名が楽しい。会社が求めている人材像をみんなで話題にしながら、己を知り、自分を変える目標つくりも出来る。「事業は人なり」と言いつつ、どんな人を求めているのか、社員に分かりやすく言っている会社は少ないのではなかろうか。

常にトップクラスの評価の亀田総合病院

深刻な医師不足や財政難から存続が危ぶまれる医療機関がある一方、高度医療の確立や患者本位の医療の実践で絶大な支持を得る病院もある。千葉県鴨川市にある亀田メディカルセンターは、房総半島の南東部と言うローカルな立地条件にありながら、全国の病院ランキングで常にトップクラスの評価を得てきた。患者の心をつかみ、職員の働く意欲を高める亀田メディカルアセンターの亀田隆明理事長に聞く。(「PHP Business Review 松下幸之助塾2013.1・2」の「まず‘YES’から始めよう~患者・職員双方に約束する“最高水準”の医療~」の記事より)

医師、看護師含めた職員の数3700名、1日の外来患者数3000人。都心から2時間と言うローカルな場所で、これだけの規模を維持できるのはなぜだろう。まず、亀田メディカルセンターの企業理念を挙げておく。

使命

  • 我々は全ての人々の幸福に貢献するために愛の心を持って
  • 常に最高水準の医療を提供し続けることを使命とする

価値観

  • その最も尊ぶところ:患者様のために全てを優先して貢献すること
  • その最も尊ぶ財産:職員全員とその間をつなぐ信頼と尊敬
  • その最も尊ぶ精神:固定概念にとらわれないチャレンジ精神

Do & THINK

固定概念に捉われないチャレンジ精神を発揮するために、「考えるよりも先に実行せよ!」ということ。東日本大震災時、この精神が活かされたと言う。3.11当日夜には災害派遣チーム第一陣が現地入りした。院内の停電対応が終わった14日には被災地の福島県いわき市の常盤病院の透析患者の受け入れを開始。その後、同グループの介護老人保健施設の入所者・職員など200名を施設ごと受け入れに奔走し、近くの「かんぽの宿鴨川」の協力を得て21日に受け入れ完了。他にも、世界に先駆けて、患者さんの利便を図るため、1995年に電子カルテを導入。

Always say ‘YES’

「患者様のために全てを優先して貢献する事」を最も尊ぶ価値観だ。だから、患者様から何か要望された時には、まず‘YES’と答えることをモットーにしている。どんな要求にも応えろと言う事ではなく、ほんとに出来ないのかどうか、まずは考えてみようということ。全室個室の病棟では患者様が指定される方にICカードを渡しいつでも面会可能としたり、院内に「カスタマーリレーション部」を設置し、コンシェルジュという専門スタッフを配置して、患者様だけではなく病院を訪れるすべてのお客様の問い合わせ(医療以外でも)に応えることにしているとの事。私も当ブログで「まずは’YES‘で答える,」効用をテーマにしたいくつかの記事を書いている(http://jasipa.jp/blog-entry/7640)。

亀田なら最新の医療設備が充実していてそれらを存分に使える、最先端の高度医療技術を身に付けることが出来る、自分のやりたいことにチャレンジできる、そういう魅力的な環境があるから、優秀な人材が集まる。天皇陛下の心臓手術執刀医天野先生も後期研修医時代亀田病院で過ごされている。社員、お客様からの信頼が世間の信頼を生み、いい人が集まるいい循環を生む。ローカルな土地に立地しながら、この循環を生み出し、最高の評価を得ている亀田メディカルセンターに、一般企業も学ぶべき点は多いと思う。

「ステークホルダーマネージメント」の重要性が増してきた!

プロジェクトマネージメントに関する知識を体系化したグローバルなデファクトスタンダードであるPMBOK(Project Body of Knowledge)第5版が昨年12月に公開された。その中で、これまでは「ステークホルダーマネージメント」は9個の知識エリアの一つである「コミュニケーションマネージメント」の中の1要素であったのが、10個目の知識エリアとして新設されたとの事だ。1996年の第1版発行以降知識エリアの新設は一度もなく、PMBOKの歴史の中でも画期的なことらしい。世界的に見ても「ステークホルダーマネージメント」が重要視され始めたと言うことだと、日経SYSTEMSの矢口竜太郎記者は言う。

その矢口記者が、日経SYSTEMS3月号の特集「プロジェクトの協力者を増やすステークホルダーマネージメント」に関してITproに投稿している(http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20130225/458741/?mle)。なぜ、ステークホルダーマネージメントが重要になってきたか?「ステークホルダーマネージメント」とは、プロジェクトの利害関係者に参画意識を促し、プロジェクトへの協力者に変えていくことを言う。このことが以前にも増してとみに難しくなってきたとPMの多くは感じている。

一つは、プロジェクトの広がりだと言う。特にクラウドの共同利用の広がりで、グループ企業や海外拠点を巻き込むプロジェクトが増えてきたこと。もう一つは、抜本的な業務改革に踏み込むプロジェクトが増えたため、抵抗感もあり、ステークホルダー同士の利害衝突も生まれやすくなってきたこと。プロジェクトへの参画意識が薄かったり、プロジェクトそのものを面白く思っていなかったりするステークホルダーを一つのゴールに向かわせるのは容易ではない。こういう背景から、PMの役割として「ステークホルダーマネージメント」がより重要になってきており、管理能力だけではなく、良好な人間関係を築くための「人間系スキル」が必要になってくる。

日経SYSTEMSでは、一線級のPMに取材し、「真のキーパーソンを見つけるワザ」「印象を良くする会議進行のワザ」「確実に合意を得るワザ」などの現場技を多数掲載しているそうだ。世の中からバースト案件がなくならない要因の一つとも言える「ステークホルダーメナージメント力」について、考えてみる価値はありそうだ。

参考にPMBOKの9個の知識エリアを挙げておく。

  • プロジェクト統合マネジメント
  • プロジェクト・スコープ・マネジメント
  • タイム・マネジメント: スケジュール管理。
  • コスト管理: 資金面の管理。
  • 品質・マネジメント:品質管理
  • 人的マネジメント:プロジェクトメンバーの要員の管理。
  • プロジェクト・コミュニケーション・マネジメント
  • プロジェクト・リスク・マネジメント
  • プロジェクト・調達・マネジメント

冲中一郎